「肌に炎症や湿疹があるわけではないのにいつも肌がかゆい」
「全身、または部分的に強いかゆみが続いて我慢できない」
そんな症状がある場合、皮膚掻痒症(ひふそうようしょう)という病気である可能性があります。今回は、皮膚掻痒症の原因や特徴、治療薬、予防法などを詳しく解説していきます。
皮膚掻痒症とは?
皮膚掻痒症(ひふそうようしょう)とは、目立った皮膚炎(湿疹)がないのにかゆみが現れる症状です。
かゆみがある皮膚病というと、アトピー性皮膚炎やアレルギー性接触皮膚炎などの他、細菌や真菌(カビ)、ウイルス感染による皮膚炎をイメージしますが、そういった皮膚炎とは関係なく痒みだけを感じるのが特徴です。
かゆみは、多くのケースでは入浴後などの身体が温まった時や就寝時に強くなり、かゆみの程度はムズムズするような軽いかゆみから、掻かないと我慢できないレベルの激しいかゆみまで様々です。
そして、中には肌をかいてしまって皮膚炎が慢性化し、見た目ではアトピー性皮膚炎と同じような状態になってしまうこともあります。
原因は、多くのケースはドライスキン(肌の乾燥)や老化、体質的な要因によるものですが、他にもホルモンバランスの変化、内臓疾患など様々な要因が関係していることがあります。
肌をかくと、かえってかゆみが強くなる仕組み
皮膚そうよう症の人は、かゆみに耐えられずに肌をかいてしまい、さらに悪化してしまうケースがよくみられます。
肌を掻くと一時的にかゆみは治まりますが、これは痛みやかゆみをやらわげる物質が発生したことによるものです。ところが、結果的にはさらにかゆみが悪化してしまうようになります。これはヒスタミンとサブスタンスPという物質が関係します。
ヒスタミンは肥満細胞(マスト細胞)から分泌される生理活性物質の一つで、かゆみや痛み、炎症反応に関与しています。
そのヒスタミンが知覚神経に作用し、脳に伝わることでかゆみを感じるようになりますが、皮膚そうよう症は、このヒスタミンの影響が強くなることが主な要因です。
そして、皮膚を掻いてしまうと、その刺激が神経末端に伝えられてサブスタンスPという神経伝達物質がたくさん放出されるのですが、そのサブスタンスPは、さらにヒスタミンの放出を促してしまう働きがあります。
つまり、「かゆいから掻く」といった行為は、ヒスタミンの分泌を増加させてかゆみを増強させるという悪循環につながるのです。
そのため、皮膚掻痒症の場合は、できるだけ肌を掻かないようにしたほうがいいのですが、やはり痒みが激しい場合はどうしても掻きたくなるものです。
就寝前にかゆみが強くなる理由
皮膚のかゆみは寝る前に悪化しやすくなりますが、その現象は自律神経が関係しています。
自律神経は、主に日中に活動している時に活発になる交感神経と、リラックスしている時に活発になる副交感神経の2つに分けられますが、このうち就寝前に活発になる副交感神経は毛細血管を拡張させる働きがあるので、かゆみを感じやすくなると考えられています。
なお、アトピー性皮膚炎などにおいても寝る前にかゆみが強くなる傾向がありますが、それも副交感神経が影響しています。
皮膚掻痒症の種類
皮膚そうよう症は、全身にかゆみが続く場合と、頭皮や陰部、肛門周囲などの局所的に症状が現れるケースがあります。また、老化性のものや妊娠性のものがあります。
以下は、それぞれの症状の種類と特徴です。
全身性皮膚掻痒症
全身性皮膚掻痒症は、全身にわたってアトピー性皮膚炎と同じような慢性的なかゆみが続く症状です。
軽いかゆみから、かきむしりたくなるほどの強い痒みまで様々ですが、基本的にこの症状そのもので皮膚にはっきりとした炎症が起こることはありません。あるといっても少し赤みがみられるくらいです。
全身性のかゆみの場合は、髪の毛が少し皮膚に当たったり、穏やかな風に当たったりするだけでもかゆみが大きくなることがあります。
原因は、体質、生まれつきの肌質(乾燥肌)、肌老化などが原因です。遺伝性の疑いも考えられます。また、内臓疾患などが関係している可能性もあります。
限局性皮膚掻痒症
限局性皮膚掻痒症は、身体の一部分にかゆみが現れる症状です。
主に、女性の陰部にかゆみがでる陰部掻痒症(いんぶそうようしょう)や、肛門の周囲がかゆくなる肛囲掻痒症(こういそうようしょう)があります。また、頭部にも現れることがあります。
そして、局所的なかゆみは、一時的なものであることが多いです。常にかゆいというよりも一時的にかゆくなったりします。
陰部のかゆみは、乾燥や洗いすぎの他に、性ホルモン分泌の低下などがあげられます。また、泌尿器系の症状や性病などが隠れて入るケースもあります。
一方、肛門周辺のかゆみは、乾燥、洗いすぎ、トイレットペーパーの使いすぎなどが主な原因です。便の残りによって接触皮膚炎を起こしているケースもあります。
老人性皮膚掻痒症
老人性皮膚そうよう症は、老化によって皮膚表面(表皮)の保湿機能やバリア機能が低下することで現れる肌の慢性的なかゆみをいいます。かゆみの他にチクチクとした刺激感が現れることもあります。
長年浴び続けた紫外線の影響で肌老化が進行することで起こりやすくなります。また、若い人においても、ピーリングやお化粧、クレンジングといった過剰スキンケアで肌が薄くなり、慢性的なかゆみがでることもあります。
男性では50代~60代、女性では40~50代から発生しやすく、特に大気が乾燥する冬に悪化する傾向があります。
妊娠掻痒症
妊娠そうよう症は、主に妊娠中期から後期にかけて全身に強いかゆみが現れる現象です。全身がむずがゆくなったり、チクチクと刺されるような刺激を感じるようになります。
妊娠による環境変化やホルモンバランスが大きく変化することで発生すると考えられています。そして、通常は出産すればこの症状は消失します。
なお、この症状の発現率はとても低いです。そして、似たような症状に妊娠性痒疹がありますが、それはかゆみだけではなく同時に赤い発疹も現われます。皮膚科や婦人科を受診してお医者さんに相談して下さい。
皮膚そうよう症の原因は?
発生原因を詳しく解説していきます。
皮膚の乾燥(ドライスキン)
皮膚そうよう症の原因の大半は肌の乾燥(ドライスキン)です。
肌の水分量や油分の低下によって角質層のバリア機能が乱れ、知覚神経(痛みやかゆみを感じる神経)が敏感になることでかゆみを感じます。
そして、生まれつき表皮層が薄い人は水分保持能力も低くなるので、慢性的なかゆみを感じやすくなります。
また、お化粧やクレンジング、また過度なピーリング行為(角質ケア)によって角質層が薄くなり、水分保持ができなくなることで痒みを引き起こすこともあります。
体質的にヒスタミンに反応しやすい
肌のかゆみを感じるのはヒスタミンという生理活性物質が大きく関係しますが、そのヒスタミンに対する感受性には、かなり個人差があります。
体質的な要因や病気の影響で、ヒスタミンを代謝しにくく、さらに反応しやすい人がいたりします。そういった人は、わずかな刺激でも強い痒みへとつながりやすく、慢性化しやすいようです。
内因性の皮膚そうよう症
皮膚そうよう症は、内臓疾患などの内的な病気が原因となっている可能性があります。
主に、糖尿病、慢性腎不全、肝硬変、痛風、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)、甲状腺機能低下症、更年期障害、悪性リンパ腫、多血症、鉄欠乏性貧血、回虫、十二指腸虫などがあげられます。
他にも、覚せい剤やヘロインといったドラッグ中毒で幻覚症状が現われ、皮膚の下を虫がはいまわっているような感覚に襲われ、肌をかきむしってしまうことがあります。
陰部のかゆみは病気の影響も
陰部のかゆみの場合、男性では前立腺肥大症や尿道狭窄(にょうどうきょうさく)、女性では卵巣機能低下、更年期障害などが原因となっている可能性があります。
なお、外陰部のかゆみは、性病が原因となっていることも少なくないので、かゆみが続く場合は検査をして症状をしっかりと判別したほうが良いかもしれません。
なお、かゆみが出る性病は、クラミジア、淋病(りんびょう)、性器ヘルペスなどです。
肛門周囲のかゆみの原因
肛門周囲のかゆみの場合、乾燥、洗いすぎ、トイレットペーパーの使いすぎなどが主な原因です。また、便秘、下痢、いぼ痔、蟯虫(ぎょうちゅう)なども要因としてあげられます。
他には、便に含まれる物質に対して軽い接触皮膚炎を起こし、それがムズムズとしたかゆみを引き起こす原因になることがあります。
ストレスが原因になることもある
肌がかゆくなる原因の一つにイライラやストレス、精神的不安があげられます。
長期にわたって精神状態が不安定な状態が続くことで肌のかゆみが慢性的になることもあります。
なお、ストレスは交感神経を活性化させてサブスタンスPという神経伝達物質を発生させ、炎症性サイトカインの発生を促したり、ヒスタミンの分泌を促したりすることで、かゆみや炎症を発生させる要因となります。
アトピー性皮膚炎や脂漏性湿疹、ニキビなどにおいてもストレスが悪化原因になることがありますが、自律神経の乱れや様々な伝達物質が働いてしまうことが影響しているようです。
内服中の薬が原因になることもある
内服中のお薬が原因で、皮膚のかゆみが現われるケースがあります。
特に高齢者は多くの薬を服用していることが多いので、その薬そのものや、飲み合わせが悪いことで身体のかゆみを生じてしまうケースが高いようです。
原因が特定できないことも多い
皮膚掻痒症は、原因が多岐にわたることがあるので、問題を特定することが難しいケースがよくあります。アトピー性皮膚炎の原因も特定が難しいことがよくありますが、それと同じことが皮膚そうよう症にもいえます。
肌がかゆいというと、マラセチア菌やカンジダといったカビ(真菌)や、皮膚ダニが原因となっているのでは?と思う人もいますが、そういった要因と関係なく発生します。
皮膚掻痒症に対して皮膚科で行われる方法
皮膚そうよう症を疑う場合は、皮膚科を受診して下さい。そして診断についてですが、皮膚に目立った皮膚炎がないのに、我慢できないようなレベルのかゆみが続く場合は皮膚掻痒症と診断されます。
ただし、肌を掻いてしまって皮膚に傷や湿疹ができていたりすると、診断が困難なケースもあります。アトピー性皮膚炎のような状態になるので、アトピー治療をすすめるケースもあるかもしれません。
誤診を防ぐために、問診の段階でしっかりと病状を伝える必要があります。
問診で伝えるべき事柄
皮膚科を受診すると問診が行われますが、皮膚そうよう症の場合は、その問診がとても重要です。
なぜなら、この症状は医師側から診て、はっきりとした症状がわかりにくいためです。原因をより明確につきとめるために、カウンセリング時には以下のことを医師に伝えるようにして下さい。
- かゆみは我慢できるレベルか、それとも掻かないと我慢できないレベルか。
- 昔から肌が弱かったかどうか(生まれつき肌が弱い人ほどこの症状が現われやすくなります)。
- アトピー体質やアレルギー体質かどうか。
- すでにわかっている内蔵疾患などの持病があるかどうか。
- そして、すでに内服しているお薬があるかどうか。(多くの薬を服用している人は注意です)。
- お酒をたくさん飲むかどうか。
- ピーリングやオイルクレンジングなどの肌が薄くなってしまうような負担の強いスキンケアをしてないかどうか。また、以前に長い期間行った経験があるかどうか。
- 極端に肌の清潔を好み、1日に何度もお風呂に入ったりしていないかどうか。
- ストレスを感じやすいかどうか。
血液検査
皮膚そうよう症は、内分泌系の疾患や肝臓や腎臓の障害といった内臓疾患が原因となる場合も少なくないです。そのため、必ず血液検査をしてみて下さい。
皮膚科でも血液検査を行ってくれます。 検査結果は、どの病院でも1週間くらいすれば判明します。
X線検査、CT検査
血液検査の次に、X線検査、CT検査を行って、さらに詳しく検査して下さい。
異常が見つかればその治療を行う
血液検査やその他の検査においてなんらかの疾患が見つかれば、その治療を行います。
皮膚掻痒症に効く皮膚科で処方される保湿剤やステロイド剤
保湿剤白色ワセリン(プロペト)
皮膚そうよう症に対して、皮膚科では白色ワセリン(プロペト)がよく処方されます。乾燥している場合は第一選択肢として処方されます。
ワセリンは乾燥肌に対して広く使用される保湿剤で、基本的にオイリー肌、ニキビ肌ではなければどんな状態にも合います。ワセリンの良いところは、皮膚に浸透することがないことです。
例えば、肌が非常に弱い人は、一般的な化粧品のほか、ヒルドイド軟膏や尿素クリームなどの浸透性が強い成分を使うと、逆に刺激となって炎症やヒリヒリ感、かゆみといった接触皮膚炎を起こす可能性がありますが、ワセリンは肌表面に油膜を作って保護するだけの効能であり、浸透しないので、どんなに肌が弱い人でも使えるメリットがあります。
そのため、例えばアトピー性皮膚炎の保湿剤としても第一選択肢として使用されたりします。皮膚掻痒症に対しても安定的に効果を発揮するはずです。
ワセリンは病院でも処方してもらうことができます。製品名は白色ワセリンやプロペトがあります。
市販薬においてもサンホワイトという極めて純度が高いワセリンもあります。サンホワイトは病院で処方される白色ワセリンよりもさらに純度が高いとされます。
保湿剤ヒルドイド軟膏(ヘパリン類似物質)
ヒルドイド軟膏は、ヘパリン類似物質を主成分とした保湿薬です。ヘパリンとは、体内にも存在するムコ多糖の一種で、非常に高い保湿作用があります。それと似た成分がヘパリン類似物質です。
優れた保湿作用だけではなく、血行促進作用や抗炎症作用などがあり、バリア機能が乱れた乾燥性の皮膚炎によく処方されます。良いお薬なので一度使ってみて下さい。
ただし、ヒルドイドは表皮層の奥にまで届いて作用するので、肌のバリア機能が弱い人(肌が薄い人)などでは一時的にかゆみやヒリヒリ感がみられることがあります。
特に顔に使用する場合は接触皮膚炎を起こしやすいです。そのため、顔以外の角質層が厚い部分に使用するのが一般的です。
このヘパリン類似物質(ヒルドイド)は病院で処方してもらうことができます。ソフト軟膏タイプやローションタイプがありますが、肌が弱い人は軟膏タイプが基本です。
そして、ヘパリン類似物質を主成分とした保湿剤は、市販品でもHPクリーム、ヘパリンZクリーム、ヘパソフトなどの商品があります。
保湿剤尿素軟膏
皮膚掻痒症には尿素配合の軟膏が処方されることがあります。ウレパールクリーム、パスタロンソフト軟膏などがあります。
ただし、尿素には角質を剥がす作用があるので、皮膚バリア機能が弱い人は肌に合わないケースがよくあります。
塗り薬ステロイド外用薬が処方されることがある
どうしてもかゆみが強く、かきむしってしまう場合や、かいたことで湿疹が悪化している場合は、副作用の問題がありますがステロイド外用薬を使ったほうがいいかもしれません。かなり即効性があります。
ステロイドは消炎作用や免疫機能を抑える働きがあり、かゆみをもたらすヒスタミンの働きを抑えてくれます。アトピーの湿疹やかゆみを抑える目的で処方されることでも有名ですね。
ステロイドの問題点は様々な副作用があることです。長期使用になると皮膚が薄くなってバリア機能が弱くなったり、毛細血管がもろくなることで拡張し、肌が赤くなったりする副作用があります。また、免疫機能が弱くなって毛嚢炎やニキビなどを引き起こすケースもあります。
そのため、ステロイド剤は長期使用は避けたほうがいいのですが、かゆみに耐えられない場合はしょうがないと思います。
使い方としては、顔は皮膚が薄く、ステロイド薬の副作用が現われやすいので、顔以外の部分に使って下さい。例えばお腹、背中、腕、脚といった部分です。
顔のかゆみに対してステロイドは安易に使わないほうがいいです。使用中止した後のかゆみのリバウンドも心配です。
ステロイドの使用期間としては、皮膚そうよう症の人は、元から肌のバリア機能が弱い傾向があるので、ステロイドをどのくらい使用していいのかについては判断が難しいところですが、副作用を考慮するなら連続使用は2週間までにしたほうがいいです。肌のコンディションを確認しながら上手に使って下さい。
なお、顔の場合は個人差がありますが2週間以上の連続使用で副作用が現れる可能性があるとされます。
お医者さんが処方するステロイド剤はロコイド軟膏がよく使用されます。それは薬剤の強さも5段階中4番目で、副作用の心配も低いです。
ステロイド剤のまとめ
ステロイド外用薬は様々な種類があり、そして強さによって5段階に分けられています。製品名は以下のようなものがあります。
1群:最強(ストロンゲスト)デルモベート軟膏、グリジール軟膏、ジフラール軟膏、ダイアコート軟膏、ソルベガ軟膏、
2群:非常に強い(ベリーストロング)メサデルム軟膏、マイザー軟膏、フルメタ軟膏、ネリゾナ軟膏、アンテベート軟膏、トプシム、パンデル軟膏
3群:強い(ストロング)リンデロンV軟膏、ベトネベート軟膏、プロパデルム軟膏、エクラー軟膏、ザルックス軟膏、フルコート軟膏、リドメックスコーワ軟膏、スピラゾン軟膏、ボアラ軟膏
4群:普通(ミディアム)ロコイド軟膏、アルメタ軟膏、レダコート軟膏、キンダベート軟膏、テストーゲン軟膏
5群:弱い(ウィーク)プレドニゾロン軟膏
非ステロイド性の抗炎症剤
- スタデルム軟膏5%
- ベシカム軟膏5%
ステロイド薬を避けたい場合は、スタデルム軟膏やベシカム軟膏といった非ステロイド性の抗炎症剤があります。ただし、かゆみを抑える作用が弱いことが欠点です。症状の程度によって使い分けると良いと思います。
塗り薬皮膚感染症を起こしていたら抗生物質
皮膚をかいたことで毛穴が傷つき、毛嚢炎などの細菌感染を起こしている場合は抗生物質の塗り薬が処方されることがあります。
外用薬は細菌が原因の皮膚病に対しては、ゲンタシン軟膏、アクアチム軟膏、ゼビアックスローションなどがあります。デリケートな肌には刺激性が少ない軟膏タイプが理想です。
また、リンデロンVG軟膏という抗生物質と共にステロイドも配合されている合剤が処方されることもあります。
また、マラセチア真菌やカンジダといったカビ(真菌)が原因の皮膚病の場合は抗真菌薬が処方されます。真菌(カビ)には抗生物質ではなく、抗真菌剤を使います。
皮膚掻痒症に効く皮膚科の内服薬
内服薬かゆみに効く抗ヒスタミン薬
皮膚掻痒症において、かゆみが強くなるという現象はヒスタミンという生理活性物質によるものです。
そのため、この症状に対して抗ヒスタミン薬(抗アレルギー薬)がよく処方されます。飲み続けることで症状は必ず軽くなります。消失してしまうこともあります。
また、皮膚そうよう症の人は、高確率で花粉症にも強い反応が現れる傾向がありますが、その場合は花粉症シーズンが始まる前に抗アレルギー薬を飲んでおけば、症状を軽くすることができるはずです。
抗ヒスタミン薬は、一般に効果が高くなるほど眠気(副作用の一つ)が強くなるという欠点があるので、効果はそこそこで眠気の副作用が少ないお薬がよく処方されます。
特に車を運転する人は眠気の心配が少ない抗アレルギー薬を服用する必要があります。以下は、眠気が少なくて処方頻度が高いお薬です。
フェキソフェナジン(アレグラ)
皮膚掻痒症に対して最もよく処方される抗ヒスタミン薬がフェキソフェナジン(アレグラ)です。フェキソフェナジンは、抗ヒスタミン薬の中で最も眠気が少ない種類一つです。
このお薬を服用しても、ほとんど眠気を感じることはなく、車の運転も問題ないとされています。そして眠気以外の副作用も少なく、日常的に使用しやすいメリットがあります。花粉症やアトピー治療でも良く処方されます。
フェキソフェナジンは皮膚科で処方されますが、市販薬でもアレグラやアレルビという商品が存在します。アレルビのほうがコスパが良いです。
エピナスチン(アレジオン)
エピナスチンは、フェキソフェナジンに次いで眠気が少ないお薬です。フェキソフェナジンよりも少しだけ眠気の副作用が強いとされますが、一方で効果がやや高いとされます。(実際には効果も副作用もあまり差はないと思います)。
エピナスチンは、皮膚科で処方してもらうことができます。ジェネリックも多く登場してます。また、市販薬でもアレジオンという商品が存在します。
症状が強い場合はアレロックやジルテック
フェキソフェナジンやエピナスチンで効き目が弱い場合は、さらに効果が高いアレロック(オロパタジン)やジルテック(セチリジン)などの抗ヒスタミン薬が処方されたりします。ただし、それらはとても眠気が強くなる欠点があります。
内服薬漢方薬を活用する医師もいる
抗ヒスタミン薬の他に、漢方薬を処方するお医者さんもいます。皮膚そうよう症に効く漢方薬は、黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)、消風散(ショウフウサン)、当帰飲子(とうきいんし)、六味地黄丸(ろくみじおうがん)、牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)などがあります。
ただし、漢方は効果がはっきりと実感できないケースも多いです。個人的には漢方を服用するくらいなら、フェキソフェナジンなどの抗アレルギー剤で確実に症状を軽減したほうがいいと思います。
人工透析患者や慢性肝疾患の人はナルフラフィン
人工透析患者や慢性肝疾患の人は、全身に強いかゆみが現れることがありますが、その場合はナルフラフィンというお薬が使用されます。
日常生活における症状予防のポイント
熱いお湯は避ける
皮膚そうよう症で最も気をつけないといけないのが入浴です。お風呂に入ることで身体が温まり、毛細血管が拡張することでかゆみが現われやすくなります。
お風呂の温度が高くなるほどかゆみが強くなるので、ややぬるいと感じるくらいの温度が理想です。適温は36度~38度くらいです。40度以上になると入浴後にかゆみが強く現われやすくなるので温度管理には気を付けて下さい。
そして、温度と同時に長湯も禁物です。ササっと身体を洗ってお風呂をでるようにしたほうがいいでしょう。また、身体が冷えている時は、すぐに熱いお湯に入らないようにしたほうがいいです。
なお、保湿効果がある入浴剤を使用すると乾燥肌の改善が期待できますが、その成分そのものが肌の負担になってしまうこともあるようなので注意して下さい。
石鹸は使わなくてもいい
皮膚そうよう症の場合、皮膚のバリア機能が低下していることが多いので、石鹸で洗うことが肌の負担になってしまうケースがあります。
肌が弱い人は、通常はお湯で身体を流すだけにしたり、石鹸を使う場合でも3日に1回、週1回、というように肌の負担にならないようにペースを決めて使ったりして下さい。
そもそも、乾燥する人は基本的に皮脂量が極端に少ないので、毎日のように洗わなくても大丈夫だったりします。
そして、刺激性が低い石鹸を使うことも重要です。いずれにしても、乾燥肌を悪化させるような行為は避けるようにして下さい。
身体は豊富な泡を使い、手で洗うのが基本
石鹸で身体を洗う場合、肌に負担をかけないために、たくさんの泡を作って手で優しく洗うのが基本です。豊富な泡をクッションにして、こすらないように洗います。
なお、ナイロンタオルを使ったゴシゴシ洗いは症状が悪化するだけなので絶対に止めて下さい。将来的な乾燥肌をまねく可能性もあります。
入浴後は絶対に保湿剤で肌を保護する
入浴後は、身体の保湿成分が奪われた状態になっていますので、すぐに保湿して下さい。低刺激性の化粧水を使って水分を補った後、ヒルドイド軟膏やワセリンなどで油分のバリアを作るのが理想です。
セラミド化粧水の使用は逆効果になることがある
肌の保湿機能の約80%が細胞間脂質で、その主成分がセラミドだといわれています。そのため、セラミド配合の美容クリームなどを使えば、乾燥肌によるかゆみが劇的に改善するように思えます。
ところが、セラミド化粧品は肌のバリア機能を崩してしまう欠点があります。なぜなら、セラミドを乳化させるためにどうしても界面活性剤(乳化剤)をある程度は配合する必要があり、それが角質層を剥がしてしまうためです。
セラミドは補うというよりも、守る(失わせない)ことが重要だといえます。
部屋の湿度を高く
皮膚掻痒症は、肌の乾燥が原因となることが多いので、室内においても乾燥を防ぐようにしましょう。最も効率の良い方法は加湿器を利用することです。
特にエアコンやファンヒーターなどを使用すると室内の湿度は極端に低下しますので、同時に加湿器を使ったほうがいいです。
部屋の湿度は最低でも50%以上、理想は60%が目安です。東京など関東エリアでは、冬の日中では湿度20%を下回ることも珍しくないので注意して下さい。
刺激物を控える
唐辛子やワサビ、からしなどはかゆみを増強するので控えましょう。
唐辛子に含まれるカプサイシンは、交感神経節においてサブスタンスPという伝達物質を発生させ、それがヒスタミンの分泌を促してしまい、結果的にかゆみを悪化させてしまうことがわかっています。
飲酒も控える
飲酒は血行を良くしますが、身体が温まることで肌がかゆくなることがあり、それが皮膚のかゆみを悪化させる可能性があります。
また、お酒を長期的に摂取していると血管がもろくなり、肌の健康においてもマイナス影響をもたらします。ワインや日本酒、ビールといったアルコール飲料はほどほどにしたほうが良さそうです。
下着は肌触りが良い綿100%のものを
皮膚掻痒症は、着用している服の影響で悪化することがあります。できるだけ肌触りのよい衣類を身に付けるようにしましょう。理想は綿100%のものです。
なお、肌のかゆみは静電気によって引き起こされることがありますが、ポリエステルやナイロン素材の衣類よりも綿やシルク(絹)といった天然の生地のほうが静電気は発生しにくいようです。
最後に筆者の知り合いの話し
筆者の知り合いに皮膚そうよう症に悩んでいる男性(40代)がいます。かゆみを我慢できずにかきむしって血がでることもあるような症状レベルなのだそうですが、筆者が見た感じでは乾燥肌のような印象は全くなく、むしろモチモチしてて潤いがあるような印象でした。
どうやら皮膚掻痒症の原因として最も多い老化による肌の乾燥というよりも、体質的な要因で引き起こされているようでした。ヒスタミンが作用しやすい体質なのでしょう。
そして、その男性の話しによると、「いろいろな治療法を試したけど抗ヒスタミン薬を飲みながらステロイド薬を上手に使って症状をコントロールするしかない」といいます。塗り薬ではステロイド以外の薬では力不足なのだといいます。
特にお風呂あがりは寝れないくらいに非常に強いかゆみに襲われることがあるようですが、その場合は強めのステロイドをかなり広範囲に塗らないとかゆみが治まらないのだそうです。
クリニックで処方してもらったステロイドはすぐに使いきってしまうので、頻繁に皮膚科を受診しているといっていました。
そして塗り薬だけではなく、フェキソフェナジンという抗アレルギー薬を飲んでいるとかなり症状が軽くなるそうです。
私が最も驚いたことは、男性の脚を見せてもらった時でした。脚は何度もかきむしって血が出ることもよくあるという部分なのだそうですが、その時に見せてもらった時は、色素沈着など一切ないとてもキレイな脚をしていたのです。
何度も掻いて血が出たりしたことがあっても、綺麗な状態をキープできているのは、ワセリンとステロイド剤を上手に使っているからだと言っていました。
一般に、皮膚が薄くなってしまうなどの副作用を考慮すればステロイドは使わないほうがいいとされていますが、バリア機能低下が原因ではなく、体質的な要因だけが原因となっている皮膚そうよう症の場合は、その副作用を理解して顔以外の部分にだけ上手に使えば、ステロイドに対してあまり神経質になる必要はないのかもしれません。そう思った出来事でした。
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