尋常性白斑とは、皮膚の色素が抜けてしまい、肌が部分的、あるいは広範囲にわたって白くなってしまう皮膚疾患をいいます。
日本では、「シロナマズ」といったりします。
世界的スターのマイケル・ジャクソンが罹患していたことで有名です。
全世界では0.5-1%が羅患しているといわれ、日本では、1~2%程度が羅患しているとされています。
今回は白斑の原因と治療について。
尋常性白斑の原因と特徴
白斑の症状は以下の3種類にわかれています。
- 非分節型(汎発型)
- 神経分節型
- 未分類型
非分節型(汎発型)
非分節型の白斑の原因は、メラニン色素を作るメラノサイトという細胞に対して抗体が作られ、破壊されることでメラニンを作り出すことができなくなり、最終的に肌の色が抜けてしまうと考えられています。
自己免疫疾患の一つといえます。
統計的には全体の約70%がこの非分節型だとされます。
初期段階は1cmほどの小さな色抜けから始まり、放置しているとそれが広範囲にわたっていきます。全身に拡大する傾向があります。
メラノサイトの活動が進行的に停止してしまうため、放置していると広範囲にわたって真っ白に抜けてしまうことがあります。
原因
発症の原因は詳しくは明らかになっていませんが、皮膚に対する物理的なストレス、過剰なスキンケア、紫外線の影響、精神的なストレス、化粧品に含まれる化学物質などが影響している可能性が指摘されています。
また、高い割合で家系内発症がみられることから遺伝的な要因が疑われています。
他の特徴
- 子供から老人まで全年齢に発生します。
- 顔面、胸、背中、お腹、手足など、どこにでも発現する。
- 衣服でこすれる部分に左右対称に現れることがあります。
- 甲状腺機能異常を合併していることが多い。
- 白斑の症状が頭部に発現すると、その部分の毛髪が白髪になることがある。
神経分節型
神経分節型の白斑は神経にそって発生するもの。全体の約30%がこの症状とされます。
メラニン色素を作るメラノサイトは、神経によって支配されます。
その神経が支配する皮膚分節にしたがって部分的に皮膚の色素が抜けるタイプが分節型の白斑です。
全身に広がっていくことはなく、片側の神経に沿って発現し、発症後数年で白斑の進行が止まります。
なお、神経分節型ではメラノサイトは完全に損失していないとされます。
原因
神経分節型の白斑の原因は、詳しいことは明らかになっていませんが、神経障害が関与して発生すると考えられています。
- 神経障害により、末梢の神経とつながっているメラノサイトの働きが低下、もしくは停止する。
- 神経障害により、色素を作り出す情報伝達物質(メラニン細胞刺激ホルモンなど)の欠損。
その他の特徴
- 若年層にできやすい傾向があります。
- 治療を継続しても現状では治りにくい。
- この症状はメラノサイトの完全な死滅はないとされています。
未分類型
局所的に1つだけ生じた白斑。非分節型と分節型のどちらにも当てはまらないものです。
他の白斑の症状
他の要因によって白斑を起こすことがあります。主に以下のようなものがあります。
美白成分による白斑
美白成分によって白斑を起こすことがあります。例えば、ハイドロキノンは高濃度のものを使い続けるとメラノサイトの機能が停止し、色が抜けてしまう可能性があります。
また、2013年には、カネボウ化粧品が開発したロドデノールという成分に対し、多くの方が白斑が発生したという事例がありました。(その後、化粧品は販売停止→回収)
他にも、モノベンゾンという皮膚の脱色剤でも肌の色が抜けてしまいます。モノベンゾンはマイケルジャクソンが白斑治療に使っていたとされています。
感染症
細菌や真菌、ウイルス感染症によって肌の色が抜けてしまうことがあります。
炎症によりメラノサイトの機能が停止し、白斑を起こすのです。
また、梅毒という性病によって白斑が生じることもあります。
アトピー性皮膚炎
癜風菌(でんぷうきん)の一種であるマラセチア菌というカビ(真菌)が原因で皮膚の色が抜けることがあります。
その菌に対してアトピーをもつ人がいますが、そういった人は特にヒジの内側やヒザの裏側といった汗をかきやすい部分(マラセチア菌が増えやすい部分)に色抜けが見られます。
ヤケドなどの外傷
ヤケドで皮膚が損傷するとメラノサイトが消失して肌の色が抜けたりします。
老人性白斑
老化によって細胞の活動性が低下しますが、同時にメラノサイトの活動も低下するので白斑が生じることがあります。これは白髪が増える現象と似ています。
先天性白皮症
先天性白皮症は、生まれつきにメラノサイトが存在しないか機能していない疾患をいいます。とてもまれな症状です。
白斑の治療方法
白斑の治療は、おおまかに言うと免疫を抑制する方法が行われます。
ステロイド外用薬
ステロイド外用薬を使用することで白斑の進行を阻止させることができます。
また、皮膚の色素再生が期待できます。
ただし、長く使い続けると、皮膚が極端に薄くなったり、血管がもろくなったり、免疫が低下して様々な皮膚病を引き起こすことがあります。
ステロイドによる皮膚病には、毛嚢炎やマラセチア毛包炎、カンジダ皮膚炎、脂漏性皮膚炎などがあります。
ステロイド内服は難しい
ステロイドの内服も効果があるのですが、副作用が全身に及ぶので長期に使うには難しいです。
タクロリムス軟膏
タクロリムス軟膏とは、塗り薬としての免疫抑制剤です。先発品はプロトピック軟膏。
白斑がメラノサイトにおける過剰な免疫反応が原因とされることから、このお薬が効くとされます。
なお、肌のバリア機能が弱くなっていると刺激感が強くなる欠点があります。そして、使い続けると効かなくなってくることがあります。(ただし、それについてはどの塗り薬についてもいえることです)。
なお、タクロリムス軟膏はアトピー性皮膚炎に使用されることが多いお薬です。
紫外線治療
紫外線には「免疫機能を弱める働き」があり、メラノサイトを攻撃する免疫反応を弱めることができると考えられています。
過剰な免疫を抑えてメラノサイトの働きを正常化へと導き、メラニンの合成を促すという方法が紫外線療法です。
紫外線を出すランプを使って白斑に直接照射し、過剰な免疫反応を抑えます。
方法は以下の2つが有名です。
ナローバンドUVB照射療法
UVBを照射する治療。日焼けの原因となる有害な部分を除いた紫外線を照射します。紫外線を使った方法では白斑に最も効くとされ、劇的な改善例も多いです。
PUVA(プーバ)療法
PUVA(プーバ)療法は、UVAを照射する紫外線治療。紫外線を吸収しやすいお薬(ソラレン)を服用して照射します。
ビタミンD3外用薬
ビタミンD3の外用が皮膚の免疫機能の正常化に役立ちます。
肌色のタトゥーを入れる
部分的に肌色が抜けている場合は、その部分をタトゥーと同じように色素を入れてしまうこともできます。
他の部位と若干の色ムラができるかもしれませんが、上手にやってもらえば劇的に目立たなくなるはずです。
なお、白斑や脱毛症、傷跡などの肌の色抜けをカバーするタトゥーを、「パラメディカル・タトゥー」といい、一つの治療として確立しているものです。
美白治療
日焼けを避けて全身のメラニン生成を抑え、色白になることで相対的に白斑を目立たなくさせることができます。
反対に日焼けしていると白斑が目立ちやすいです。
色白の人は美白を目指すことで白斑が気にならなくなります。日常的な紫外線対策をして下さい。
植皮(皮膚移植)
植皮(皮膚移植)とは、自身の健康な皮膚を採取して、目的の部分に移植する方法です。
大きく分けて、表皮と真皮を全て移植する「全層植皮術」と、皮膚の真皮層を浅く採取してそれを移植する「分層植皮術」の2つの方法があります。
進行性がない白斑で、局所的な場合に対して行うものです。
ただし、この方法ではかえってケロイド、肥厚性瘢痕などの傷跡や、色素沈着が残ることがほとんどです。リスクとリターンを考えれば現実的な方法ではないです。
また、表皮を培養して移植する方法もあるのですが、どう考えても仕上がりが余計に悪化します。ヤケド跡のようなボコボコの瘢痕跡になることも。
なお、白斑治療において皮膚移植を行うケースは極めてまれです。以前よりもキレイに仕上がることがないことや、治療範囲が広くなることが要因です。
単にビタミンやミネラル不足かもしれない
ビタミンやミネラルが不足すると代謝異常を起こしたり、神経の働きが悪くなったりします。そして、代謝異常が現れると免疫機能に異常を起こすことがあります。
そのため、ビタミンやミネラルは不足しないようにして下さい。
お酒や食べすぎ、喫煙(たばこ)などはビタミンやミネラルを奪ってしまうので止めるようにしましょう。
お化粧でカバーする
白斑はお化粧でカバーするのが一番。男性でもOK。
肌の色が抜けた部分をカバーしようとすると、ファンデーションが濃くなりがちですが、近くで見られることがなければ、まったくわからないレベルになるはずです。
最後に・・・
白斑はどんな治療を行っても上手くいかないことも多いです。治療する場合でも長びくことが多いです。そのため、あまりのめり込まずに気楽に行って下さい。
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