皮膚科で処方されるさまざまなニキビ治療薬の一つにクリンダマイシンゲル1%という塗り薬があります。
クリンダマイシンは抗生物質の一つで、ニキビの原因となる細菌を素早く抑制する目的で処方されます。とても良い効果をもたらしますが、一方でかゆみなどの副作用や薬が効きにくくなる問題もあります。
今回は、クリンダマイシンゲルのニキビ改善効果と使い方、また、副作用の対処法などを解説していきます。
クリンダマイシンゲルとは?
クリンダマイシンゲルとは、リン酸クリンダマイシンというリンコマイシン系抗生物質を主成分とした細菌に効くお薬です。細菌のたんぱく質の合成を阻害することで、抗菌作用を示します。
様々な微生物に効果があるように思えますが細菌にのみ効く外用薬です。カビ(真菌)やウイルスには効果がありません。細菌が原因となる皮膚症状に使用され、特にニキビ治療に使用されることで有名です。
ただし、ウイルス感染症などの合併症で発生する細菌感染症の予防や治療に使用されることもあります。
ダラシンTのジェネリック
クリンダマイシンゲルは、先発品であるダラシンTゲルのジェネリックとなります。ダラシンTゲルは、古くからニキビ治療に使用されてきた塗り薬ですが、クリンダマイシンゲルはそれと同じ効果があります。
クリンダマイシンゲルのニキビ減少効果
写真は腫れが強いニキビに対してクリンダマイシンゲルを使った4週間後の画像です。
クリンダマイシンゲルはニキビの原因となるアクネ菌を細菌を減少させて、より早くニキビの炎症を治します。画像のように、赤ニキビであれば4週間ほどで充分に治すことができます。
また、ニキビが強く炎症を起こすと、黄色ブドウ球菌といった病原性が強い細菌が増加していることがありますが、クリンダマイシンは黄色ブドウ球菌に対しても良い効果をもたらします。
ニキビの炎症をより早く治すことで炎症性色素沈着やクレーターといったニキビ痕の予防にもつながります。
臨床試験の結果では・・・
炎症が強いニキビに対して12週間クリンダマイシンを使った臨床試験の結果が以下の画像グラフ。
どれだけ赤ニキビが減ったのかを調査したものですが、クリンダマイシン1%による炎症性ニキビの改善率は53%と報告されています。
アクアチムやゼビアックスなど、どの抗生物質を使っても効果はほとんど同じのようです。
それまで使われていたアクアチムクリーム(ナジフロキサシン)よりも高い抗菌作用があるとして、クリンダマイシンが良く使われるようになった歴史がありますが、実際に使ってみるとあまり差はないようです。
そして、やはりベピオゲルというお薬は最もニキビ改善率が高い(約72%)ということがわかります。
炎症が強い化膿ニキビに使用する
ニキビ治療薬は、どんなニキビに対しても使っていいと思いがちですが、クリンダマイシンのような抗生物質は炎症した赤ニキビに使用するのが原則です。
クリンダマイシンのような抗生物質は、使い続けると細菌が耐性をもつようになって薬が効かなくなってしまうことがありますので、跡が悪化しやすい赤ニキビや化膿ニキビなどに対して使われます。
白ニキビや黒ニキビといった軽い状態のニキビには通常は処方されません。
そして、顔の赤ニキビだけではなく、背中や胸、腕などのニキビにも使用できます。ただし、背中や腕などに発生するニキビは、実際にはニキビではないことも多く、その場合はこのお薬で効果が得られないこともあります。
ニキビ以外の皮膚病にも効く
クリンダマイシンゲルは、細菌が原因である皮膚病であれば効果が期待できます。例えば、黄色ブドウ球菌が原因となる毛嚢炎(毛包炎)や、おでき(せつ)、とびひ、耳せつ(じせつ)などの皮膚感染症にもクリンダマイシンが使用されることがあります。
また、カンジダ症やマラセチア毛包炎などのカビが原因となる皮膚病には効きません。他にも、ヘルペス感染症や帯状疱疹などにも効きません。クリンダマイシンのような抗生物質はカビやウイルスには効果がないためです。
効かない皮膚病
クリンダマイシンは、細菌に効くお薬ですので、マラセチア毛包炎や脂漏性皮膚炎などのカビ(真菌)が原因の皮膚病には効きません。また、カンジダやヘルペスなどにも効きません
マラセチア毛包炎や脂漏性皮膚炎はニキビと併発したり、症状が似ていたりするため、しっかりと見分ける必要があります。
かえって悪化することも
クリンダマイシンを使用して、逆にニキビが悪化してしまうこともあります。この場合は、細菌が耐性をもっている可能性があります。そして、クリンダマイシンの副作用によって赤みやかゆみ、アレルギーが現れたことでニキビが悪化することがあります。
ニキビ跡を治す効果はある?
クリンダマイシンは単純にニキビの細菌を抑えるお薬ですので、ニキビが治った後の症状には効きません。ニキビ跡の赤みや炎症性色素沈着、クレーター、ケロイドなどには効果がないです。
クリンダマイシンゲルの使い方
クリンダマイシンゲルの使い方は、1日2回、洗顔やクレンジングをして化粧水などで肌を整えた後に適量使用します。早く治したいからとして多量に塗ってはいけません。
また、ニキビ予防として炎症がないような部分にまで広範囲に塗ってはいけません。ニキビの患部にだけちょこんと塗ります。
そして、使用後は紫外線対策をして下さい。炎症がある時に日焼けしたりすると、メラニンが皮膚の深い部分に入り込んで色素沈着が非常に治りにくくなります。
治療期間の目安
ニキビに対してクリンダマイシンを使えば通常は2~5日くらいで効果が実感できるはずです。2週間ほど使用して効果がわからない場合はこの塗り薬が適していないといえます。
そして、使用期間は1~2か月くらいが目安です。ニキビ治療の場合は少し長い期間に及ぶことが多いですが、長期的に使うと薬が効かなくなることがあります。
保管方法
クリンダマイシンゲルは、しっかりとキャップを閉めて冷暗所に保管します。日光が当たるところや高温になるところなどを避けましょう。子供がいる場合は、引き出しにしまっておくのが理想です。また、冷蔵庫に保管する必要はありませんが、しても大丈夫です。
使用上の注意点
お薬を使用してアレルギーを起こした経験がある人は、このお薬は適していません。また、妊娠中などは抗生物質よりもベピオゲルなどの治療薬が理想です。
処方してもらうには?
クリンダマイシンゲルはニキビや毛嚢炎、おできなどの症状がある場合に医師が処方します。お医者さんの処方箋をもらって薬局で購入して下さい。
ただし、医師によっては他の治療薬が処方されることもあるかもしれません。近年では、耐性菌の問題がないベピオゲルやクリンダマイシンと過酸化ベンゾイルという殺菌成分を組み合わせたデュアック配合ゲルが使用されることが多くなっていて、クリンダマイシンゲルが処方されることが少なくなっています。
重症の場合は内服治療も
炎症したニキビがたくさん発生した場合は、クリンダマイシンのような塗り薬と共に抗生物質の内服薬が使用されることがあります。飲み薬の場合は、内側から細菌の増加を抑制して炎症をしずめます。
重度のニキビ治療にはミノマイシン(ミノサイクリン)やルリッド錠(ロキシスロマイシン)などが処方されることが多いです。抗生物質の内服薬は薬剤耐性の問題が全身の細菌に対して発生する可能性があるため、塗り薬よりも注意が必要です。
クリンダマイシンゲルの副作用
クリンダマイシンゲルは刺激性を感じることが多く、副作用にはかゆみや赤み、ヒリヒリ感やほてりなどが現れることがあります。
また、使用すると乾燥するという人もいます。そういった副作用は、敏感肌や肌が薄い人に現れやすいです。
臨床試験では、皮膚のかゆみが5.8%、赤みが1.6%の割合で現れたという報告がありますが、実際にはさらに多いような気がします。
特に、このお薬にはかゆみの副作用が現れやすい傾向があります。アレルギーを起こしてかぶれることも少なくないです。アレルギー体質ではない人においてもかゆみが強くなることがありますので、異常が現れたら必ず使用を中止して下さい。
かゆみが続くのに使い続けると、やクレーターがひどくなってしまうこともあります。ケロイドが発生した事例もあります。
副作用が強い場合は皮膚科を受診して下さい。ベピオゲルやアクアチムクリーム、ゼビアックスローションなどの違うニキビ治療薬への変更がすすめられると思います。
参考:先発品ダラシンTゲル販売元の佐藤製薬
http://www.sato-seiyaku.co.jp/newsrelease/2006/060301/
耐性菌の問題
クリンダマイシンはリンコマイシン系抗生物質ですが、その抗生物質には薬が効きにくくなる「耐性菌」を生じる問題があります。
細菌が耐性を獲得すると、違う系統のお薬に変えたりしますが、それを繰り返していると、将来的に効果的な治療薬が限られてしまう可能性があります。
そういった問題を軽減するため、抗生物質は限定的に使用されるようになっています。
耐性菌を予防するには、薬を中途半端に使わずにしっかりと炎症を抑えて治療を終了することが重要です。また、長々と使うことも止めなければいけません。
クリンダマイシンは、市販薬のように使い勝手の良いお薬ではないことを覚えておいて下さい。
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