一般に、にきびというと顔や背中に発生しやすいことで知られています。
ところが、ニキビは毛穴と皮脂腺がある部分であれば、身体の皮膚のどの部位でも発生する可能性があります。その一つが脚(足)です。
体質的にニキビができやすい人は、脚にもよくにきびができることがあります。
また、単に足のニキビのように見えても実際は違う皮膚病である可能性もあります。
今回は脚のデキモノについて。
足・脚ニキビの原因とは?
男性ホルモン増加
一般に、ニキビの原因の多くは男性ホルモンの増加が関与しているといわれます。
男性ホルモンは皮脂腺に作用して皮脂分泌を促し、毛穴つまりを誘発する作用があることがわかっていますが、例外なく脚ニキビも男性ホルモンの影響が大きく関与している可能性があります。
特に脚の上部(ふとももの上部)は皮脂腺が発達していてテストステロンの影響で皮脂が増えやすいので、男性ホルモンが活発になると炎症性のニキビができても不思議ではないです。
なお、一般的なニキビは「皮脂の増加」→「皮脂が皮膚を刺激して皮膚が厚くなる」→「毛穴内部で古い角質と皮脂がたまってニキビの芯(角栓)が形成される」→「完全に塞がった毛穴の中でアクネ菌が増加する」といったプロセスで発生します。
ターンオーバーの乱れ
脚のような皮脂が少ない部分にもニキビができる場合、肌のターンオーバーが乱れている可能性があります。皮膚細胞が作られて剥がれていくといった肌代謝が一定のスピードで行われず、乱れてしまうことで毛穴がつまりやすくなり、ニキビが発生してしまうようになります。
肌の代謝が乱れる原因は、皮脂の増加、ストレス、運動不足、睡眠不足などが考えられます。また、ダイエットや偏食などで栄養バランスが乱れることでも肌のターンオーバーが乱れることがあります。
長いソックス、ストッキングの刺激が原因になることも
長い靴下やストッキング、密着した衣類が皮膚を刺激して脚にニキビができてしまう可能性があります。肌への刺激はターンオーバーを乱し、毛穴をつまらせる原因になるので、ニキビができる人は肌への負担が少ない服装にしたほうがいいです。
また、蒸れてしまうような状態になるとカビが増加してブツブツができることがあります。その場合はニキビとは違う症状が発生することが多いです。
単に洗浄不足であることも
脚吹き出物ができてしまうという人は、単に洗浄不足である可能性があります。例えば、風呂に入らない日が長く続くと、太ももやふくらはぎといった皮脂が少ない部分においてもニキビができてしまうことがよくあります。
若い人ほど全身の肌代謝が活発で皮脂量や汗などの分泌物も多いため、足にニキビができても不思議ではありません。
脚ニキビを予防するには毎日欠かさず入浴して身体の汚れを落とすことが基本です。お湯は脱脂力があり、それだけで身体の皮脂汚れをある程度は落とすことができるため、シャワーだけで済ますのではなく、湯船につかった方が良いかもしれません。
マラセチアというカビが原因になることもある
脚のニキビはマラセチア真菌というカビによって発生することもあります。ニキビと区別して「マラセチア毛包炎」と判断されることもあります。
マラセチア菌というカビは皮膚の常在菌の一つで、湿気が多い環境を好みます。汗をかきやすい夏場に足にきびが多発し、小さくて赤いニキビがポツポツできるという人はマラセチア真菌が原因かもしれません。
マラセチア真菌が原因である場合は、一般的にニキビ治療薬に使用される抗生物質では効果がありません。ニキビの原因菌であるアクネ菌は細菌ですが、マラセチア毛包炎は真菌(カビ)が原因であるためです。
治療薬は抗真菌薬ニゾラールローション(一般名:ケトコナゾール)などが良く使用されます。
脚ニキビの正体は毛嚢炎が原因?
毛嚢炎(もうのうえん)とは、毛穴が傷つくことでそこからブドウ球菌(皮膚常在菌)が感染することによって起こる皮膚病です。他にも、毛包炎(もうほうえん)といったりもします。
見た目はにきびと非常に似ていて赤くブツブツしていたり、白ニキビのように先端に黄色がかった膿をもつことがありますが、にきびとは違う症状です。
毛嚢炎は、主にカミソリや毛抜きなどのムダ毛処理によって毛穴が傷つくことで発生します。脚はカミソリなどで逆剃り・深剃りしてしまうと皮膚を傷つけて毛嚢炎を起こしてしまうことが多いです。
ほとんどのケースでは数日すれば自然に治ることが多いですが、まれに炎症が悪化して化膿してしまうこともあります。
毛嚢炎を予防するには、肌を傷つけないためにきちんとシェービングクリームを塗布し、逆剃り・深剃りは避けて毛の流れに沿って処理することが大切です。ムダ毛処理後に冷水で肌を引き締めたり、化粧水で保湿することで毛嚢炎を予防できます。
毛嚢炎の場合、市販薬の「フルコートF軟膏」が良く効きます。フルコートFは、抗生物質とステロイドを組み合わせた塗り薬です。また、皮膚科を受診するとダラシンTゲル、アクアチム、ゼビアックスなどの抗菌薬が処方されることが多いです。
足・脚にきびの治し方
顔と同じように優しく手洗い
脚にきびができやすい人は、顔と同様にたくさんの泡を作って手洗いで丁寧に洗いましょう。しっかりと汚れを落とすことでニキビ予防につながり、しだいに脚ニキビは治っていくと思います。
そして、洗顔料は一般的な石鹸で十分です。脱脂力が強い洗顔料の場合はかえって肌のターンオーバーを乱す可能性があり、ニキビができやすくなることがあります。
また、ナイロンタオルやスクラブ洗顔料などでゴシゴシ洗ったりするとニキビが悪化したり、刺激によって皮膚が厚くなり、毛穴がつまってかえってニキビができやすくなることがあります。肌に負担を与えないように汚れを落とすのがスキンケアの基本です。
ピーリング化粧品で角質ケア
ターンオーバーの過剰に進み、角質が厚くなって毛穴が塞がると、皮脂が少ない足にもニキビができてしまうことがあります。ターンオーバーが乱れた脚ニキビには、ピーリング化粧品を使って角質ケアを行うことでしだいに治っていくと思います。
ピーリング化粧品には、洗顔料・固形石鹸、ふきとり化粧水、ピーリングジェルなどがあり、成分的にはグリコール酸や乳酸などのフルーツ酸(AHA)や、サリチル酸(BHA)などが用いられます。
また、パパインやプロテアーゼなどのたんぱく質分解酵素を使った商品もあり、それらは一般に酵素活性を保つために「パウダー洗顔料」として販売されています。(水に溶けると酵素活性を示します)。
ただし、ピーリングのやりすぎは肌を薄くしてしまう可能性があります。脚は角質層が厚い部分ですが、ピーリングコスメをニキビ予防として長々と使ってはいけません。ニキビができやすい場合にのみ限定的に使用しましょう。
脚のニキビは潰していい?
脚のニキビは多くの場合はマラセチア毛包炎や毛嚢炎などのニキビとは違う症状であることが多いので、基本的には潰さずに治しましょう。マラセチア毛包炎や毛嚢炎はニキビのような芯(角栓)がないので、潰して押し出そうとしても芯はでてきません。
太ももの上部は、皮脂腺が発達しているのでこの部分はニキビができることもありますが、脚はターンオーバーが活発ではなく色素沈着が残りやすいので基本的に脚ニキビは潰さずに治すのが無難だと思います。
潰していいのは白ニキビ
なお、潰して良いニキビは白ニキビという状態です。角栓の塊がありそうなニキビの場合は先端を針などで潰してコメドプッシャーで押し出すと早く治ることもあります。
ニキビの芯が出てきそうな状態に対してのみ自己責任で行って下さい。
ただし、毛嚢炎の場合はニキビの芯はないので、下手に潰そうとすると跡が悪化してしまうことがあります。
オロナインが脚ニキビに効果的
オロナインH軟膏は、クロルヘキシジングルコン酸塩液(20%)を有効成分とした塗り薬です。皮膚を柔軟にし、ニキビの原因菌を殺菌することで炎症を抑制します。オロナインは家庭のニキビ治療薬として長く利用されている歴史があります。
オロナインの主成分クロルヘキシジングルコン酸塩液は、マラセチア毛包炎のような真菌(カビ)が原因の症状にも効果は期待できます。ただし、真菌に対する効果は弱いです。
脚にきびが悪化したら皮膚科へ
脚にきびが化膿してしまったり、多発してしまう場合は皮膚科で治すのも一つの方法です。単に足ニキビだと思ってもニキビとは違う皮膚病である可能性もあるため、悪化したら一度皮膚科医に診てもらうと安心です。
炎症が進行した脚ニキビには、外用薬ではダラシンTゲル(抗生物質)やアクアチムクリーム(抗菌薬)、ゼビアックスローションなどがよく処方されます。また、ベピオゲルやデュアック配合ゲルという過酸化ベンゾイルを主成分としたお薬が処方されることがあるかもしれません。
ディフェリンゲルというお薬がよくニキビ治療に処方されるのですが、脚の皮膚は顔よりもディフェリンが反応しにくいため、脚ニキビに対しては基本的に処方されることはないです。
また、脚にきびや毛嚢炎が多発したり、化膿している場合は抗生物質の内服薬が有効なケースがあります。主にミノマイシン(一般名:ミノサイクリン)やルリッド錠(一般名:ロキシスロマイシン)、ファロム(ファロペネム)などの抗生物質がよく処方されます。
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