チェストツリーとは、南ヨーロッパから地中海沿岸、西アジア地域を原産地とするクマズツズラ科ハマゴウ属の落葉樹です。
チェストツリーは、プロゲステロンという女性ホルモンの分泌を高める作用を有し、主に月経前症候群(PMS)や不妊症などに効果があるハーブとして女性に対して古くから利用されてきた歴史があります。
チェストツリーは、ドイツでは月経前症候群(PMS)、生理不順、黄体機能不全、乳房痛などの治療薬として認可され、医薬品として使用されています。
チェストツリーの有効成分の効果
チェストツリーの果実であるチェストベリーに含まれる成分が脳下垂体(ホルモン分泌をコントロールする器官)に直接働きかけ、プロゲステロン(黄体ホルモン)という女性ホルモンの分泌を促す働きがあるとされます。
チェストツリーにはフラボノイド類、イリドイド配糖体、アルカロイド、精油などを含み、それらがプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌を正常化して月経前症候群(PMS)や不妊症などを改善すると考えられています。実際に、臨床試験においてチェストツリーがプロゲステロンを補う働きがあることは確認されています。
適応症状
チェストツリーは、プロゲステロンという女性ホルモンの分泌を高めることで、月経前症候群(PMS)、月経不順、無月経、不妊症、更年期障害などに効果があるとされます。
ニキビ治療とチェストツリーの効果
男性ホルモンと似た作用がある
チェストツリーはプロゲステロン(黄体ホルモン)という女性ホルモンの分泌を高める作用がありますが、プロゲステロンは部分的に男性ホルモンと似た作用があり、皮脂分泌を促す作用があります。
例えば、生理前(排卵期が終わって生理までの約10~14日間)に肌が脂っぽくなってニキビ・ブツブツができやすくなるのも、プロゲステロンが大きく影響すると考えられています。また、妊娠初期にニキビができすくなるのもプロゲステロンが増加することが要因だとされます。
なぜ男性ホルモンと似た働きがある?
プロゲステロンは、男性ホルモンと似た働きがありますが、その2つは共にコレステロールを原料にして作られるステロイドホルモンで、構造的に似ています。そのため、部分的に同じような作用を有することもあるようです。
男性ホルモンを抑える効果はない
チェストツリーにはプロゲステロンの分泌を促す働きがありますが、そのプロゲステロンには男性ホルモンそのものを抑制する働きがあります。ただし、チェストツリーを服用しても男性ホルモンを抑制できる効果は期待できません。
チェストツリーはニキビに効く?
チェストツリーはプロゲステロンという女性ホルモンの分泌を高める作用がありますが、そもそもプロゲステロンには男性ホルモンと似たような作用があり、ニキビや肌荒れを引き起こしやすい作用があります。
プロゲステロンが低下している女性の場合は、チェストツリーによってホルモンバランスが整い、様々な諸症状が改善に向かうこともあるかもしれませんが、基本的にチェストツリーそのものがニキビに効果があるとは考えられていません。
チェストツリーは女性のホルモンバランスを整えるハーブとして認識されていますが、そのイメージからニキビにも効果があると認識されていたりします。ただし、チェストツリーでニキビの改善効果を期待するのは難しいかもしれません。
チェストツリーと低用量ピルの作用の違い
ピルとチェストツリーの違いは、ピルはプロゲステロンを含む女性ホルモンや男性ホルモンを抑制する作用がありますが、チェストツリーの場合は、プロゲステロンの分泌を高める作用があります。一般にどちらも「ホルモンバランスを整える作用」を有すると認識されていますが、作用は大きく異なります。
ピルはエストロゲンとプロゲステロンの2種類の女性ホルモンがバランスよく配合されたお薬です。ピルに含まれる微量の2種類の女性ホルモンを補うことで、女性ホルモンが体内に十分に存在すると脳が判断し、性腺刺激ホルモンの分泌が抑制されます。
その結果、女性ホルモンや男性ホルモンを抑制することができます。女性ホルモンをコントロールし、さらに男性ホルモンの分泌を抑制することからニキビ治療にも使用されることがあります。特にピルによって生理前のニキビを減少させることができます。
ちなみに、はっきりとした効果をもたらす低用量ピルにおいてもニキビ改善率は50~70%程度とされます。チェストツリーはピルよりも作用的に非常に穏やかであるため、大きな効果は期待できません。
チェストツリーの使い方
チェストツリーの1日の摂取量
チェストツリーエキスの摂取量は1日20~40mg程度が目安です。
治療期間の目安
チェストツリーエキスは、効果が実感できるまで時間を要します。一般に1ヶ月以上の服用期間が必要とされます。
チェストツリーを使用すべきではない人
チェストツリーは、人によっては使用してはいけない場合があります。主に、ピル(経口避妊薬)を使用している人、妊娠中、授乳中、乳がんや婦人病などの疑いがある場合、大豆イソフラボンを積極的に摂取している人などはチェストツリーを使用してはいけないとされます。女性ホルモンに働きかけるため、状況によっては適さないことも多いのです。
副作用や注意点
チェストツリーを服用後、まれに頭痛や胃腸障害などの副作用が起きる場合があります。また、チェストツリーによってまれに不正出血を起こすことがあります。不正出血はプロゲステロン剤を摂取することでもよく発生します。
他にも、アレルギーなどの副作用を起こす人もいるようです。チェストツリーは安全性が高いハーブとされますが、異常が現れたら使用を中止して下さい。
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