エピデュオゲルは、「アダパレン」という成分と「過酸化ベンゾイル(BPO)」という成分の2種類の有効成分を組み合わせたニキビ治療薬です。
世界で最も処方されるにきび外用薬といわれており、日本では2016年11月から保険適用の処方薬として販売が始まりました。(製造メーカーはマルホ)
このお薬は合剤で、それぞれの有効成分を単独で使用するよりも高いニキビ改善効果が期待できます。
ところが、2つの有効成分は共に皮膚への刺激性が強く、かなり高い確率で副作用が現れる欠点もあります。
今回は、そのエピデュオゲルの効果と使い方、副作用の対処法などを詳しく解説。
エピデュオゲルの効果
エピデュオゲルのニキビへの効果は、アダパレン0.1%と、過酸化ベンゾイル2.5%という2種類の有効成分によってもたらされます。
アダパレンは、「ディフェリンゲル0.1%」という皮膚科で処方されるニキビ治療薬の主成分。
一方、過酸化ベンゾイルは「ベピオゲル2.5%」というニキビ治療薬の主成分。
つまり、エピデュオはディフェリンゲルとベピオゲルを組み合わせたニキビ治療薬といえます。(さらに濃度も同じ)。
以下の画像を参考にして下さい。
有効成分1アダパレン(0.1%)
エピデュオゲルの主成分の一つであるアダパレンは、レチノイド様作用(ビタミンA誘導体に似た作用)をもつ成分で、皮膚内にあるレチノイン酸受容体に作用してターンオーバー(表皮細胞が作られる現象)を抑制する働きがあります。
ターンオーバーを促すのではなく、ターンオーバーを抑えることで皮膚が厚くなる現象を予防し、毛穴がふさがる現象やニキビの腫れの進行を予防する効果があります。そして、アダパレンは若干のピーリング作用があります。
アダパレンは、軽度から中程度のニキビに対して効果的な成分ですが、使い始めの2週間くらいまでは、赤みやヒリヒリ、かゆみ、乾燥などの現象が高い確率で現れます。これは厳密には副作用ではなく、お薬が効いているために起こる正常な現象です。
有効成分2過酸化ベンゾイル(2.5%)
そして、エピデュオゲルのもう一つの成分である過酸化ベンゾイル(BPO)は酸化剤の一つで、ニキビに対して殺菌的に作用します。
ニキビの原因菌であるアクネ菌は酸素を受けると死滅してしまう嫌気性菌という性質があるのですが、過酸化ベンゾイルを肌に塗ると分解される過程で酸素を発生させ、アクネ菌を殺菌することができます。
そして、過酸化ベンゾイルは、角質の結合を緩めて病巣まで浸透することで効果を発揮します。さらに、ピーリング作用もあり、過剰な皮脂などが原因で分厚くなった皮膚を改善し、ニキビの芯がでてきやすい状態へと導きます。
エピデュオゲルの効果
画像は炎症ニキビに対するエピデュオゲルの効果。
ニキビが化膿したような状態ですが、3週間後には完全に赤みも硬さもとれて色素沈着だけになっています。
なお、炎症が低いニキビであれば、エピデュオゲルを使えば3~5日くらいで治ります。ほとんどのニキビは腫れが引くまで1週間以内で治るものです。
ニキビ改善率は?
外国の臨床試験によると、エピデュオゲルによる炎症ニキビ(赤ニキビ)の減少率は62.1%と報告されています。
比較として、アダパレンを単独で使用した場合が50.0%、過酸化ベンゾイルを単独で使用した場合が54.0%という結果が報告されています。エピデュオゲルは、他のニキビ薬よりも高い有効性が証明されています。
メリット
エピデュオゲルは、アダパレンと過酸化ベンゾイルという2種類の違う作用をもつ成分を組み合わせることでニキビに対して相乗効果をもたらします。
そして、抗菌薬(抗生物質)が含まれていないため、耐性菌が出現して薬が効きにくくなる心配がなく使えるメリットがあります。
臨床試験では12か月連続で使用続けても薬が効きづらくなるという現象がなく、安定性があるということが確認されています。
デメリット
エピデュオゲルに配合されるアダパレンと過酸化ベンゾイルは、どちらも特徴的な成分で、共に刺激性があり、赤みやヒリヒリ感、かゆみ、乾燥などの副作用が現れやすい欠点があります。
そのため、肌質によっては使いづらいケースも多いと予想できます。また、ひどい副作用が現われた場合、どちらの成分が原因であるのか特定できない欠点もあります。
適応するニキビ
エピデュオゲルは、白ニキビなどの炎症性が低いものから、赤ニキビなどの炎症性が強いニキビまで効果があります。
ピーリング作用があるため黒ニキビなどにも適応しますが、特に炎症を起こしていない場合は使う必要はないと思います。
顔のニキビ中心に使う
製造メーカーのマルホによると、エピデュオゲルは顔のニキビだけの使用が原則とされています。
首のニキビや背中のニキビ、胸のニキビなどに使っても基本的に問題ないと思いますが、有効成分のアダパレンは皮膚の部位によっては反応が悪くなったり、逆に反応が強く現れる問題があり、顔以外のニキビの場合は有効性が安定しない欠点があります。
基本的に顔以外の皮膚はアダパレンの反応が悪いのですが、反対に乳首や乳輪、ワキ、おへそ、陰部、肛門周囲などはアダパレンの反応が強く現れます。
乳首やワキ、おへそあたりなら薬が少しぐらい付いても問題ないですが、陰部や肛門あたりは特に赤みやヒリヒリ、皮膚の剥がれなどの反応が強く現れる可能性があるため、絶対にそのあたりのニキビには使用しないで下さい。例えば、お尻のニキビなどには使用不可です。
背中ニキビや胸ニキビなどには、エピデュオよりも過酸化ベンゾイルだけが配合される「ベピオゲル2.5%」という塗り薬が効果的です。皮膚科で処方してもらいましょう。
効果が現れるまでの期間
エピデュオゲルの効果は、早ければ塗った翌日には効果が実感できると思います。おおむね、2~3日くらい使用すればニキビが小さくなっていくはずです。
このお薬が即効性があるのは殺菌成分である過酸化ベンゾイルによるものです。アダパレンは即効性は低いです。
悪化することもある
エピデュオゲルを使って、かえってニキビが悪化したり、ニキビが増えたと感じる人がいると思います。このお薬にはニキビの原因となる作用はありませんが、刺激性が強いため赤みが増してニキビが悪化したように感じることがあります。
使用してから翌日~3日ほどたって乾燥したり、ヒリヒリしたりするのは薬が効いている証拠だともいえるので、そのまま使い続けてみて下さい。ただし、副作用が強い場合や、特に使った後すぐに強い赤みやかゆみがでた場合は使用を中止して皮膚科を受診して下さい。
ニキビ跡を治す効果はある?
エピデュオゲルは、ニキビ跡の炎症性色素沈着や赤みなどを改善する効果はありません。またクレーターなどにも効きません。ニキビの原因菌を殺菌し、ニキビの進行を予防するお薬なので、腫れが治ったら使わないようにしましょう。
刺激性が強いお薬であるため、治っているのに使いつづけると赤みや色素沈着が悪化してしまう可能性があります。
エピデュオゲルの使い方
エピデュオゲルの使い方は、1日1回、夜に洗顔をして皮脂汚れを落とし、化粧水などで肌を整えた後にニキビに適量塗ります。1日1回で十分です。何度も塗ってしまうと副作用が現われやすくなります。
この薬は角質のバリア機能を弱くしてしまう性質があるので、しっかり保湿してから使って下さい。保湿すれば副作用の発生リスクが下がります。
エピデュオゲルが処方される時、刺激を和らげる目的で一緒にヒルドイドローション0.3%(ビーソフテンローション0.3%)などの保湿剤が処方されることがあると思います。
その場合は、ヒルドイドローションを塗った後にエピデュオゲルを塗って下さい。
そして、紫外線を避けるために夜に使用するのが基本です。そして、治療している期間は日焼けはしないで下さい。
治療期間の目安
エピデュオゲルは、顔のニキビが発生する限り繰り返し使い続けても問題ありません。抗生物質を含まないため、長期使用でも問題ありません。
ただし、もし3か月間使い続けてニキビの改善効果が得られない場合は使用を中止して、他の治療薬に切り替えたほうが良いとされます。
使用上の注意点
傷口や粘膜、目元や口元のニキビへのエピデュオゲルの使用は止めて下さい。目元への使用は過酸化ベンゾイルの作用によって眼瞼炎(がんけんえん)という病気を起こす可能性が報告されています。
また、妊娠中の女性はエピデュオゲルは使用できません。有効成分のアダパレンによる胎児への影響が指摘されているためです。また、授乳中にも原則として使用できません。
処方してもらうには?
エピデュオゲルを購入するには、医師の処方箋(しょほうせん)が必要になります。保険適応です。一般的な市販品としてドラッグストアなどで購入できるお薬ではありません。
薬価は?
エピデュオゲルの薬価は1gあたり159.6円です。製品1つ(15g)あたりで約2400円です。3割の保険適応であれば約720円くらいです。ニキビの薬としては少し価格は高いです。
重症の場合は内服治療も
炎症性が強いニキビがたくさんできている場合は、エピデュオゲルとともに抗生物質の内服薬が処方されることがあります。ルリッド(ロキシスロマイシン)、ミノマイシン(ミノサイクリン)、ファロム(ファロペネム)などがニキビ治療に良く処方されます。
他にも、ビタミン薬のフラビタン(ビタミンB2製剤)やハイボン錠(ビタミンB2錠)、ピドキサール(ビタミンB6製剤)などが処方されることもあります。また、炎症性色素沈着の予防のためにシナール(ビタミンC製剤)というお薬が一緒に処方されることもあります。
保管方法
エピデュオゲルの保管方法は、室温保存が原則です。直射日光や湿気が多いところを避け、冷暗所に保管します。冷蔵庫に保管する必要はありません。使用期限は製造から2年が目安です。
添加物
エピデュオゲルの添加物とその性質は以下の通りです。
- アクリルアミド・アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム共重合体(乳化安定剤)
- イソヘキサデカン(保湿、エモリエント成分、溶剤)
- ポリソルベート80(乳化剤)
- ジオクチルソジウムスルホサクシネート(角質を柔らかくして薬剤の浸透を良くする成分)
- エデト酸ナトリウム水和物(品質安定剤)
- グリセリン(保湿成分、粘性剤)
- ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(20)グリコール(基剤)
- プロピレングリコール(保湿、溶解剤)
この塗り薬はニキビの原因となるような油分を含んでいません。脂性肌においても使いやすいと思います。
エピデュオゲルの副作用
エピデュオゲルは、かなり高い確率で副作用が現れます。ニキビ有効成分の中でも特に副作用が現れやすい成分どうしを2つ組み合わせているため、なんらかの違和感が現れても珍しくはありません。
エピデュオのアダパレンと過酸化ベンゾイルの2つの有効成分には、ともに角質を剥がすピーリング作用があり、皮膚が剥がれてカサカサになったり、赤みやかゆみといった副作用なども現れやすいです。
まずはエピデュオの全体的な副作用の発現をみていきます。国内の臨床試験によると、エピデュオゲルの使用によって648例中70例の10.8%に副作用が認められたとの報告があります。
副作用の種類は以下の通り。
- 皮膚刺激(ヒリヒリ感など)が8.0%(648中52例)
- 皮膚の痛みが0.9%(648中6例)
- アレルギー性接触皮膚炎が0.6%(648中4例)
- 肌の赤み0.3%(648中2例)
- 肌のかゆみが0.3%(648例中2例)
そして、エピデュオゲルの副作用は使いだしてから2週間くらいまでに現われやすいとされます。そして使い続けるのと比例してヒリヒリ感などの刺激性もでなくなっていきます。(これは肌が慣れて効果が薄れているともいえます)。
エピデュオゲルのような2つの成分を組み合わせたお薬の欠点は、副作用が起こった場合、それがアダパレンによるものなのか、それとも過酸化ベンゾイルによるものかわからないところです。
そのため、肌が弱い敏感肌の人は避けたほうがよいでしょう。また、ニキビ治療で長くピーリングを続けたことがある人も避けたほうがいいと思います。肌が薄くなっている可能性があるためです。
参考:https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/prd/26/2699805Q1020.html
アダパレンだけの副作用
エピデュオゲルの主成分の一つがアダパレンですが、そのアダパレンだけを配合したディフェリンゲルというお薬の副作用の発現率はとても高いです。全体の約8割になんらかの副作用が現われると報告されています。
副作用の種類は、乾燥やかさつきが全体の56.1%、ヒリヒリする痛みや熱感が全体の47.6%、皮膚の剥がれが全体の33.5%、赤みが全体の21.9%、かゆみが全体の13.2%です。
これは副作用というよりも、お薬が効いている証拠であり、正常な反応といえます。この成分はターンオーバーを抑えるように働くので、そういった反応が現れるのです。
そして、そういった副反応は使用開始から2週間くらいまでに現れるもので、その後はだんだん赤みやヒリヒリ感などは落ち着いていきます。肌が慣れるためです。
過酸化ベンゾイルだけの副作用
エピデュオのもう一つの主成分が過酸化ベンゾイルですが、その過酸化ベンゾイルだけを主成分としたベピオゲルという皮膚科の処方薬においても副作用が現われる可能性は高いです。臨床試験では約43%になんらかの副作用が現われると報告されています。
過酸化ベンゾイルの主な副作用は、皮膚の剥がれ(18.6%)、刺激感・ピリピリ感(14.0%)、皮膚の赤み(13.8%)、乾燥(7.4%)などです。一つ参考にして下さい。
この成分に対してかぶれてしまう人は珍しくなく、25人に1人くらいの割合でひどい接触皮膚炎を起こす可能性があると報告されています。肌が弱い人はエピデュオゲルは使用しないほうがいいと思います。
なお、エピデュオゲルは、それぞれの単体のお薬よりも副作用の発生率が抑えられていますが、それは添加物として保湿剤を多く配合していて、刺激を受けにくいようになっているためです。
副作用の対処について
エピデュオゲルの2種類の主成分による副作用はよく起こるものであり、それは一方で薬が効いている証拠ともいえるので、ほとんどのケースでは心配する必要はありません。
皮膚がカサカサする場合は保湿で対処しながら、そのまま使い続けて大丈夫です。
副作用が心配な場合は、皮膚科でヒルドイドローション(ビーソフテンローション)という保湿剤を処方してもらえば、かなり副作用を軽減できるはずです。実際にその保湿薬を処方するお医者さんも多いです。
強いヒリヒリ感やかゆみがでた場合は使用中止する
このお薬を塗ってとても強く赤くなったり、また、ヒリヒリ感や強いかゆみが出た場合はすぐに洗い流して、以降は必ず使用中止して下さい。
そして、心配な場合は皮膚科を受診して下さい。かゆい場合はアレルギー性接触皮膚炎を起こしている可能性があります。
ニキビにかゆみが現れると、ニキビ跡がとても悪化してしまうことがあるので注意しないといけません。
エピデュオゲルでかぶれてしまうケースはわりと多いので、このお薬の処方を躊躇(ちゅうちょ)するお医者さんも少なくないです。
かぶれた場合の治療法
エピデュオでかぶれを起こしてしまった場合、皮膚科では他のニキビ薬に変更されますが、その時はアクアチムやゼビアックスローションなどの刺激性が低い抗生物質が処方されたりします。
そして、それと同時にスタデルムクリームやベシカム軟膏といった消炎薬が処方されることもあると思います。それらはステロイドではありません。
例えば、アクアチムクリーム(抗生物質)を塗った後に、その上からスタデルム軟膏(消炎薬)を使うようにすすめられたりするのです。
また、お医者さんの判断によってはロコイド軟膏やキンダーベート軟膏といったステロイド外用薬が使用されることがあります。ただし、ステロイドの副作用を考えて使用期間は1~3日以内に留めます。
ニキビに対してステロイドを使えば治りが悪くなる問題もあるので必ず短期間の使用にして下さい。
紫外線には注意
エピデュオゲルでかぶれてしまえば必然的にニキビ跡もさらに悪化します。一生残ってしまうようなひどい色素沈着になってしまうこともあるのですが、そのシミを悪化させないためにも日焼けは避けて下さい。紫外線が当たらない工夫をしましょう。
そもそも日本人の肌に合っていない?
エピデュオゲルは世界で最も処方されるニキビ治療薬とされ、欧米ではスタンダードなお薬となっていますが、そもそも日本人と欧米人(厳密にいえば白人)では肌質に違いがあります。
日本人は白人よりも表皮層(肌の保湿機能やバリア機能をもたらす層)が薄いといわれていて、ある研究では20~30%も表皮が薄いという報告もあります。
これは白人はメラニンが少ない分、バリア機能が厚くできていると考えられますが、塗り薬においても欧米人では問題なく使用できるものでも日本人では刺激が強すぎるといったことがありえます。
このお薬は非常に効果が高いのですが、かぶれてしまうリスクも高いので、特に肌が弱い人は他の治療薬を使ったほうがいいかもしれません。
また、年齢を重ねるほど肌が薄くなってバリアが弱くなってくるので、そういったケースも使わないほうがいいと思います。
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