ニキビ治療に対してダラシンTゲルという塗り薬が処方されることがあります。
ダラシンTゲルとは、クリンダマイシンというリンコマイシン系の抗生物質を主成分とした外用薬です。ダラシンTゲルとダラシンTローションの2種類の形状があります。
ダラシンTゲルは、ニキビの原因となるアクネ菌の増殖を抑制して抗菌作用を示し、炎症が進んだニキビに非常に効果があります。
ところが、このお薬は比較的に副作用が現れやすく、アレルギーを起こしてニキビのかゆみや炎症を悪化させてしまうことも少なくありません。今回はダラシンTゲルによる副作用の特徴と対処法についてです。
ダラシンはアレルギーを起こしやすい
ダラシンTゲル(またはダラシンTローション)を使用することで、アレルギーを引き起こすことがあります。(ダラシンによってアレルギーを起こす人は少なくありません)。
アレルギー体質の人では慎重に用いる必要がありますが、アレルギー体質ではなくてもダラシンTゲルによってアレルギーを引き起こすことも少なくありません。
筆者が以前に勤めていた皮膚科においてもダラシンTゲルを使用してかゆみが現れたという患者さんは多くいらっしゃいました。
皮膚科医や薬剤師によってはダラシンTゲルの副作用をきちんと説明しないことも多いようです。ニキビ治療薬を処方された場合はネットで副作用を調べてから使用すると安心です。
皮膚のかゆみ・ヒリヒリ
ダラシンTゲルによってアレルギーを起こすと、塗った部分のニキビにかゆみやヒリヒリ感が現れたりすることがあります。ダラシンを塗ってかゆみが現れた場合は必ず使用を中止しましょう。
そして、皮膚科を受診して医師にそのことを伝えましょう。もったいないからといって使い続けてはいけません。お薬を使用して皮膚に異常が現れた場合は、使用を中止することが基本です。
アレルギーを起こすとニキビ跡がひどくなる
ダラシンTゲルによってアレルギーを引き起こした場合、通常よりもニキビの腫れが悪化してしまうことがあります。炎症が悪化して長引き、化膿したり、ニキビがしこりとなってしまうこともあります。
ニキビは塞がった毛穴の内部でアクネ菌が増加し、それに対して免疫反応を起こすことで赤く腫れるようになるのですが、アレルギーを起こすと免疫がさらに過剰に働いてさらに腫れがひどくなってしまうのです。
アレルギーを起こすと、ヒスタミンという物質が過剰に放出されます。そのヒスタミンは血管透過性亢進作用や、他の炎症性物質の発生を促し、炎症や腫れ、赤みを悪化させてしまう働きがあります。
その結果、ニキビ跡のシミ・色素沈着もひどく残ってしまい、場合によってはニキビ跡がクレーター凹みとなって残ってしまうことがあります。
ニキビにかゆみが現れた場合、それはヒスタミンが通常よりも過剰に発生しているということです。そして、ヒスタミンの作用によって通常よりもニキビが悪化しやすくなるのです。
ケロイドを起こすこともある
ダラシンTゲルを使用してアレルギーを起こした場合、ニキビ跡がまれにケロイドになってしまうことがあります。
ケロイドは、皮膚が損傷することで、それを修復するために働くサイトカインが過剰に発生され、コラーゲンが異常増生されてしまうことで発生します。
一概には言えませんがアレルギーが関与していると考えられます。ケロイドになりやすいかどうかは炎症の度合いと共に体質によるものも大きく影響します。
ケロイドは2種類がある
ケロイドには真性ケロイドと肥厚性瘢痕の2種類があります。真性ケロイドも肥厚性瘢痕も共に皮膚に赤みを伴った盛り上がりが見られますが、真性ケロイドの場合は進行性があり、コラーゲンの増生が続いて次第に損傷部分を越えて拡大していきます。
一方、肥厚性瘢痕は進行性がありません。損傷部位を越えて大きく拡大していくことはありません。そして、ニキビがしこりとなってケロイド状になった場合、ほとんどのケースは進行性のない肥厚性瘢痕です。進行性のある真性ケロイドであることはまれなケースです。
ダラシンTゲルで肥厚性瘢痕を起こした事例
私がかつて勤めていた病院で、ダラシンTゲルを使用して主に頬の下側やフェイスラインに複数の肥厚性瘢痕が発生し、その傷跡を治したいとしてレーザー治療を希望された方がいらっしゃいました。
良く見ないとニキビ跡の赤みかどうかわからない程度の瘢痕組織でしたが、触れると硬さがみられ、デコボコした状態でした。
このような状態にならないためにも、ダラシンTゲルで異常が現れたら使用をすぐに中止すべきです。ニキビにかゆみが現れた場合、深刻な状態になってしまう可能性があります。
肥厚性瘢痕は改善傾向がある
ニキビ跡の肥厚性瘢痕は、何も治療しなくても時間の経過と共に改善していくことが多いです。赤みと共に盛り上がりがしだいに小さくなっていきます。
治っていく期間は、小さいものは数年、縦横1センチくらいのものは10年くらいで赤みや盛り上がりが平らになっていきます。ニキビがしこりになったといっても、それが一生残ってしまうとは限らないので、あきらめないで下さい。
ただし、皮膚の赤みだけが消失して白っぽい皮膚の盛り上がりがわずかに残ってしまうこともあります。これを成熟瘢痕といいます。盛り上がった成熟瘢痕の場合は、レーザー治療などを活用してもキレイに治すことは難しくなります。
なお、ケロイド治療にはステロイドやヒルドイド(ヘパリン類似物質)、トラニラストの内服などの治療が有効です。
ダラシンTゲルによる副作用の対処法
使用中止する
ダラシンTゲルを使用してかゆみが現れたら、アレルギーを起こしている可能性があるため、使用を中止して下さい。
かゆみがあるのに使い続けると、ニキビがひどく悪化して赤みや色素沈着といったニキビ跡も悪化してしまいます。
かゆみが現れたら冷やす
ダラシンTゲルを使用してニキビにかゆみが現れたら、ニキビ部分を冷やすのが理想です。
アイスパックやビニール袋に入れた氷水でも良いので、冷やすことでかゆみをもたらすヒスタミンやその他の炎症誘発物質の発生を抑制することができます。
また、お風呂などで温めないようにすることも重要です。マッサージも厳禁です。
お薬を変える
ダラシンTゲルによってアレルギーを起こした場合は、皮膚科を受診してお薬を他のものに変更してもらいましょう。
ダラシンTゲル以外のニキビ治療薬は、ベピオゲルやアクアチム、ゼビアックスローションなどがあります。
その中でも、アクアチムやゼビアックスローションは、赤みやかゆみ、ヒリヒリ感、刺激感、アレルギーなどの副作用が比較的に起きにくいメリットがあります。アクアチムには、ローションタイプ、クリームタイプ、軟膏タイプの3種類があります。
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