ニキビは炎症がびどくなって長引いたりすると、赤みや炎症後色素沈着といったニキビ跡がひどく残ってしまうようになります。
そして、炎症度合いや肌質などの条件が揃えば、皮膚がクレーター状に凹んでデコボコになったりすることがあります。
このクレーターが発生する原因は免疫反応が関与しています。
ニキビのメカニズム
ニキビが腫れる仕組み
皮脂汚れや角質肥厚などで毛穴がつまってしまうと、毛穴の内部でアクネ菌という皮膚常在菌が増殖を始めます。
このアクネ菌は嫌気性という酸素を嫌う性質があるため、毛穴がふさがって酸素が供給されなくなると皮脂をエサにして極端に増加してしまうのです。
アクネ菌が極端に増殖すると、異常を察知した肌細胞が炎症性サイトカインを放出して、様々な伝達物質の発生を促します。これによって本格的にニキビが赤く腫れるようになります。
そして、アクネ菌が増加した部位で白血球が活性化し、好中球(白血球の一つ)はアクネ菌を食べ、強力な活性酸素(主にヒドロキシラジカルなど)を放出してアクネ菌を攻撃します。
この活性酸素によってアクネ菌が死滅し、最終的にはニキビの炎症が治まります。この免疫システムがあるからこそ人間の身体が細菌に侵されることなく恒常性を維持できるのです。
皮膚がクレーター状に凹むメカニズム
ニキビ跡のクレーターは、ニキビによる免役反応やアクネ菌を攻撃するときに放出される活性酸素によるものです。
活性酸素はアクネ菌を死滅させる一方で、正常な皮膚まで大きな損傷を与えてしまいます。
様々な伝達物質や強力な活性酸素のダメージによって毛細血管が破壊されて皮膚の赤みが現れたり、メラノサイト(メラニン色素を作り出す細胞)が刺激されてメラニン色素が増加し、炎症後色素沈着を引き起こしたりします。
そして、場合によっては活性酸素のダメージによって皮膚が硬く萎縮してクレーター状に凹んでしまうことがあります。アクネ菌そのものがクレーターを作るのではなく、免疫反応が皮膚を破壊してしまうのです。
厚ぼったい肌質はクレーターになりやすい
一概には言えませんが、皮膚が厚くてゴワゴワした肌質の人は、強く炎症したニキビができるとクレーター状に凹みやすい傾向があります。
例えば、頬(ほほ)はクレーターができやすい部位の一つですが、それは皮膚が厚いことがあげられます。皮膚が厚いとコラーゲンが萎縮したときに目立ちやすいものになります。
アレルギー体質でクレーターが悪化する?
にきび跡の凹みやクレーターができるのは体質が関係しています。
一般に、免疫が過剰に反応しやすい人ほどニキビの腫れが悪化しやすくニキビ跡もひどくなりやすいといえます。実際に、アレルギー体質の人がニキビにかゆみが現れて長期化し、ニキビ痕がひどくなることが多いです。
ニキビ跡クレーターの治療はどんな方法がある?
ニキビ跡のクレーター状の凹みは、真皮の7割を占めるコラーゲンなどが破壊されて硬く萎縮し、瘢痕化した状態です。
これを改善するには、単にコラーゲンを増やすのではなく、新しいコラーゲンと入れ替えて瘢痕化した状態を治す治療が効果的です。主に以下のような治療方法があります。
CO2フラクショナルレーザー
CO2フラクショナルレーザーとは、波長10,600nm(ナノメートル)のCO2レーザー(炭酸ガスレーザー)を応用したレーザーです。
CO2レーザーは水分に吸収されやすい性質があり、皮膚に吸収されて蒸散(削る)させることができます。皮膚も水分を含むためCO2レーザーが反応するのです。
それを分散的に点状に照射していくことで意図的に皮膚に微細な穴をあけ、その穴を修復するために放出される成長因子(細胞増殖因子)によって皮膚の入れ替えやコラーゲン増生を促します。
自然治癒力をいかした治療で、この治療を繰り返すことでニキビ跡の凹みは目立たなくなっていきます。
痛みやダウンタイムがある反面、非常に高い効果が期待できます。一度の施術で10~20%の皮膚の入れ替えが期待でき、従来までは難しかった深いにきび跡のクレーター凹みにも劇的な効果をあげています。
成長因子配合の薬剤などを併用するとさらに効果が期待できます。
フラクショナルエルビウムヤグレーザー
フラクショナルエルビウムヤグレーザーは波長2940nm(ナノメートル)のレーザーです。
この波長域は非常に水分に吸収されやすく、CO2レーザーの10倍もの水分吸収性があります。そのため、皮膚に含まれる水分にしっかりと吸収されて皮膚を削ることができます。
そのレーザーを皮膚に分散して点状に照射して微細な穴を開けていくことで、その穴を修復するときに発生する成長因子によって皮膚の入れ替えやコラーゲン増生をもたらします。これによってクレーターを治していきます。
CO2レーザーと比較して、余計な熱を発生させないため、ダウンタイムが少ないメリットがあります。
エルビウムヤグレーザーはニキビ跡クレーター治療においては最も効果が高い方法とされますが、しっかりと皮膚を削るため肌質によっては治療が合わないケースもあります。皮膚が薄い人では出血を起こすことが多くなります。
フラクショナルレーザー(ノンアブレイティブタイプ)
エルビウムヤグレーザーやCO2レーザーのように皮膚を削る治療ではなく、単に熱ダメージを与えるだけのフラクショナルレーザーもあります。「フラクセル」や「アファーム」、「スターラックス1540」などのレーザー機器がそれにあたります。
それらは「ノンアブレイティブ」という皮膚を削らないタイプで、単に熱ダメージを分散的に与えて、そのダメージから回復する時に発生する成長因子によって皮膚の入れ替えやコラーゲン増生をもたらします。
皮膚に対して大きなダメージを与えるものではないため、一度の施術では劇的な効果は期待できませんが、痛みやダウンタイムも限られるメリットがあります。主に浅いニキビ痕に効果的です。深いクレーターの改善は難しいかもしれません。
ニードルセラピー(極細針を使った治療)
ニードルセラピーは、ニキビ跡クレーター部分に極細の針を分散的に刺して、その損傷から回復する過程で放出される成長因子によって皮膚の入れ替えやコラーゲン増生を促す治療です。
主に、ダーマスタンプ、ダーマローラー、ダーマペンなどの治療があります。針の長さはニキビ痕治療では1.0~2.0mm程度が使用されます。
針が長いほど治療効果は高くなりますが、それとともに痛みやダウンタイムが長くなる欠点があります。基本的に出血を起こして治療部位が血だらけになります。
ローラータイプはやや余計なダメージが加わりやすいのが難点です。また、このような針を使ったクレーター治療は、エルビウムヤグレーザーなどと比べると治療効果は劣ります。
ニキビ痕がケロイド状になるメカニズム
ニキビが強い炎症を起こして化膿したりすると皮膚は非常に大きな損傷を受けることになりますが、その皮膚のダメージを修復する時にコラーゲンを過剰に増生してしまい、盛り上がったしこりを形成してしまうことがあります。
しこりとなったニキビ跡は、ケロイドや肥厚性瘢痕といった症状の可能性があります。
それらは免疫が過剰に働いてコラーゲンを作り出してしまうことが主な要因で、アレルギーの一つと考えられています。ケロイドとともにクレーターの凹みが目立つと肌がデコボコに見えるようになります。
真性ケロイドと肥厚性瘢痕の違い
ニキビ跡のケロイドには真性ケロイドと肥厚性瘢痕があります。その2種類は見た目は似ていますが厳密には違いがあります。真性ケロイドは進行性があるもので、しだいに拡大していびつな形になっていきます。
一方、肥厚性瘢痕は進行性がなく年単位の期間の経過とともに改善することも多いです。そして、たいていの場合は肥厚性瘢痕で、進行性のある真性ケロイドであるケースは極めてまれです。
ケロイドだとは限らない
ニキビが化膿してしまうと炎症が治まった後でも皮膚に硬さが残ってしまいますが、その現象は主に毛細血管拡張によるうっ血が原因です。
ニキビが治ってもある程度の期間は腫れが残っているもので、必ずしもケロイドや肥厚性瘢痕とは限りません。ニキビのしこりは半年くらいかけて改善していくこともあります。
特に顔以外のニキビが強く腫れると、硬さがとれるまで数ヶ月かかることがあります。炎症して半年ほどは皮膚の修復が活発に行われており、月日の経過とともに皮膚の硬さもとれていきます。
ところが、数ヶ月たっても赤く盛り上がったしこりが残ってしまった場合は、肥厚性瘢痕やケロイドの可能性があります。
ケロイド体質の場合はトラニラスト
ケロイド体質の場合は、トラニラスト(製品名では「リザベン」「トラニラストカプセル」など)の抗アレルギー薬を使用するとケロイドや肥厚性瘢痕の形成を予防できる可能性があります。
トラニラストはコラーゲンの過剰増生を促すサイトカインを抑制して傷跡がひどく悪化するのを予防します。
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