ダーマローラーとは、とても細い針がついたローラーをわざと肌に刺していき、その傷を回復させようとする自然治癒力を利用して「コラーゲンの増加」と、「新しい皮膚との入れ替え」を促す美容法のこと。
一部の美容皮膚科などで行われていたり、また、器具を購入すれば自分でも行うことができます。
この美容法はコラーゲンが劇的に増加するので、おでこのシワやほうれい線といった加齢じわやニキビ跡の凹み、開いた毛穴といった肌の悩みに使用するのが一般的。
ところが、肌を全体的に活性化させる働きがあるので、使い方を工夫すればシミやくすみ、色素沈着といった肌の薄い層(表面的な層)の悩みに対しても使うこともできます。
そこで今回は、ダーマローラーをシミや色素沈着に使用する場合の効果や、理想的な針の長さ、注意点などを解説してきます。
ダーマローラーの治療効果と施術内容
ダーマローラーが美肌効果をもたらすのは、傷を修復させるために発生する成長因子を活用することにあります。
成長因子によって真皮内の線維芽細胞が活性化。そしてその細胞がコラーゲンやエラスチンなどを活発に作り出して傷を修復。その結果、肌にハリや弾力が生まれます。
一般にダーマローラーというと「線維芽細胞が活性化」→「コラーゲン増加」という効能ばかりが注目されます。
やはり。線維芽細胞はもともと活動性がとても低く、コラーゲンを増やすというのは難しいことなので、その効果ばかりが注目されるのは当然のことです。
ところが、ダーマローラーによって発生する成長因子は線維芽細胞だけではなく表皮細胞も活性化することがわかっています。
表皮細胞を活性化させることでターンオーバーも活性化し、表皮内に溜まったメラニン(色素沈着)が出て行くのを早めることができるのではないか?というのがダーマローラーを使ったしみ治療というわけです。
シミ治療の場合は短い針を使う
ダーマローラーは針が長いほどダウンタイムが長くなるもの。
ですのでシミや色素沈着といった表面的な改善を目的としている場合は、短い針を使って行います。
シミ治療の場合は成長因子を含んだ美容液が使うのが一般的
シミやくすみ改善のためには短い針を使いますが、短い針だとダメージが少ないので成長因子が発生しにくい問題があります。
そこで、成長因子を含んだ美容液を塗布して若返りをはかります。
ダーマローラーによって針を刺すことで肌に穴があきますが、その時に美容成分の浸透がよくなるので、そこに成長因子を含んだ美容液を塗り、さらなる若返り効果をもたらすのです。
なお、成長因子を含んだ美容液にはダーマヒールという製品が有名です。病院でもよく使用されます。
ダーマヒール
なお、ダーマヒールには以下の成長因子を含みます。
- EGF(上皮細胞増殖因子)
- GF-1(インシュリン様成長因子-1)
- bFGF(塩基性繊維芽細胞成長因子)
上記の成長因子により、表皮細胞や線維芽細胞(コラーゲンなどを作る細胞)を活性化させることができます。
肌を面で作用しないので色素沈着は起こらない
「針を刺す」という方法なので、ひどく肌が傷ついてしまいそうですが、実はダーマローラーの針は表面的に作用しないので、表皮へのダメージは限られます。
表皮が傷つくのは針を刺したほんの極わずかな点です。
垂直的に作用するものなので、この治療そのもので色素沈着は起こしにくいです。
ただし、やりすぎたりすれば内出血し、その後に色素沈着として長年残ってしまうこともあります。
ダーマローラーの効果
針が短い場合
- 針が短い場合は、表皮層を活性化させてターンオーバーを促す。
- 表面に穴をあけることで美容液成分の浸透がアップする。これを目的に短い針で行われることもある。
- うっすらとしたシミや炎症による色素沈着の改善が期待できる。鮮明な濃いシミには不向き。
- 皮膚表面のテクスチャーが変わり、滑らかさがでてきます。また、肌がワントーン明るくなります。
針が長い場合
なお、針が真皮層に届ような長さ(0.5ミリ以上の針)の場合、短い針を使ったときの効果に加えて以下のような効果が期待できます。
- 新しい皮膚との入れ替えを促す。
- コラーゲンの増生を促す。コラーゲンの増加は平均で2倍、最大で10倍ほどになるといわれています。ただし、これは集中的に行った場合の数値結果です。
適応する症状
- しわ、小じわ、たるみ。
- 毛穴のたるみ、毛穴の開き、毛穴の黒ずみ。
- ニキビ跡、クレーター。
- しみ、色素沈着、肌のくすみ。
- 妊娠線、肉割れ。
- 傷跡、瘢痕。
- 毛孔性苔癬(もうこうせいたいせん)
境界がはっきりとした濃いシミには期待は薄い
シミにはいろいろな種類がありますが、境界がはっきりとした濃いシミにはダーマローラーでは効果があまり期待できないです。
境界が鮮明なシミというのは肌細胞の老化そのものなので、成長因子が増えたからといって薄くなっていくかといえば、それは難しいと思います。
老化によるたるみの場合は劇的な効果はない
老化による皮膚のたるみ治療の場合では、ダーマローラーよりもサーマクールなどの高周波治療の方が効果があります。
サーマクールはリフトアップをもたらす治療器の中でトップレベルの効果をもたらします。ただし治療価格がかなり高額になるのが欠点です。
症状によるダーマローラーの針の長さ
一般に、しみやくすみ、色素沈着といった症状にはダーマローラーの針の長さは0.2ミリ、0.3ミリ、0.5ミリを使います。いずれにしても0.5mm未満です。
0.2ミリというのは表皮層の厚さくらいです。表皮層は毛細血管が通ってないので、0.2mmくらいの針の長さであれば血は出ないことも多いです。
でもグリグリと押し付けるようにローラーを転がしたりすれば血は普通に出たりします。また、肌が薄い人は必ず出血します。そもそも肌が薄い人はダーマローラーはしないほうがいいです。
それ以外の針の長さ
なお、ニキビ跡やシワ治療といったコラーゲン関連、毛穴関連の肌の悩みについては以下の針の長さが必要です。一つの目安にして下さい。
- しわ・小じわ・たるみ・・・0.5~2.5mm
- ニキビ跡クレーター・・・1.0~2.5mm
- 毛穴の開き・・・1.0~2.5mm
- 妊娠線・肉割れ・・・1.0~2.5mm
- 傷跡・瘢痕・・・1.0~2.5mm
コラーゲンなどがある真皮層は0.2ミリの表皮層のさらに深い層にあります。そのため、理論的には0.2ミリ以上の針が必要。
そして、真皮層は平均で1~3ミリくらいの厚みがあります。皮膚が薄い目元は1ミリくらいで、厚めの頬が2~3ミリくらい。
しっかりとコラーゲン増加をもたらしたいのなら、充分に真皮層に届くような針の長さが必要。
でも針が長いと痛いですし、ひどい内出血を起こし、それが色素沈着につながってしまうことも。
治療手順
クリニックでダーマローラーを行う場合、治療は以下のように進行します。
Step1カウンセリングによって肌状態を診断。
Step2洗顔・クレンジングをして肌の汚れを落とす。
Step3表面麻酔をする。0.2mmほどの針の長さでは、麻酔をしなくても我慢できるかもしれません。
筆者の経験では0.5ミリくらいの長さになると麻酔が必要だと思います。
Step4麻酔が効いた後に治療開始。この時、針が長いほど出血がひどくなります。
そして1~2ミリのような長さになると麻酔をしていても痛みを強く感じることがあります。
Step5皮膚に穴があいたら、成長因子を含んだ美容液を塗っていく。
なお、最初に成長因子を含んだ溶液を塗ってからダーマローラーを転がしていくという方法もあります。どちらにおいても効果に大きな違いはないと思います。
Step6治療後は保湿液で肌を整えて終了。施術後の肌はデリケートになっています。お化粧は控えるべきです。
治療を映像で
ダーマローラーの治療風景の動画。銀座ケイスキンクリニックのYouTube映像。
ダーマローラーを転がしていく。 しみ治療と共にニキビ跡や毛穴なども改善したい場合は、1ミリ以上の長い針でゴリゴリやる必要があります。
皮膚に穴があいたところに美容液を塗っていく。動画ではダーマヒールを使っているようです。
アフターケア
- 術後は出血がありますが、2~3時間経過すると穴は閉じます。
- 術後はしっかりと保湿スキンケアをしましょう。肌水分量が低いと肌細胞の再生力が低下します。
- 治療後は紫外線対策が必要です。
- ダウンタイムは1週間が目安。0.2ミリほどの針では2~3日くらいが目安です。
- 術後はカサブタができますが、それを無理に剥がさないようにして下さい。色素沈着が残りやすくなります。
治療時間
治療時間は10分ほどが目安。皮膚麻酔やクールダウンの時間を含めるとおよそ1時間くらいかかります。
ダーマローラーの副作用や注意点
- 長い針を使うほど、出血があり、肌が真っ赤になることがあります。
- 針の長いダーマローラーの場合は、施術後数日は顔の赤みなどのダウンタイムが目立つ可能性があります。仕事などに余裕があるタイミングで行うのが理想です。
- 施術前は、日焼けをしないようにしましょう。
- 皮膚炎、湿疹、アトピー性皮膚炎、などの症状がある場合は治療はできません。
- ケロイド体質の人はダーマローラーは不向きです。
自分で行う時の注意点
個人輸入などでダーマローラーと麻酔クリームを購入すれば、自分でホームケアすることができます。その時は以下の点に注意しましょう。
- 決してやりすぎないようにしましょう。内出血がひどくなってしまうとそのまま色素沈着につながってしまうことがあります。
- 針が折れていたりすると、表皮が傷ついて色素沈着を引き起こすことがあります。
- ダーマローラーは清潔なものを使用しましょう。使用前はエタノールで消毒して水道水でよく洗い流して使用しましょう。
- 他の人が使用したダーマローラーは使用してはいけません。感染症の原因になります。
- 品質が劣化したダーマローラーは使用しないようにしましょう。安全を考慮して、常に新品を使用するのが理想的です。
失敗ケースとしては内出血が多い
ダーマローラーを一箇所に集中的に行うと、内出血することがあります。
肌が弱い人や年齢的な要因、または冷え性の人ほど内出血しやすいです。
そして、内出血の回復が遅れるとそのまま色素沈着となって残ってしまうことがあります。
肌が敏感な人は赤みがそのまま残ることも
肌が弱い人はローラーの針の跡がそのまま付いてしまうこと。赤く点々として残ってしまうことがあります。
そういった跡がつくような肌質の人はダーマローラーという美容法そのものが適してないといえます。
ケロイド体質は要注意
まれなケースですが、ダーマローラーによって盛り上がりのある瘢痕が発生して白いブツブツが残ってしまうことも。
ケロイド体質の人は傷が回復する時に過剰にコラーゲンを作り出してしまうのですが、そういった人は針の長いダーマローラーは向いていません。傷跡が白く盛り上がった状態になりやすい人は止めたほうがいいです。
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