ニキビの炎症が悪化するほど、赤みや色素沈着といったにきび跡がひどくなってしまうことがあります。
そして、場合によってはニキビ跡がクレーター状に凹んでしまうこともまれではありません。
ニキビによる凹みを治療する方法はいろいろありますが、今回は自分で針を使って治す方法をご紹介します。
ニキビ跡クレーター発生の仕組み
そもそも、ニキビによってなぜ皮膚が凹んでしまうのでしょうか。
ニキビの原因菌であるアクネ菌が増加すると、肌細胞はそれを異常だと判断して免疫反応を起こすようになります。
そして好中球(白血球の一つ)がアクネ菌を食べ、活性酸素を放出してアクネ菌を攻撃します。
この免疫システムによってアクネ菌が最終的に死滅して炎症が治まりますが、一方で白血球が発生させる活性酸素は肌に対して強烈なダメージを与え、皮膚を破壊する原因となります。
それによってコラーゲンなどが硬く萎縮して瘢痕化し、その部分だけ皮膚が凹んでしまうようになります。これがニキビ跡のクレーター。
ニキビ跡のクレーターはコラーゲンが減少したのではなく、コラーゲンなどが硬く萎縮して皮膚が凹んでしまう現象です。
そのため、コラーゲンを増加させる治療だけではなく、瘢痕組織を正常化するための「皮膚の生まれ変わり」を促す治療が有効なのです。
その治療の一つが針を使った方法というわけです。
針を刺すと成長因子が発生する
皮膚に針を刺すと、その傷を治すために細胞増殖因子(成長因子)が発生します。
それによって線維芽細胞が活性化し、コラーゲンの分解や合成が進みます。つまり、コラーゲンが増加しながら新しい皮膚との入れ替えが促されるのです。
この自然治癒力を導き出す治療が、ニキビ跡の治療にもよく用いられています。
ただし、どんな針でも良いわけではありません。大きな傷とならない細い針を使わなければいけません。
針を使った治療はダーマローラーやダーマペンが有名
「針」を使ったニキビ跡のクレーターの治療には、ダーマローラーやダーマペン(A-MTS)といった方法があります。それぞれ簡単に説明。
ダーマローラー
ダーマローラーは、極細の針が等間隔に付いたローラーを肌の上で転がして意図的に傷をつくり、その傷を治すために放出される成長因子(細胞増殖因子)によってコラーゲン増生や皮膚の入れ替えを促す治療です。
以下の画像は、ダーマローラーを肌で転がしているところ。無数に針を刺すことで血だらけになっています。 本気でニキビ跡を治したいのならば、1~2ミリくらいの針を使って血が出るくらいにゴリゴリやらないといけません。
ただし、長い針ほど痛いです。激痛。麻酔をしていても痛いです。
ダーマペン(A-MTS)
ダーマペンは、極細の針がついた電動スタンプによって皮膚に穴を開けていき、その傷を修復するために放出される成長因子によってコラーゲン増生や皮膚の入れ替えを促す治療。 ダーマローラーとの違いは、「垂直に刺すこと」、「ローラーのように針が皮膚内で動かないので痛みが少ない」などがあげられます。
痛みやダウンタイムを比べると、ダーマペンのほうが優れています。
以下の写真はダーマペンの治療。針が付いた電動スタンプを肌で滑らせているところ。赤い液体は出血によるものです。 ニキビ跡の凹みは陥没型の瘢痕であり、それは一種の傷跡だといえるのですが、その傷跡を針を使って改善するには、血がたくさん出るくらい激しい治療が必要なのです。
いずれの治療法においても、針を使って意図的にダメージを与え、その後の自然治癒力(成長因子)を利用してニキビ跡の皮膚を正常化していく方法です。
今回、ご紹介するのは、その原理を応用したものです。
ダーマローラーを使わなくても自分で治療できる
ダーマローラーやダーマペンなどのように「針」がついた専門の医療器具を使う方法もありますが、原理的に言えば適した針さえあれば自分で行うこともできます。
その場合は、自分で凹んだ部分に針を1本1本刺す必要がありますが、治したい凹みの数が少ないならばそれほど時間がかかるものではありません。
むしろ、ピンポイントの治療ができるので、余計なところにまでダメージは及ばないメリットがあります。
また、出血や赤みの度合いなどを確認しながら、自分のさじ加減で行うことができる利点も。
なお、一部のクリニックではニキビ跡のクレーターに対し、医療用の「極細針」を1本1本刺して凹みを和らげる治療を行っているところもあります。
用意するアイテム
自分で針を使って凹みを治す場合は以下のアイテムを用意して下さい。
- サビや折れる心配がない細い針。太い針は不向きです。細ければ、まち針や縫い針でOKです。
- 成長因子を含んだ美容液、プラセンタエキス原液など。(これは、美容効果を高めるためのものであり、なくてもかまいません)。
いずれにしても太い針は適していない
やはり皮膚に刺す針は細いものがいいです。
太い針を刺していると損傷がひどくなってしまい、赤みが残ったり、内出血を起こしたりすることも。
損傷がひどくなると、そのままシミとなってしまうこともまれではありません。
ビーズ針という細い針が理想
肌の損傷を最低限に抑えるためには細くて丈夫な針が理想です。
細いならばまち針や縫い針でもOKですが一般的なものは太いです。なお安全ピンは太すぎます。
いろいろ探してみると、以下の画像のような「ビーズ針」という極細の針を発見!ビーズ針とはビーズを通すために使われる専用の針のこと。とても小さな穴を通せるように針も非常に細く作られているものがあります。 画像はイギリスのJOHN JAMES社のもの。その会社は、ビーズ針の製造メーカーとして世界的にも有名な会社です。
JOHN JAMES社のビーズ針は、まち針や縫い針と比べてもとても細く、太さ0.3ミリ代、もしくはそれ以下のものもあります。
その太さの違いを比較した拡大写真を撮ってみました。
このビーズ針の太さは、ダーマローラーやダーマペンなどで使われる針とほぼ同じ、もしくはわずかに太いかなというレベルです。 けれど、難点もいろいろありそうです。
ビーズ針の欠点いろいろ
- ビーズ針のほうが先端の針の鋭さがなめらかなので、深く刺しにくいかもしれません。
- 針がとても細いので折れる可能性もあります。(肌に対して垂直に刺せば折れにくくなります)
筆者はダーマスタンプをカスタムして使ってます
実は筆者も頬のところに一つある深いニキビ跡のクレーターに悩んでいたりします。
そして、私の場合はダーマスタンプを使ってます。このダーマスタンプは電動タイプ(ダーマペン)ではありません。
でも針が多すぎるのでカスタム!ペンチで針を抜いて針の本数を減らします。
針を4本だけにして、これにより痛みも少なくなり、さらにピンポイントに治療できるようになります。
効果のほどは「凹みが少し和らいだかな?」というくらいです。凹みの鋭さがなくなったように思います。
けれど、今は使ってません。前に内出血して一時的にシミっぽくなったためです。やはり、やりすぎには注意しないといけません。
失敗例を確認
「どのように行うか?」の前に失敗のケースから確認。
なぜなら、やはり皮膚に針を刺すという行為はリスクがあるためです。よく起こるケースが内出血、赤み、色素沈着などです。
内出血からシミになるケース
画像は、ダーマペンという針を刺す治療を行った後に発生した内出血の写真。
一箇所に集中的に針を刺しすぎると、内出血したり赤みが残ったりしますが、その回復が遅れると色素沈着(しみ)が残ってしまうことがあります。
この現象は、もともと肌が弱い人、または加齢が進んだ肌の人に起こりやすいといえます。
このような失敗を起こさないために、最初は軽めに行って回復力を確認して下さい。
赤みが残る
写真はダーマローラーを行った後に発生した点状の赤み。
針がついたローラーを転がして穴をあけた部分にそのまま赤みが残った状態。これは毛細血管の損傷によるもの。
この現象も肌が弱い人ほど起こりやすいです。
逆に盛り上がった瘢痕を形成することも
針を刺した部分が盛り上がった傷になることがあります。これは体質による影響が大きいので、例えばケロイド体質の人は止めたほうがいいです。
治療の手順
Step1洗顔と保湿、針の洗浄
洗顔をして肌の汚れを落とし、洗顔後は化粧水などで肌を整えて下さい。また、使用する針を洗って清潔にしておいて下さい。
Step2アイスパックなどで治療部位を冷やす
治療部位(針を刺す部分)をアイスパックなどで冷やします。ビニールに入れた氷水でもOK。冷やすことで痛みを和らげることができます。
麻酔をするという選択肢もありますが、部分的なクレーターを針1本1本刺していくものなので、痛みについては我慢できると思います。
Step3ニキビ痕の周囲に対して針を垂直に刺していく
クレーター部分に対して、針を垂直に刺していきます。そして、刺した部分どうしはある程度は間隔をあけて下さい。
理由は、一箇所に集中的に刺してしまうと、内出血や色素沈着のリスクが高くなるためです。
そして、ニキビ痕の範囲をやや超えて針を刺していきましょう。これは瘢痕部において消失している毛細血管を復活させるためです。
毛細血管が通ってなければ瘢痕の正体であるコラーゲン塊の分解がすすみません。つまり皮膚の入れ替え(傷跡の正常化)が実現できないということです。
針を刺す深さはどれくらい?
真皮層の厚さは1~3ミリ(頬などの厚い部分は2~3ミリ程度)ですので、それくらいを目安にして刺して下さい。
ちなみに、ダーマローラーやダーマペンでは最大で2.5~3.0ミリくらいの針の長さがあります。
ただし、あまりにも深く刺さないようにしたほうが無難です。なお、真皮層には血管が通っていますので深く刺すほど出血を起こします。
針を刺す回数
針を刺す箇所・本数は、例えば直径2ミリ程のクレーターの場合では、わずかな間隔をあけて10~30箇所くらいを目安にしましょう。
Step4プラセンタエキスの塗布
針を刺すと皮膚に穴があきます。そして、その穴から美容有効成分の浸透が良くなります。
そこで、成長因子を含んだ美容液やプラセンタエキスなどを塗布することでさらに皮膚の若返り効果が期待できます。
また、それらの美容液を塗布したまま針を刺していくという方法もあります。
なお、美容液やプラセンタエキスなどは絶対必要なものではありません。
Step5出血や体液はそのままにしておく
針を刺すと出血しますが、その血や体液はダメージを修復させる働きがあるため、しばらくはそのままにしておきましょう。
なお、出血した皮膚を消毒してしまうと細胞の活性化を阻害してしまいますので、細菌感染予防などとして下手にエタノールで消毒したりしないで下さい。
アフターケア
- 治療後から数日かけてカサブタができますが、それを無理に剥がしたりしないようにします。
- カサブタが完全にとれるのは1週間が目安です。自然に剥がれるのを待ちましょう。
- 治療後のお化粧は控えましょう。また、ゴシゴシ洗いや紫外線を浴びるといった行為は厳禁です。
- 保湿をすることで肌の再生力が高くなります。いつもよりも保湿をこころがけて下さい。
治療回数の目安
ニキビ跡クレーター治療は2~3か月おきに1回くらいのペースで行ってください。効果が実感できるまでは5回以上かかると思います。
美容クリニックなどで行うダーマローラーやダーマペンなどにおいてもニキビ跡のクレーターの改善効果を得るにはそれくらいの治療回数が必要です。
すぐに改善できるものではないため気長に行いましょう。
効果ないと感じることも少なくない
ダーマローラーやダーマペンなどにおいても言えることですが、針を使ったニキビ跡治療を何度も繰り返しても、改善が見られないケースも多いです。
むしろ色素沈着を起こして、かえって跡がひどく見えるようになってしまうこともあります。そういった効果とリスクを認識して行って下さい。
副作用と注意点
- 即効性をもたらすために、一気に極端な治療はしてはいけません。
- 針を皮膚に刺すという行為は、やりすぎると色素沈着を起こす可能性があります。ダメージが強いため、体調が良いときに行いましょう。
- 一度、内出血を起こして治りにくい経験をしたら、次はやらないほうがいいです。
- 赤みがでたり、カサブタなどができますので、仕事や生活に余裕がある時に行いましょう。
- ケロイド体質の人はこの方法は行ってはいけません。
- 妊娠中、授乳中は行ってはいけません。その時期は色素沈着がおきやすくなるためです。
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