ニキビの悪化によって化膿したりすると皮膚の損傷が激しいものになり、赤みや炎症性色素沈着などのニキビ跡が濃く現れるようになります。
そして、皮膚が陥没してクレーター状のニキビ跡が発現してしまうこともあります。ところが、まれにニキビ跡が赤く盛り上がったケロイドを形成してしまうことがあります。
そのケロイドにはいくつかの種類があり、主に真性ケロイド、肥厚性瘢痕、成熟瘢痕という3つの種類があります。
3つのタイプを簡単にまとめた画像を作ってみました。
そして、それぞれの種類によって性質や治療法に大きな違いがあります。
今回は、ニキビ痕のケロイドの種類と性質の違い、また効果的な治療法の違いを詳しくまとめました。
ケロイドとは?
ケロイドは、皮膚の強い損傷や炎症によって、その皮膚ダメージが回復していく過程で主にコラーゲンなどの線維組織が過剰に増加し、盛り上がった瘢痕(傷跡)を形成してしまう状態をいいます。
皮膚損傷を修復する時に発生するサイトカインという情報伝達物質が過剰に発生することで、コラーゲンなどを作り出す線維芽細胞が極端に増殖し、その結果コラーゲンが増えすぎて盛り上がった瘢痕(ケロイド)が発生するのです。
ケロイドは免疫が過剰に反応して発生することから、アレルギー症状の一つだと考えることもできます。実際に、金属アレルギーなどのなんらかのアレルギー症状を持つ人は、ケロイド体質であることが多いようです。
ケロイド体質の人では、軽い皮膚の損傷レベルでもケロイドが起こることがあります。
体質的にケロイドができやすい人がいる一方で、どんな人においても皮膚の損傷が激しいものであればケロイドを起こす可能性はあります。例えば、手術によって皮膚を切って縫い合わせた後に、傷痕を残さずにキレイに治るということはまずありません。
見た目の症状
ケロイドの見た目は赤くて盛り上がった傷跡(瘢痕)で、触ったりつまんだりすると明らかな硬さが確認できます。ケロイドは「ミミズ腫れ」といわれるように、傷跡がミミズのような腫れ方をします。
発生原因
ケロイドが発生する原因は、主に強い外傷や手術などを中心に、ニキビやおでき、とびひなどの化膿性皮膚疾患で発生しやすくなります。ケロイド体質の人は、虫刺されでもケロイドになることがあるといいます。
基本的に何らかの損傷や炎症反応が起こった部分で発生します。炎症が治ってから数年経って急に発生することもあります。
発生しやすい部位
ケロイドが発生しやすい部位は、胸元、背中、肩、腕などです。皮膚が引っ張られやすい部分に発生しやすい傾向があります。
顔の場合ではUゾーン(フェイスライン)に発生しやすく、ケロイド体質の人がUゾーンにひどいニキビが発生するとケロイドを起こしてしまうことがあります。
悪化して硬くなったニキビとの違い
例えば、ニキビがひどく悪化して化膿したりすると、硬結という皮膚が赤くて硬くなった「しこり」のような状態がしばらく続くことがあります。その硬結となったニキビ跡がケロイドではないかとして皮膚科を受診する人は多いです。
ただし、にきび痕が赤くて硬い状態が続いても、それをケロイドと断定することはできません。
ニキビが悪化するほど炎症反応が強くなり、それによる毛細血管拡張や毛細血管の増殖によるうっ血(血流が停滞した状態)も強くなるため、しばらくは皮膚の硬さが残るのは自然なことです。
ニキビが治った後の硬さ(しこり)は顔などは比較的に早く取れますが、脚や腕などでは何か月も皮膚の硬さが残ることがあります。
一度、ニキビなどで強い炎症を起こした後は、約3~6か月間くらいは通常よりも活発に皮膚の修復が行われていますので、ニキビが悪化してしこりのようになっても、3か月~半年間以内で硬さがとれて治っていくことが多いです。
いろいろな種類がある
ニキビがひどくなるとケロイドを起こすことがありますが、ケロイドは厳密にはいくつかの種類があります。主に真性ケロイド、肥厚性瘢痕、成熟瘢痕などの種類があり、それぞれ性質や治療法に違いがあります。
真性ケロイド
真性ケロイドは、外傷や手術、ニキビやおできなどの、なんらかの皮膚の損傷が発生した後、その傷が修復される過程でコラーゲンなどの線維組織の増殖が止まらず、しだいに瘢痕(傷跡)が大きくなっていくものをいいます。簡単にいえば進行性があるのが真性ケロイドです。
真性ケロイドは、多く見られるケロイドとは違い、元の傷の範囲を超えて大きくなって、画像のようにいびつな形になることがあります。真性ケロイドは、年単位の時間をかけてゆっくりと大きくなっていくこともあれば、短期間で大きくなる場合もあります。
そして、真性ケロイドはコラーゲンの増加と共に毛細血管も増殖することで必ず赤みを帯びています。過剰に発生したサイトカインが毛細血管の増生を促して、赤みが強くなるのです。
自然治癒しない
真性ケロイドは、自然に改善していくことはありません。時間の経過と共にしだいに大きくなっていくため、治すには必ず特別な治療をする必要があります。そして、真性ケロイドが発生するような人は、体質的にケロイド体質であるため治療法も限られるものになります。
まれな症状
真性ケロイドは進行性がある悩ましいものですが、実はその真性ケロイドが発生する確率は非常に低いです。ニキビなどによって真性ケロイドが発生するのは非常にまれなケースです。
真性ケロイドの治療法
真性ケロイドの治療法は、進行を予防するトラニラストという抗アレルギー内服薬の服用を続けます。トラニラストは、コラーゲンを過剰に作り出すサイトカインの働きを抑え、真性ケロイドの進行を抑えます。
トラニラストによる効果は、はっきりとわからないという人もいますが、積極的に飲んだほうが良いと思います。
そして、外的な治療ではステロイド注射の使用や塗り薬などの治療法があるのですが、やはり真性ケロイドは進行性があるため、手術による切除が適していることが多いです。
真性ケロイドを放っておくと、とても大きくなってしまうことがあり、拡大したものは手術をしても傷跡が目だってしまうことがあるため、早い決断をしたほうが良いことがあります。
ただし、真性ケロイドの人では体質的に手術をした後にケロイドが再発することがあります。
手術では、ケロイドを取り除いて縫い合わせるのですが、皮膚の損傷部位が引っ張られるとその刺激によってケロイドが再発することが多いため、皮膚を余らせるように上手に縫い合わせます。ところが、上手に縫合しても再発のリスクはあります。
肥厚性瘢痕
肥厚性瘢痕は、外傷や手術、悪化したニキビなどの皮膚損傷によって、それを修復するためにコラーゲンなどの線維組織が過剰に作られ、赤みと共に盛り上がった瘢痕(傷跡)が形成された状態をいいます。
真性ケロイドと同じように主にコラーゲンの増生によって発生しますが、違いは肥厚性瘢痕の場合は真性ケロイドのように進行性がありません。元の傷跡の範囲を超えて大きく拡大していくことがないのが真性ケロイドとの違いです。
自然に治っていく
肥厚性瘢痕は、それ以上の拡大がないため、コラーゲン代謝と共に年単位の時間をかけて改善していくことがほとんどです。目安として縦横1センチくらいの肥厚性瘢痕の場合は、10~15年くらいで赤みと共に盛り上がりも平らになって治っていくことが多いです。
肥厚性瘢痕が治っていくのは、進行性がないことと、赤みが見られることが要因です。肥厚性瘢痕の赤みは毛細血管の増殖によるものですが、コラーゲンが増殖した部分に毛細血管が豊富に存在するということは、コラーゲン代謝が活発に行われる環境があることを意味します。
増えすぎたコラーゲンが活発に入れ替わり、再構築されて正常化していくため、肥厚性瘢痕のほとんどは治っていくのです。
皮膚に存在するコラーゲンは代謝によって約3~5年くらいですべて生まれ変わっているとされますが、それと同じように肥厚性瘢痕もコラーゲン代謝によって長い年月をかけて治っていきます。ただし、赤みだけがとれて盛り上がりや硬さが残ってしまうこともあります。
赤みのあるケロイドのほとんどが肥厚性瘢痕
赤みのみられるケロイドのほとんどは、この肥厚性瘢痕といわれる進行性のないものです。ニキビによってケロイドができたとしても、ほとんどのケースでは真性ケロイドではなく、ニキビの範囲を超えて拡大することはありません。改善傾向があるため、深刻に悩まないで下さい。
肥厚性瘢痕の治療法
肥厚性瘢痕の治療は、トラニラスト、ヒルドイド(ヘパリン類似物質)、ステロイドテープ、ステロイド注射、レーザー治療、手術による切除などの治療法があります。
その中でも、即効性が高くて劇的な効果が得られるのはステロイド注射です。ステロイド注射は1~2年の治療期間をかけて10~20回 くらいの治療回数が必要になることがありますが、保険適応で費用が安く、生活の負担も少ない利点があります。
ただし、痛みが強いのが欠点です。また、ステロイド注射によって皮膚が萎縮しすぎて凹んでしまうこともあるため注意しなければいけません。
そして、肥厚性瘢痕は真性ケロイドと違って10年くらいで治っていくことが多いので、ステロイドを使うような積極的な治療は必要ないかもしれません。特にニキビ跡の肥厚性瘢痕はそれほど大きなものにならないため、ステロイド治療は必要ないと思います。
ニキビ跡の肥厚性瘢痕治療は、悪化を防ぐためトラニラストの服用を半年くらい続け、外用はヒルドイドクリームを使って地道に治していくのが最も安全で理想的だと思います。
成熟瘢痕
成熟瘢痕は、傷痕の拡大が落ち着き、成熟化した状態をいいます。
コラーゲンなどの繊維組織が増殖した状態から赤みが引いて白っぽくなった状態が成熟瘢痕です。
赤みが引いた状態というのは毛細血管が消失した状態だということです。
肥厚性瘢痕の赤みが取れると白っぽい盛り上がりが残ることがありますが、それも成熟瘢痕です。
その成熟瘢痕はケロイド体質の人では、軽い炎症が続く部分や過去に炎症が起こった部分に突然現れることもあります。
画像のように顔ではフェイスラインに発生しやすいのが特徴。 この症状ができやすいのも体質的な要因が大きく影響します。
成熟瘢痕は自然には治らない
成熟瘢痕は肥厚性瘢痕のように自然に治ることはありません。改善傾向にある肥厚性瘢痕との違いは、成熟瘢痕の場合は毛細血管が消失していることです。
毛細血管が通っておらず、コラーゲン代謝が活発に行われる環境が整っていないことが自然治癒しない理由です。
盛り上がった成熟瘢痕の治療法
まず、盛り上がった成熟瘢痕の治療は非常に難しいです。毛細血管が消失しているためレーザー治療などを使用しても皮膚の入れ替えが難しく、増えすぎたコラーゲンの分解が進まないためです。
何らかの施術によって瘢痕内に毛細血管が増え、コラーゲン代謝が活発に行われる環境が整えば、盛り上がった成熟瘢痕でも平らになっていく可能性がありますが、やはり成熟瘢痕内に血管を復活させるのは難しいのが現状です。
また、どうしても盛り上がった成熟瘢痕を治したい場合は手術によって切除する必要がありますが、それでも傷跡が残ってしまう問題があります。
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