ニキビは皮脂が多い部分に発生しやすい傾向があります。身体の中で特に皮脂が多く、比較的ニキビができやすい部分の一つが頭皮です。
頭部は顔とは毛包の性質に違いがあるため、顔のようにニキビ発生率は高くはないですが、しっかりとシャンプーをして皮脂汚れを落とさなければニキビが慢性化してしまうこともあります。
今回は、頭皮ニキビの発生原因と治し方をご紹介していきます。
頭皮ニキビの原因とは?
顔よりも皮脂量が多い
頭は身体の中でも特に皮脂量が多いパーツです。一説によると皮脂腺が顔の2倍くらい発達しているとされ、それに比例して皮脂量も顔の約2倍くらいの量が分泌されているといいます。
頭を洗わないと、髪の毛がベトベトして、しっとりとしてくるようになりますが、それは皮脂が多いことが原因です。また、頭皮を洗わない日が続けば、かゆくなったり、ニキビができたりしますが、それは皮脂による刺激が原因となります。
なお、頭皮の皮脂腺が発達している理由は、最も紫外線の影響を受けやすい部分を保護するためだと考えられています。
頭皮は毛包の性質的にニキビができにくい
頭皮は顔と同じように皮脂が非常に多い部分ですが、そのわりには顔よりもニキビができることが少ないといった特徴があります。その理由は顔と頭皮の毛包(毛穴内部)の性質に違いがあるためです。
頭皮は顔と違って太い毛(髪の毛)が生えていて、多くの皮脂が分泌されても髪の毛に沿って外に排出される構造になっています。
そのため、毛穴内部に皮脂が溜まってニキビが発生するということは少ないのです。
具体的に顔と頭皮の毛穴の違いを解説
毛穴は大きく分けて、軟毛性毛包(なんもうせいもうほう)、脂腺性毛包(しせんせいもうほう)、終毛性毛包(しゅうもうせいもうほう)の3つの種類に分けられます。
軟毛性毛包
軟毛性毛包は、毛が細く、皮脂腺が少ない毛包のタイプです。身体全体に存在し、最も多い種類です。
脂腺性毛包
脂腺性毛包は、皮脂線が非常に多い毛包で、顔や背中に多いタイプです。皮脂が多く、さらに毛も細いため、皮脂が毛に沿って外に排出されやすいという現象は起こりにくいです。毛穴内部で皮脂が溜まりやすいので最もニキビが起こりやすい毛包のタイプといえます。
終毛性毛包
終毛性毛包は、毛が太く生える毛包をいいます。皮脂が多くても毛が太いので、皮脂が毛に沿って外に排出されやすい特徴があります。
そのため、毛穴が完全にふさがってニキビ発生という現象が少ないです。頭皮や男性の濃いヒゲに多いタイプで、そのため皮脂が多いわりにニキビが少ないのです。
皮脂増加と頭皮ニキビの関係
そもそも、なぜ皮脂が増えるとニキビができやすくなるのでしょうか。それは、皮脂が増えると同時に皮膚に対して刺激を与える物質も増えるためです。その仕組みは皮膚に存在する常在菌(微生物)が関与します。
皮脂が分泌されると、アクネ菌や表皮ブドウ球菌などの微生物が細菌性リパーゼという脂肪分解酵素を分泌して皮脂を分解します。それによって生じるのが遊離脂肪酸という物質です。
遊離脂肪酸は、オレイン酸やパルミトレイン酸、パルミチン酸などを中心とした弱酸性の物質で、肌を雑菌が繁殖しないように弱酸性に保持する働きがあります。
ところが、遊離脂肪酸は時間の経過と共に酸化して刺激性が強くなり、肌の角化(ターンオーバー)を必要以上に進行させてしまう原因になります。
遊離脂肪酸が皮膚に刺激を与えることで、毛穴内部に角質が溜まってニキビの芯(角栓)が溜まり、毛穴つまりの原因となります。そして、最終的には刺激によって皮膚が厚くなり、毛穴がふさがってニキビが発生してしまうのです。
皮脂が増加するほど遊離脂肪酸も増加し、比例して刺激性も大きくなるため、しっかりとシャンプーをして皮脂汚れを落とし、頭皮を清潔にしなければいけないのです。
リンスやトリートメントが頭皮ニキビの原因に
リンスやトリートメント、ヘアパックなどは、髪の毛の艶(つや)をもたらすためのエモリエント成分として油脂成分が多く含まれます。それが頭皮ニキビの原因になる可能性があります。
そのため、頭皮ニキビができやすい人はシャンプーだけにしてみましょう。また、シャンプーにも種類によっては油脂が多いものがあります。皮脂が多い人は、洗い上がりがさっぱりとしたものを選ぶのがポイントです。
ヘアワックスやスプレーなども控える
ヘアワックスやヘアスプレー、ヘアムースなどの整髪料においても油脂成分が多く含まれます。その油脂が毛穴を詰まらせて頭皮ニキビの原因になる可能性があります。
特にヘアワックスはシャンプーをしても、なかなか取れにくいので油脂が頭皮に残ってしまうことが多いです。頭皮のニキビに悩む時期はそれらの整髪料の使用は控えたほうが無難です。
違う皮膚病の可能性
頭皮は毛嚢炎を起こすこともある
頭皮のニキビだと思っていたら、実際は毛嚢炎という皮膚感染症である可能性もあります。頭皮の毛嚢炎は、毛穴が傷つくことでそこから黄色ブドウ球菌による感染によって発生することが多い皮膚病です。毛包炎ともよばれます。
見た目はニキビと非常に似ており、毛穴の周り赤くなり、白ニキビのように中央に膿をもつようになることもあります。
ニキビとの違いは、ニキビの芯ようなものが見られず、わりと早く治ることが多いことです。毛嚢炎は、髪の毛を無理に抜いたり、カミソリで深剃りして毛穴が傷つくことで発現することが多いため注意して下さい。
毛嚢炎の治療法
毛嚢炎の場合は、多くのケースでは何も治療しなくても数日から1週間ほどで跡も残らずキレイに治ります。ただし、まれに化膿して悪化することもあります。
化膿した場合は、皮膚科で治療することをおすすめします。毛嚢炎の症状がひどい場合、皮膚科では抗生物質が処方されることがあります。
頭皮は脂漏性湿疹を起こすこともある
頭皮は脂漏性皮膚炎という皮膚病が現れることがあります。脂漏性皮膚炎は、主に顔面や頭皮、耳の周りなどの皮脂が多い部分に発生しやすく、ガサガサしたフケが発生し、炎症が強くなると赤みやかゆみが現れます。
脂漏性皮膚炎の原因は、様々な要因が指摘されていますが、皮膚に常在菌として生息するマラセチア真菌というカビが原因で発生することが多いとされます。
マラセチア菌が、皮脂を分解して遊離脂肪酸という物質を生み出し、その遊離脂肪酸が皮膚を刺激して低いレベルの炎症が続くことでフケやかみゆを引きこすのです。
脂漏性湿疹は、洗髪不足や過剰なスキンケア、紫外線、ストレス、食生活の乱れ、ビタミン不足、アルコール、喫煙、糖尿病など様々な要因が関係すると考えられています。
脂漏性皮膚炎が頭皮で発生すると、抜け毛が増加して脂漏性脱毛症という症状の原因になることがあります。脂漏性皮膚炎は見た目の症状はニキビとは違いますが、にきびと併発することがあります。
脂漏性皮膚炎の治療法
脂漏性湿疹はマラセチア菌という真菌(カビ)が原因であるため抗真菌薬が効果的です。抗生物質ではなく抗真菌薬(抗カビ薬)です。皮膚科の処方薬はケトコナゾールローション(製品名ではニゾラール)などが処方されます。
湿疹がひどい場合は場合は、抗真菌薬の内服薬が適していることがあります。主にイトラコナゾール(製品名:イトリゾール)の内服薬が処方されます。
湿疹を抑えるためにステロイド外用薬が使用されることもありますが、ステロイドによって悪化する可能性もあるため、使用判断は難しいです。
頭皮のニキビを治す方法
下手に扱わない
頭皮のニキビは悪化して化膿したりすると、強い痛みを伴うことがあります。刺激を与えると炎症が悪化して痛みも強くなることがあるため、下手に扱わないようにしましょう。
しっかりと頭皮を洗って下さい
頭皮ニキビを改善するためには、頭をしっかりと洗うことが重要です。皮脂は時間が経過するほど皮膚への刺激性が大きくなるため、頭皮ニキビの予防のためには頭皮の皮脂ケアが大切なのです。
シャンプーは油脂が少なくて泡立ちの良いものを使用し、たくさんの泡をクッションのように利用して優しく丁寧に洗いましょう。
爪を立てて洗ったり、ブラシで洗ったりすると皮膚を傷つけてニキビを悪化させてしまうことがありますので、指のはらで優しく洗って下さい。
そして、頭皮にニキビができる人は、単純に洗い残しが原因で発生することがあるようです。ロングヘアの人は、髪の毛を重点的に洗うあまり、頭皮の洗い忘れをしていることがあります。髪の毛よりも先に頭皮の皮脂を落として下さい。
理想的なシャンプーの頻度はどれくらい?
頭皮ニキビがなかなか治りにくい場合においても、シャンプーは基本的に1日に1回で十分です。毎日お風呂に入って頭を洗うようにしましょう。皮脂が少ない場合は2日に1度というように頻度を減らしてもよいと思います。
反対に1日に何度も洗っていると、頭皮のバリア機能が低下して、かえってニキビが増えたり、頭皮湿疹や皮膚のかゆみが現れたりすることがあります。また、洗いすぎによって抜け毛が増えて薄毛になってしまうこともあります。
紫外線対策をして下さい
頭皮は紫外線の影響を最も受けやすい部分です。頭皮ニキビの炎症に加えて紫外線ダメージを受けると、メラニン色素が真皮層に入り込んで治りにくいシミができてしまうことがあります。
真皮に落ち込んだシミは、改善するまで年単位の時間がかかったり、レーザー治療を受けなければ一生治らなくなることもあるため、頭皮ニキビがある場合は、日傘をさしたり、帽子をかぶったりして紫外線を避けて下さい。
頭皮はニキビ跡が治りやすい
頭皮はニキビ跡の赤みや色素沈着などが悪化しにくい傾向があります。その理由は、頭皮はターンオーバーが活発であるためです。頭皮は表皮が活発に入れ替わっているためニキビ跡も早く治ります。
そして、頭皮は毛包の性質も違うため、難治性ニキビになることはありません。頭皮ニキビがポツポツとできたくらいでは、特に治療薬を塗らなくても放っておけばすぐに治ることがほとんどです。
シャンプーなどで頭を洗っている時にニキビを潰してしまっても治りやすいです。そもそも髪の毛で隠れる部分なのであまり気にしないで下さい。
ニキビはつぶして芯を出したほうがいい?
ニキビは適切なタイミングで潰して芯(角栓)を出してあげるとより早く治ってしまいます。色素沈着も軽減できます。頭皮のにきびにおいても芯を出せば早く治るのですが、やはり目が届きにくい部分なので基本的には下手に扱わないほうが無難です。
もし頭皮にきびを潰す場合は、家族にやってもらったほうがいいでしょう。その場合は、白ニキビといわれる先端に膿が見える状態になったものだけにしましょう。
そして、ニキビの潰し方は、先端を針で潰してコメドプッシャーという器具で押し出すのが基本です。
手でつまんで押し出すと、思うよう芯が出てこなかったり、必要以上に刺激が加わって色素沈着が悪化してしまうことになりますので、やはりコメドプッシャーを使うようにしましょう。 【Amazon】コメドプッシャー
頭皮ニキビは市販治療薬で十分効果がある
頭皮ニキビには市販されている塗り薬でも十分な改善効果が期待できます。市販ニキビ治療薬には、アクネス、クレアラシル、ペアアクネクリーム、ピンプリット、オロナイン、ビフナイトなどがあります。
市販のニキビ治療薬は、殺菌成分と共に角質を柔軟にする成分が配合され、腫れを治しながらニキビの頭部を柔らかくしてニキビの芯が出てきやすい状態へと促します。
ほとんどの頭皮ニキビは、皮膚科で処方される塗り薬ではなくても、じゅうぶん市販薬で治していけると思います。
悪化したら皮膚科を受診
頭皮ニキビが悪化したら皮膚科で治療を受けることも一つの方法です。頭皮のニキビに効く塗り薬はベピオゲルというお薬があります。
ベピオゲルは酸素を発生させることでニキビの原因菌であるアクネ菌を死滅させます。アクネ菌は酸素がある環境では死滅してしまう性質を活かした治療薬です。
他の抗生物質のニキビ治療薬などは、使い続けるほど細菌が耐性を獲得して薬が効きにくくなる現象が起きますが、ベピオゲルの場合はそのような心配がなく、長く使い続けることができる利点があります。
そして、ベピオゲルは市販のニキビ治療薬にはない即効性が得られることも多いです。そのため、ニキビ体質の人は皮膚科を受診して一つ持っておいても良いと思います。
ただし、ベピオゲルは皮膚が弱い部分には赤みやヒリヒリ感、かゆみなどの副作用が現れやすい傾向があります。
他の皮膚科の処方薬は、ディフェリンゲルやエピデュオゲル、デュアック配合ゲル、ダラシンTゲル、ゼビアックスローションなどがあります。
いずれにしても、頭皮は髪の毛に隠れる部分ですし、しかも治りやすい部分なので、あまり積極的に治療する必要はないかもしれません。あまり気にしないようにすることも重要です。
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