内出血を起こすような強い打撲をすると、腫れが引いた後にモヤモヤとしたシミ(色素沈着)が残ってしまうことがあります。
打撲による色素沈着は、ある程度の年月がたてば薄くなっていくものですが、そのままモヤモヤとしたシミとなって残ってしまうことがあります。
今回は、打撲による色素沈着の発生の仕組みと、シミの悪化予防、そして定着してしまった色素沈着を消す方法についてです。
打撲によってシミができる仕組み
皮膚を何かに強く打ち付けると、皮膚が強く腫れることで防御反応としてメラニン色素が作られます。
そして、腫れや内出血が引いたらメラニン色素だけが残って茶色いアザのように残ってしまいます。
メラニン色素が多い肌質の人(肌が浅黒い人)ほど色素沈着が濃くなる傾向があります。
他にも、紫外線を浴びやすい部分ほど、色素沈着が残りやすいといえます。
打撲後の色素沈着は治る?
打ち身をした後の色素沈着は月日が経てば薄くなっていきます。強い打撲の場合は、年単位の長い時間がかかるかもしれません。
皮膚の表面の外傷がなく、単に打撲だけならば時間の経過と共に自然に治っていくことがほとんどです。
けれども、皮膚がボコッと腫れてしまうような強い打撲や、同時に外傷などもある場合は、自然には治りにくいことがあります。
その場合はレーザー治療が効きます。
治りにくい理由は?
どんな理由においても皮膚がダメージを受けると、必ず炎症反応が起こります。打撲もその一つ。
炎症によってメラニンがたくさん生み出されますが、それが表皮内だけに留まっていれば、ターンオーバーと共にじょじょに薄くなっていきます。
ところが、炎症反応が強くなると表皮と真皮の間に存在する基底膜という部分の構造が崩れてしまい、メラニンが真皮層に入り込みやすくなります。
真皮は表皮のように皮膚の生まれ変わりが活発に行われていません。そのため、真皮層に入ってしまったメラニンは薄くなりにくい問題があります。
なお、真皮に落ち込んだメラニンはメラノファージが処理しますが、活動性が低いことなどの理由から改善するまで年単位の時間がかかることも。
炎症が大きくなるとシミも治りにくくなるので、炎症を抑えるために打撲してからすぐに適切な処置をすることが重要となります。
打撲後の色素沈着を予防するには?
患部を冷やす
打撲後にはすぐに皮膚を冷やすことが腫れを抑制するために非常に重要なポイントになります。
打撲は皮膚が腫れてやや熱をもった状態であり、腫れをしずめるためにとにかく冷やすことが先決です。これはヤケド後の処置と一緒。
冷水で冷やしたり、ビニール袋に入れた氷水などで10~15分ほど冷やしましょう。打撲後にいかに素早くこの処置ができるかどうかで、治り方が大きく違ってきます。
冷やし過ぎないことも大切
なお、アイスパックなどで直接皮膚を冷やしすぎるとかえって症状の回復を遅らせてしまうことがあります。
極端に血流が悪化したり、細胞内のミトコンドリアの働きが低下するためです。
皮膚の腫れには冷水やタオルの上からビニール袋に入れた氷水などで冷やすくらいで充分です。冷やしすぎないことも重要!
傷がある場合はハイドロコロイドテープを使う
打撲と同時にすり傷や切りキズがある場合、出血がある場合などは、キズパワーパッドなどを貼って傷を処置した後に、その上から皮膚を冷やします。
心臓よりも高いところに上げる
打撲を起こした後は、患部を心臓よりも高い位置に上げることで腫れを抑えることができます。
血流を下げることで腫れを抑え、炎症を誘発する物質の発生も抑制できます。
やり方としては、例えば脚に打撲ができたらビニール袋に入れた氷水などで冷やしながら寝そべって、脚を上げたままの状態を維持しましょう。目安として30分ほどが理想です。
患部を冷やすことと同時にこの処置をするだけで腫れを抑制し、治った後の色素沈着を抑制することができます。
冷湿布で腫れを抑える
患部を冷やした後は冷湿布で腫れを抑制しましょう。また、温湿布ではなく必ず冷湿布を使用しましょう。打撲した皮膚に温める行為は禁物です。
その日はお風呂には入らない
打撲後に皮膚を温める行為は腫れをひどいものにしてしまいます。
例えば、強い日焼けした後にお風呂で温めてしまうと、急に水ぶくれができてしまうことがありますが、それと似たような現象が起こるのです。
なので、打ち身がひどい場合は、その日の入浴は絶対にしないで下さい。
また、打撲の程度が強い場合は、3~5日間ほどは患部を温めないようにしたほうがいいです。
打撲の部位が腕や脚ならば、その部分をお湯につからないようにしたほうがいいです。また、簡単にシャワーだけに済ましたりして工夫して下さい。
マッサージしたりしない
打撲後の内出血を早く治したいとして、さすってマッサージをする人がいます。
血行が良くなると内出血が良くなるだろうと認識しているようですが、打撲で内出血をしている場合、患部が熱をもっていますので、刺激を与えないようにしないといけません。
そして、温めたり、血流を促したりするよりも、当日は冷やしたほうが治りがよくなります。
打撲後すぐに温めるような処置ではかえって症状を悪化させてしまうことを覚えておいて下さい。
ただし、打撲後の腫れや内出血が完全に引いたら、温めて血流を促したほうがいいとされます。
打撲に効くお薬いろいろ
湿布(しっぷ)すると治りが早くなる
打撲後、冷やした後に湿布をすれば腫れや炎症を抑えることができます。
湿布には非ステロイド性の消炎剤が含まれていて、腫れを抑えることで、メラニンを作り出す物質を抑制することができます。
市販品では「フェイタス」というフェルビナクを主成分とした湿布が効きます。フェルビナクは鎮痛消炎成分で、炎症や腫れを抑制する作用があります。
ただし、肌が弱い人がずっと湿布を使い続けると、接触皮膚炎を起こしてしまうことがありますので、皮膚のコンディションを見ながら上手に使って下さい。
赤みが強く残るような状態になったら湿布は使わないほうがいいです。
消炎薬でもOK
打撲には、湿布薬ではなく消炎効果があるお薬でも効果が期待できます。
市販品であれば、スキンセーフAPクリームなどがあります。
その商品は皮膚炎やかぶれに効くお薬ですが、炎症物質を抑える働きがあるので、打ち身のあとの腫れにも充分適応します。
ステロイドは使ってはいけない
打撲後の腫れや痛みを早く治したいとしても、絶対にステロイド外用薬を塗ったりしないで下さい。
ステロイドには優れた抗炎症作用がありますが、免疫機能や皮膚細胞の働きを抑えてしまうので、治りが悪くなることがあります。
ステロイドを塗り続けると、皮膚の免疫が下がって毛嚢炎などの皮膚感染症や、マラセチア毛包炎といったカビによる皮膚病をまねくことがあります。
ヘパリン類似物質が効く
ヘパリン類似物質という成分を配合した塗り薬が打撲後の皮膚の赤みや腫れの回復に役立ちます。
ヘパリン類似物質は、保湿作用、血行促進作用、皮膚細胞活性化作用などがあり、打ち身をした後の治りを早めてくれます。
病院で処方されるのはヒルドイドクリーム、ビーソフテンクリームなどが有名。
市販品ではアットノンなどがあります。いずれもヘパリン類似物質を配合していて、皮膚の損傷の回復をサポートします。
病院に行けば、消炎薬と同時にヒルドイドクリームが処方されることが多いです。
飲み薬ではイブプロフェンが効く
イブプロフェンを飲むことで打撲後の炎症や腫れを軽減することができます。
イブプロフェンは、痛みや炎症をとる成分で、風邪薬にも配合される成分。イブ錠、エスタックイブ、ベンザブロックなどに含まれます。
炎症反応に関与するプロスタグランジンという生理活性物質をブロックすることで炎症を抑制します。
炎症を抑えることで赤みや色素沈着をより軽減することができます。
飲んで1時間くらいで効き、即効性があるのが利点。
イブプロフェンはドラッグストアなどでも購入できます。また、病院でも処方してもらえます。
ロキソニンも効く
ロキソニン(成分名:ロキソプロフェン)も、打撲による痛みや炎症を抑えてくれます。
作用はイブプロフェンとほとんど同じですが、ややロキソプロフェンのほうが「痛み」を抑える作用が高いとされます。
レーザー治療で色素沈着が治る
もし、打撲によって色素沈着が残ったとしてレーザーによって治すことができます。
レーザーの種類としてはいくつかのタイプがありますが、ピコレーザーというレーザーが最も有効。
ピコレーザーは、ピコ秒(1兆分の1秒単位)という限りなく瞬間的に照射できる機器で、皮膚に当たる時間がほんの一瞬であるためダメージを抑えながらしっかりとシミに対応します。
打ち身で濃いシミが残ったとしても、ほとんどわからなくなるレベルまで薄くできると思います。なので、色素沈着に対してあまり悩まないで下さい。
打撲後から半年以上たってから行う
レーザー治療は、打撲が治ってから半年以上たってから行って下さい。皮膚の損傷から完全に回復するまでは半年間はかかるためです。
美白成分の効果は?
打撲した後の色素沈着に対して、ビタミンC誘導体やハイドロキノン、ルミキシルなどの美白成分でもある程度は効果が期待できるとは思います。
ただし、それらの成分は表皮性のシミにしか効きません。皮膚の強い損傷によって発生した色素沈着はメラニンが深い層に入りこんでいることがほとんどなので、表皮にしか作用しない美白成分の効果には限界があります。
なお、ハイドロキノンは細胞毒性があるので使い続けるとかぶれたりするリスクがあります。赤みがでてきたら、必ず使用中止して下さい。
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