アダパレンゲル0.1%は、皮膚科で処方される外用のニキビ治療薬。
2008年から保険適用のニキビ薬としてディフェリンゲルが販売開始され、そのジェネリック品がアダパレンゲルです。
このお薬はターンオーバーを抑えることでニキビを治していくのですが、一方でほとんどの人がなんらかの副作用が現れる欠点があります。
今回は、そのアダパレンゲルのニキビ治療効果と使い方、副作用の対処法などを詳しく解説していきます。
アダパレンゲルの効果
アダパレンゲルの主成分はナフトエ酸誘導体で、その成分の一般名をアダパレンといいます。その成分を0.1%(1g中1mg)配合。
アダパレンはレチノイド様作用を有し、皮膚内のレチノイン酸受容体(RARγ)に作用して表皮細胞の分化を抑えます。
簡単に言えば皮膚の角化(ターンオーバー)を抑制するのです。ターンオーバーの促進ではありません。
ターンオーバーを抑えることで、角質が厚くなって毛穴がふさがる現象や、毛穴に角質が溜まってニキビの芯(角栓)ができる現象を予防します。そして最終的にニキビを治していきます。
より早くニキビが治ることでニキビ跡の色素沈着や毛細血管の増殖による赤み、クレーターやケロイドなどの予防効果が期待ができるのです。
赤ニキビ減少率は?
以下のグラフは皮膚科でよく処方されるニキビ薬の12週間後の炎症ニキビ減少率を比較したもの。わかりやすく画像にしてみました。
なお、この試験結果は同じ環境で行われたものではないですが、だいたいの目安として考えて下さい。
アダパレンゲルの炎症ニキビの減少率は64.1%。これは抗生物質を使った治療よりも高いです。ニキビ予防にもなるお薬なので最終的にニキビが減少傾向に向かうのです。
わりと安定的に効くのでニキビケアに対して第一選択肢として処方するお医者さんも多いです。
なお、他の処方薬では、最も高い改善率がベピオゲルの約72%となっています。
他は、クリンダマイシンが53%、ナジフロキサシンが53.5%、オゼノキサシンが54.7%となっています。抗菌薬の場合はどれも大きな違いはないようです。
有効なニキビの種類
アダパレンゲルは、白ニキビなどの炎症性の低いニキビから赤ニキビまで効きます。ただし化膿してしまったニキビには効きにくいと思います。
黒ニキビといった毛穴に芯がつまった状態にも効くとされますが、特に炎症を起こしていないにきびに使い続ける必要はないです。
治療3週間後の効果
写真は赤ニキビに対してアダパレンゲルを使った3週間後の画像。
やや色素沈着や赤みは残っていますがキレイに治ってます。なお、にきびの腫れそのものは1週間前後で治ります。
殺菌作用はない
アダパレンには、一般的なニキビ治療薬のような殺菌作用はありません。ターンオーバーをコントロールする作用のみです。
殺菌効果がないので炎症性が強いニキビに対しては、このお薬だけでは力不足なところがあります。
そのため、強く炎症したニキビに対しては他のお薬が処方されたり、また、アダパレンと組み合わせて殺菌薬が同時に処方されることもよくあります。
なお、皮膚科で処方される殺菌薬としてはベピオゲル(過酸化ベンゾイル)、ダラシンTゲル(抗菌薬)、アクアチムクリーム(抗菌薬)、ゼビアックスローションなどがあります。
処方されるお薬は医師によって違いますので、遠慮せずにたずねてみましょう。
耐性菌が生じる問題がない
例えば、抗生物質を使うと耐性菌が生じて成分の効果が出づらくなることがありますが、アダパレンの場合は抗菌薬ではないのでそういった問題がないです。わりと長期的に自由度の高い使い方ができるメリットがあります。
毛穴を小さくする効果がある
無駄な知識かもしれませんが、理論的にはアダパレンの薬理作用によって開いた毛穴を小さくする効果が期待できます。
一概には言えませんが、毛穴が開く現象は毛穴周辺のターンオーバーが進み過ぎていることで発生することがあります。
皮脂中の不飽和脂肪酸が毛穴を刺激することでターンオーバーが必要以上に進行してしまうのです。これは皮脂が多い人ほど起こりやすいです。
アダパレンゲルは、ターンオーバーを抑える働きがありますので、毛穴が分厚くなる現象を解消して毛穴の開きを解消する効果があるのです。
ただし、この効果は使っているときだけに効くものです。副作用があるので通常はにきびが治れば使用を終了しましょう。
効果ないと感じることも
人によってはアダパレンゲルが効かないことも。ニキビの腫れが強すぎたり、肌質が強い人(厚い人)、受容体の感受性が低いなどは効果ないように感じることがあるようです。
使い方
アダパレンゲルの使い方は、洗顔やクレンジングをして肌の汚れを落とし、化粧水などで肌を整えた後に使用します。
1日1回、ゲルを適量をとってニキビにちょこんと塗ります。紫外線を避けるために就寝前に1回使用するのが理想です。
なお、早く治したいからとして一日に何度も塗ったり、何回分もの量を一度に塗ったりしないようにしましょう。
UVケアは必須
アダパレンの角化抑制という効能により、使用中は皮膚が薄くなっていきます。刺激に弱くなるので紫外線対策をして下さい。日焼けは厳禁。
顔ニキビへの使用が原則
アダパレンゲルは基本的に顔のニキビだけに使用するのが原則です。理由は販売元のマルホによると背中や胸などの皮膚には効果が安定しないためです。ただし、別に使っても大きな問題はないです。
ただし、身体の場所によっては反対に強烈な反応がでてしまうところもあります。
乳首、乳輪、肛門部分、陰部などは強い反応がでて激しい炎症を起こしたりしますので使ってはいけません。
なお、この現象は他のレチノイド製剤(トレチノインなど)でも同じです。
目や口、粘膜を避けて塗るのが原則
この薬は目や口、粘膜部を避けながら塗って下さい。目の近くに塗ると眼瞼炎、口の近くは口角炎を起こす可能性があります。そして、もし目に入ったら充分に洗い流して下さい。
妊娠中には使ってはいけない
アダパレンゲルは、妊娠中や授乳中の使用は控えるべきとされます。レチノイド様作用が胎児に影響する可能性が否定できないためです。
ただし、そのことを知らずにもし妊娠している時に使っても基本的に問題は起きません。世界的に使用される薬なのですが、そういった事例は確認されていません。
赤ちゃんのニキビには使用しない
生後間もない赤ちゃんはお母さんの性ホルモンを受け継ぐのでニキビがたくさんできることがよくありますが、赤ちゃんにはアダパレンは使ってはいけません。乳児の肌には刺激が強すぎます。
ほかの使用上の注意点
- 反応の現れ方は個人差があります。よく効く人もいれば、あまり効果が実感できない人もいます。
- 敏感肌や肌が弱くて薄い人はこの塗り薬は向いていません。刺激性が強いためです。
- ピーリングをしすぎて薄くなった肌には刺激が強いかもしれません。
カビやウイルス性の皮膚病にも効かない
アダパレンはニキビのみに効くお薬です。なので、毛嚢炎やマラセチア毛包炎などの皮膚病には効かないです。
また、帯状疱疹やヘルペスといったウイルス性の皮膚病にも効かないです。
保管方法
保管については、しっかりとキャップを閉めて冷暗所に保管します。特に冷蔵庫に保管する必要はありません。
処方してもらうには?
アダパレンは、皮膚科を受診してニキビの症状があれば処方してもらえるはずです。保険適用です。(処方頻度はかなり高い)
薬代は?
アダパレンゲルの薬価は、製品1本15gで750円。それから保険適用(3割負担)で料金は約225円です。
なお、先発品のディフェリンゲルは製品1本15gで1800円。保険適用3割負担で価格は約540円です。先発品なので料金が高いです。
薬価は変更されることがありますが一つの目安にして下さい。
なお、日本の医療費削減のため価格が安いジェネリック品が処方されることが多くなっています。
ジェネリックにはクリームタイプもある
この製品はジェネリック医薬品が登場していますが、それにはクリームタイプの製品も登場しています。
アダパレンクリームは油脂成分(グリセリンやスクワラン)が多いので、ゲルタイプよりも刺激性が若干少ないようです。
副作用を抑えたい人向けといえます。扱ってない薬局もあると思うので薬剤師にたずねてみましょう。
なお、油脂成分は毛穴を詰まらせる可能性があるので脂性肌タイプのニキビにはゲルタイプが適していると思います。
使用期限
アダパレンゲルの使用期限は3年です。アダパレンクリームの方は2年となっています。
アダパレンを含む他の処方薬もある
アダパレンという成分は、エピデュオゲルというニキビ処方薬にも配合されています。ただし、そのお薬には過酸化ベンゾイルという成分も含まれています。つまり合剤です。
なお、エピデュオゲルの副作用の発現率は最も高いので肌に不安がある人は使ってはいけません。
ベピオゲルと一緒に処方されることがある
皮膚科では、アダパレンゲルと同時にベピオゲルという塗り薬と一緒に処方されることがあります。
ベピオゲルは酸化剤の一つで、酸素を発生させることでニキビ菌を殺菌します。(にきび菌は酸素があると死滅する性質をもっているためです)
アダパレンゲルとベピオゲルと一緒に使うことで炎症性が強い赤ニキビに対して相乗効果をもたらします。
ただし、ベピオゲルはアダパレンと同じように刺激性が強いので、2つを組み合わせると赤みやヒリヒリ感などの副作用がより強く現われやすい欠点があります。肌の強さに自信が無い人には不向きです。
同時に使う場合の順番
アダパレンゲルとベピオゲルを同時に使う場合は、同じゲル状のお薬なので塗る順番はどちらが先でも大丈夫です。
海外には0.3%濃度のものがある
日本で販売されるアダパレンゲルは0.1%ですが、実は、海外にはアダパレンを0.3%配合した製品が販売されています。
これは日本の基準の3倍レベルです。欧米人(白人)は角質層が厚いことから3倍の濃度でも大丈夫だったりします。
なお、日本人でも皮膚が厚い人、ニキビができやすい人は0.1%の濃度では物足りないこともあります。
副作用や危険性は?
販売元のマルホ株式会社の報告では、アダパレンゲルの副作用は使用者の約79%(544例中429例)に現れるとされます。症状は以下の通り。
- 肌の乾燥が56.1%
- ほてり、ヒリヒリなどの刺激感が47.6%
- 皮がめくれる現象が33.5%
- 皮膚の赤みが21.9%
- 肌のかゆみが13.2%
この塗り薬の副作用はかなり多いのですが、その副作用は薬が効いている証拠だと考えて下さい。
反対に副作用がでない人ほど薬の効果が低いといえます。
そして、ほとんどの場合は副作用はあまり気にする必要はないです。ただし、かぶれには注意しないといけません。
使用継続によって副作用が現れなくなる?
アダパレンは、使い続けるほど副作用が落ち着いてきます。使用から3~4週間ほどすれば赤みやヒリヒリした痛み、かゆみなどは軽減されることがほとんどです。
ただし、これは皮膚がお薬に慣れてしまったためで、反対にいえば成分が効きにくくなったとも言えます。
なお、一度効かなくなっても使用を中止して月日が経てば再び成分が効くようになってきます。
副作用の対処法
肌の乾燥(発現率56.1%)
アダパレンによる肌の乾燥は、ターンオーバーを抑制することで皮膚が薄くなり、保湿機能やバリア機能が弱くなることで起こります。
この副作用は化粧水などで保湿して対処して下さい。ただし、あまりにも乾燥がひどい場合は使用を中止するようにしましょう。
なお、皮膚科医は保湿剤としてヒルドイドローションというヘパリン類似物質を主成分とした保湿剤を同時に処方することがあります。
そして、もともとの乾燥肌の人はアダパレンゲルは適していません。逆に肌荒れの原因となります。乾燥肌の場合はアクアチムなどの抗菌薬が理想です。
ほてり、ヒリヒリなどの刺激感(発現率47.6%)
アダパレンゲル使用中はヒリヒリ感、熱感などの刺激を感じることがあり、全体の47.6%に生じます。
これもお薬が皮膚に作用して効果が現れている証拠ですが、これらの違和感により使用を中止してしまう人も多いです。
ただし、よく起こる一時的な副作用なので多くのケースでは使用し続けてかまいません。
ただし、その刺激が強すぎる場合やするどい痛みの場合、また一時的ではなくずっと続く場合は洗い流して使用中止して下さい。接触皮膚炎を起こしてる可能性があります。
皮がめくれる(発現率33.5%)
全体の33.5%に生じると報告される皮がめくれるといった副作用。
ところが、その現象は珍しいものではないです。イオウ配合のニキビ薬などでもよく見られる現象です。保湿で対処して下さい。
皮膚の赤み(発現率21.9%)
アダパレンを使用すると、多くケースで皮膚の赤みがみられます。全体の21.9%に生じます。これは正常に作用している証拠でもあります。
赤みがでるとニキビが悪化したように見えることがありますが、それは基本的に一時的なものです。
ニキビが治ってお薬を中止すると赤みは消失していきます。また、使い続けることで肌が慣れ、赤みがでなくなります。
ただし、赤みが極端に強い場合や、それと共にかゆみもひどいような場合は洗い流して使用中止して下さい。アレルギーの可能性があります。
皮膚のかゆみ(発現率13.2%)
アダパレンゲルによって皮膚のかゆみが現われることがあります。全体の13.2%に生じます。
この薬を使い続けてターンオーバーが抑えられたことで角質層が薄くなり、かゆみや刺激に対して敏感になることが主な原因です。
かゆいからといってニキビを掻いたりせずに、そのまま続けてみて下さい。
なお、そのかゆみがとても強い場合や赤みもひどい場合はアレルギー性接触皮膚炎(通称:かぶれ)を起こしている可能性がありますので、使用中止して下さい。
最も注意が必要なのがアレルギー性接触皮膚炎
アダパレンゲルの副作用で最も厄介なのが「かぶれ」です。アレルギーによる接触皮膚炎をいいます。
アレルギーを起こすと、強いかゆみと赤みが必ず現れます。
かぶれているのに使い続けるとニキビが悪化します。しこりのように硬くなったり、色素沈着が残ったり、クレーターになったり・・・。
また、アレルギーの場合はケロイドになる可能性も高くなります。
そのようにならないために、もし強いかゆみと赤みが出たら絶対に使用中止しましょう。そして早めに医師に診てもらうのが理想です。
かぶれた場合の皮膚科の治療は?
アダパレンでかぶれてしまったら、皮膚科では消炎薬や刺激が低い抗生物質が処方されます。以下のようなお薬があります。
- スタデルム軟膏やベシカム軟膏(ステロイドではない消炎薬)
- アクアチム(刺激性が低い抗菌薬)
- ゼビアックスローション(低刺激の抗菌薬)
なお、皮膚科医によっては、例えばロコイド軟膏などのステロイド外用薬をすすめる医師もいたります。
ステロイドは抗炎症と免疫抑制作用によりアレルギー症状を抑える働きがありますが、一方でニキビの治りを遅らせてしまう欠点があります。医師でも判断が難しいところです。
自分で市販の塗り薬で対処するには?
アダパレンでかぶれてしまって自分で対処する場合、市販薬では以下のようなお薬がおすすめです。
- スキンセーフAPクリーム(ステロイドが配合されない抗アレルギー薬+抗炎症薬)
- ドルマイシン軟膏、テラマイシン軟膏(どちらも2種類の抗生物質を含んだ塗り薬)
使い方は、クリームを塗った後に軟膏を塗ります。油脂が多いお薬を後に塗って下さい。水っぽい塗り薬から先に塗るのが基本です。
最後に
アダパレンゲルは現在では世界的に使用されるニキビ薬です。世界中で認められるくらい良いお薬なのですが、いろいろ癖があるので途中で止めてしまう人も多いです。
でも、ほとんどのケースでは使い続けて問題ないです。塗ってすぐに極端な副作用が出なければ、信じて使い続けてみましょう。
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