オリーブオイルは、モクセイ科植物オリーブの果実から得られる植物油です。古くから栽培されてきた歴史があり、現在では主に食用油として広く用いられています。
また、オリーブオイルは薬用効果や保湿効果があると考えられ、食用だけではなく化粧品にも使用されることがあります。
ところが、オリーブオイル配合の化粧品が原因でニキビや毛穴開き、毛穴の黒ずみなどが悪化してしまう可能性があります。今回はその理由を解説していきます。
オリーブオイルの効果
皮膚を柔軟にする
オリーブオイルは、水分蒸発を防ぐ保湿効果や肌を柔軟にする効果があります。そういった効果によりクリームや乳液、リキッドファンデーションといった油系化粧品に配合されることがあります。
肌を柔軟にする効果により、ニキビの芯の排出を促して治りを良くする有効成分として話題になったこともありました。
ところが、オリーブ油のような植物油は肌に使用して時間が経過すると炎症を起こしやすくなるため、使用する場合は注意する必要があります。
オリーブオイルはオレイン酸を特に多く含む
オリーブオイルはオレイン酸という不飽和脂肪酸を非常に多く含み、オリーブ油の約7~8割がオレイン酸で構成されています。
そのオレイン酸は保湿効果や肌の柔軟性を高めたり、雑菌の繁殖を抑制する働きがありますが、時間の経過とともに酸化が進行して肌を刺激し、ターンオーバーを乱してニキビの原因となってしまう可能性があります。
実はオレイン酸は皮脂中にも含まれ、ニキビの原因となるターンオーバーの亢進を起こす原因と考えられています。
オレイン酸の刺激がにきびの原因になる
オリーブオイルに約7~8割含まれるオレイン酸は皮脂にも含まれます。
皮膚に生息するアクネ菌などの常在菌が皮脂中の中性脂肪を分解することで遊離脂肪酸が生じますが、その遊離脂肪酸の一つがオレイン酸です。皮脂中の遊離脂肪酸のうちの約20%はオレイン酸だといわれています。
そのオレイン酸は酸化しやすく、時間の経過とともに過酸化脂質へと変化して皮膚に対して炎症を誘発します。
オレイン酸が皮膚を刺激し続けて毛穴をふさがりやすくすることで最終的ににきびが発生するようになります。
皮脂が増加するほどニキビができやすくなるのは、オレイン酸などの遊離脂肪酸が皮脂量と比例して増加し、皮膚を刺激することが主な原因だとされます。
大手化粧品メーカーの研究において、肌にオレイン酸を塗布して数時間後にマイクロスコープで肌を拡大して見ると、細かな炎症を起こし、角質層のキメの乱れが悪化したという研究結果が報告されています。
オレイン酸などの不飽和脂肪酸は毛穴の黒ずみの原因?
オレイン酸は人間の皮脂にも含まれていますが、そのオレイン酸はニキビだけではなく毛穴の黒ずみの原因になることがわかっています。
オレイン酸は空気と触れることで酸化が進行し、肌に炎症をもたらすようになりますが、最も影響を受けるのが毛穴周辺です。
毛穴周辺の炎症が続くことでメラニンがたくさん作られ、正常なターンオーバーが乱れてしまうと、メラニンが留まって毛穴の黒ずみが目立ってくるようになります。
毛穴開きの原因にもなる
皮脂中のオレイン酸が毛穴周囲の皮膚を刺激し続けることでターンオーバーが進行し、毛穴周辺が盛り上がって毛穴が開いたように見えることがあります。
また、慢性的に細かな炎症を受け続けることで、毛穴周囲がすり減って大きく開いたようになることもあります。
実際に毛穴の開きが目立つ鼻や額、頬などは皮脂中のオレイン酸やパルミトレイン酸などの不飽和脂肪酸が多いことがわかっています。
なぜオレイン酸は酸化されやすいのか
油脂を構成する脂肪酸には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられますが、オリーブオイルに多く含まれるオレイン酸は不飽和脂肪酸に分けられます。
その不飽和脂肪酸は飽和脂肪酸と比較すると酸化されやすい性質があります。2つの違いを見ていきましょう。
まず、飽和脂肪酸は炭素が水素で完全に満たされていて、構造的に安定しているものをいいます。以下は飽和脂肪酸の一つであるパルミチン酸の化学式です。炭素(C)が完全に水素(H)で満たされているのがわかります。
一方、不飽和脂肪酸とは、炭素が水素で完全に満たされていないものをいいます。部分的に炭素と水素が結合しておらず、炭素同士が二重結合している部分があります。
その水素で満たされていない部分が酸素と結びついて酸化しやすくなる性質があります。以下はオレイン酸の化学式です。
オレイン酸のような不飽和脂肪酸は、すべての炭素が水素で飽和されていない「不飽和」な状態をいいますが、その不飽和な部分から酸化が始まり、不安定な状態へと変化していきます。
これが肌で起こると、不安定になったオレイン酸が炎症を引き起こしてターンオーバーを乱し、毛穴をふさがりやすくしてニキビを引き起こす原因となってしまいます。
オレイン酸は不飽和脂肪酸の中では酸化しにくい
一般に、「オレイン酸は酸化されにくい」といわれることがあります。その理由はオレイン酸は、酸素と結びつきやすい炭素同士が結合した二重結合が1つしかないためです。
不飽和脂肪酸は大きく2種類に分けられます。二重結合が1つだけのものは「一価不飽和脂肪酸」、二重結合が2つ以上のものは「多価不飽和脂肪酸」といいます。
そのうち、オレイン酸は二重結合が1つだけなので一価不飽和脂肪酸に属します。また、リノール酸やαリノレン酸などは二重結合が2つ以上あるため多価不飽和脂肪酸に属します。以下はリノール酸の化学式です。二重結合が2つあることがわかります。
水素で満たされていない炭素同士の二重結合が多いほど酸素と結びついて酸化しやすいのですが、リノール酸は2つの二重結合があるため、1つの二重結合しかもたないオレイン酸のような一価不飽和脂肪酸と比べると酸化しやすい性質があります。
一方、オレイン酸は二重結合が1つだけなので、不飽和脂肪酸の中では酸化しにくい部類に入ります。
簡単にいえば、オレイン酸は不飽和脂肪酸の中では酸化されにくいことから「酸化されにくい油脂」といわれることがあるのです。
オレイン酸のような一価不飽和脂肪酸は酸化されにくいといっても二重結合がない飽和脂肪酸と比較すると圧倒的に酸化の影響を受けます。また、どんな油においても時間の経過と共に酸化は進行してしまいます。
結局のところ化粧品に配合されるオリーブ油は安全なの?
オリーブオイルは植物由来で薬用効果があることから安全性が高いというイメージがあります。そのため、クリームや乳液、ファンデーションなどの化粧品においても幅広く使用されることがあります。
ところが、オリーブオイルの約9割が酸化されやすい不飽和脂肪酸で構成されており、皮膚に対して悪影響をもたらす可能性もあります。
不飽和脂肪酸は時間の経過とともに酸化が進行し、刺激性が増大してキメの乱れ、炎症、ターンオーバー異常を引き起こすことがあるため、特にニキビ肌のようなデリケートな状態では控えたほうが無難です。
そして、オリーブオイルのような不飽和脂肪酸が多く含まれた化粧品を使用した後に強い紫外線を浴びるといったことは控えて下さい。脂漏性皮膚炎を起こすことがあります。
そして、一般にオリーブオイルやオレイン酸などの油脂成分はニキビを誘発する成分として認識されているため、基本的にニキビケア化粧品に配合されることはありません
一方、一般的なクリーム系の保湿化粧品やリキッドファンデーションなどはエモリエント成分としてオリーブ油やオレイン酸が配合されていることがあるので注意して下さい。
オリーブオイルの摂取で皮脂が増加する?
一般にニキビは皮脂の増加が原因となります。そのため、オリーブオイルのような油分をたくさん食べたりするとニキビが増加してしまうのではないかと考える人もいるようです。
結論から言えば、オリーブオイルにはそこまで皮脂を増やす性質はありません。もしオリーブオイルがニキビ悪化要因であるならば、イタリア人やギリシア人のようなオリーブオイル摂取量が多い国の人の顔はニキビだらけということになってしまいます。でも実際はそうじゃないですよね。
そして、オリーブオイルのような植物油と皮脂増加との関係についてはまず油の性質を理解する必要があります。
油分を構成する脂肪酸には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられますが、このうち飽和脂肪酸は男性ホルモンの分泌を促す働きがあります。
なぜなら飽和脂肪酸は男性ホルモンの原料であるコレステロールの増加を促すためです。男性ホルモンは皮脂腺に作用して皮脂分泌を促す働きがある性ホルモンですね。
飽和脂肪酸をたくさん摂取することで皮脂が増え、ニキビも増える可能性があるのですが、ところがオリーブオイルは約8~9割が不飽和脂肪酸で、飽和脂肪酸は1割強ほどしか含有ません。(なお、8~9割を占める不飽和脂肪酸のほとんどがオレイン酸です)。
そのため、オリーブオイルの摂取と男性ホルモンの増加(皮脂の増加)は特に気にする必要はないと思います。
以下は代表的な植物油の脂肪酸比率ですが、パーム油を除いて飽和脂肪酸を多く含むものはありません。
– | 飽和脂肪酸 | 不飽和脂肪酸(一価) | 不飽和脂肪酸(多価) |
---|---|---|---|
オリーブ油 | 13.8g | 72.9g | 10.5g |
サフラワー油 | 7.5g | 75.2g | 12.8g |
なたね油 | 7.3g | 63.2g | 28.1g |
ごま油 | 14.2g | 39.7g | 41.7g |
大豆油 | 15.6g | 22.7g | 57.7g |
パーム油 | 49.3g | 37.1g | 9.3g |
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