画像はマラセチア毛包炎という症状。
背中や胸、肩や腕などに炎症性が低くて赤い小さなニキビがポツポツと発生した場合、それはニキビではなくマラセチア毛包炎という皮膚病の可能性があります。
マラセチア毛包炎は非常にニキビと似ていますが、一般的なニキビの原因菌とは違う菌によって引き起こされ、原因菌が違うため治療法も異なります。
この症状は炎症が軽度であり、ほとんどは多発することはないのでほったらかしたりする人がほとんどですが、長引くと色素沈着が悪化するので薬で早めに治療するのが理想です。
今回はマラセチア毛包炎の発生原因と治し方、症状の見た目、また、ニキビとの違いを画像付きで解説していきます。
マラセチア毛包炎の原因とは?
マラセチア毛包炎とは、マラセチア真菌というカビ(真菌)の一種が毛穴で増殖することが原因で発生する皮膚炎です。
マラセチア菌は、癜風菌(でんぷうきん)ともいわれ、どんな人にも皮膚に存在している常在菌の一つです。
皮膚に存在するマラセチア菌には、いくつかの種類がありますが、そのうちマラセチア・ファーファーという種類がマラセチア毛包炎の原因になるとされます。
マラセチア・ファーファーは皮膚細胞が異物と認識してしまう性質があり、その菌が増加すると免疫反応を起こして炎症性サイトカインを放出し、ニキビのように赤くポツっと炎症を起こしてしまうのです。
マラセチア毛包炎は、見た目ではとてもニキビと似ていますが、一般的なニキビとは違う菌によって発生するため、ニキビに効果的な治療をしていても効果が現れないこともあります。
ちなみに、マラセチア菌というカビは脂漏性皮膚炎という皮膚病の原因菌だと考えられています。さらに、マラセチア菌はアトピー性皮膚炎の悪化因子になることがあります。
症状の見た目
マラセチア毛包炎の症状見た目としては、先端に若干の光沢がある赤くて小さなブツブツが毛穴と一致して発生します。
多発した場合においても毛穴に一致して発生し、腫れも大きくならずに均一的に発現します。マラセチア毛包炎にはかゆみが現れることがありますが、基本的にかゆみは軽度です。ステロイド薬が必要なレベルの強いかゆみではありません。
発生しやすい身体の部位
マラセチア毛包炎は、主に胸や背中、肩や腕などに発生しやすい傾向があります。脚やお尻などにも発生することがあります。皮脂が多いところや蒸れやすい部分に発生しやすいのが特徴です。(だた、皮脂が多い顔や頭皮に発生することはまれです)。
炎症が長引きやすい
この症状の特徴として、治療をほったらかしておくと治るまで症状が長引きやすいことがあげられます。炎症が引くまで2~3週間ほどかかることもあります。
あまり多発することはなく、炎症レベルも軽度なため、治療が遅れて症状が長びいてしまうケースが多いようです。
マラセチア毛包炎といえば炎症レベルが低いのですが、長く続くのでシミのようなポツっとした色素沈着が残ってしまうのです。まれにホクロのような非常に濃いシミになったりすることもあります。
しかし早めに治療すればより早く治り、色素沈着を予防することができます。
他の人にうつる病気なの?
マラセチア毛包炎は他の人にうつるような症状ではありません。
マラセチア菌が増える原因
高温多湿や汗が多い環境
マラセチア菌はカビの一種であるため、汗や湿気が多くなる夏場に増加しやすくなります。大量の汗をそのままにしておくと、マラセチア菌が増加しやすいようです。
また、マラセチア菌は皮脂を好む性質があるため、比較的に皮脂が多い部分に発生しやすい傾向があります。
化粧品のつけすぎ
化粧水や乳液などをベタベタつけることでマラセチア菌が増えてしまうことがあるようです。
肌の潤いは必要ですが、水分量が高すぎてもカビが増えたり、皮膚がふやけてターンオーバーが乱れてしまうことがあります。
お風呂に入らない
毎日お風呂に入って肌を清潔にする習慣がない人は、マラセチア毛包炎にかかりやすくなります。特に胸元や背中は洗い残しが多いため、注意しなければいけません。
抗生物質がマラセチア菌の増加を促すことに
抗生物質の使用がマラセチア菌のようなカビを増やす可能性があります。抗生物質は細菌に効くお薬ですが、マラセチア菌のような真菌(カビ)に効果がありません。
そのため、抗生物質を使うと皮膚の細菌だけが減少し、マラセチア菌のようなカビが残って強い影響をもたらすようになります。それがマラセチア毛包炎の原因になる可能性があります。マラセチア菌の他にもカンジダというカビも抗生物質によって増えやすくなります。
免疫不全によって発生しやすい
免疫機能が低下することでマラセチア毛包炎が発生しやすくなります。免疫が崩れると、それまで免疫によってコントロールされていた皮膚の細菌やカビのバランスが崩れ、マラセチア菌が異常増殖することがあるようです。
例えば、糖尿病、HIV感染初期、エイズ患者などによる免疫不全で症状が発生、悪化する傾向があります。
また、ステロイド薬の使用なども皮膚の免疫が低下する原因の一つです。
筆者の経験では疲れの影響が大きい
画像は筆者の二の腕に発生したマラセチア毛包炎です。
この症状は湿度が高い夏にできやすくなりますが、私の場合は汗や季節など関係なく、疲れたりするとできやすくなります。
ストレスは皮膚の免疫を乱しますので、それが関係しているのかもしれません。
なお、私は皮膚科でもらったケトコナゾールローションを塗って治しています。今までの経験では2~3日ほどで跡も残らず治っています。
他の皮膚病との違い
ニキビとの違い
マラセチア毛包炎とニキビはとても似ています。皮膚科医でも診断を間違えることがあります。
マラセチア毛包炎とニキビとの違いは、マラセチア毛包炎は赤くて小さな腫れが毛穴と一致して均一的にポツポツと現れますが、ニキビの場合は均一性がなく、ポツポツとできる場合もあれば、とても大きく腫れるものもあります。
マラセチア毛包炎の原因菌であるマラセチア菌は炎症性が低いため、ニキビのように大きく腫れることがありません。比較的に腫れが小さいのがニキビとの違いです。
そして、マラセチア毛包炎の場合は若干のかゆみが現れることがあります。
毛嚢炎との違い
ニキビの他にもマラセチア毛包炎と似ている皮膚病の一つに毛嚢炎(もうのうえん)という症状があります。
毛嚢炎は主に黄色ブドウ球菌という細菌が原因で発生する皮膚感染症で、主にカミソリや毛抜きなどを使用して毛穴が傷つくことで発生しやすいのが特徴です。
マラセチア毛包炎と毛嚢炎の違いは、毛嚢炎の場合は病原性が強い黄色ブドウ球菌が原因であるため、赤みがやや広がることが多く、先端に膿(うみ)をもつことも多いです。白ニキビのようになります。
また、毛嚢炎は皮膚の深い部分で発生すると強く腫れて化膿することがあり、まれにおでき(せつ)という状態になることもあります。
一方、マラセチア菌は病原性が低くて炎症性が弱いことから大きく腫れるようなことはありません。毛穴に一致して均一的に発生するのがマラセチア毛包炎の特徴です。
マラセチア毛包炎の治し方
肌の清潔を維持する
マラセチア毛包炎を予防改善するには、できるだけ肌を清潔にすることが重要です。
マラセチア菌というカビは汗や湿気、皮脂が多い部分を好んで増殖するため、多くの汗をかいた後はシャワーを浴びるようにしましょう。また、毎日お風呂に入って身体をしっかりと洗い、分泌物を落としましょう。
汗がこもりにくい服装をして下さい
マラセチア毛包炎を予防するには汗をかきにくい服装が理想です。通気が良い服装にすれば、カビの増加を防ぐことができます。特に夏は熱や汗がこもらない服装を意識して下さい。
体調を整えて下さい
身体の調子が悪くなることでもマラセチア毛包炎が発生しやすくなると考えられます。食事バランスや睡眠不足、運動不足などに気をつけ、体調を整えましょう。
夏はエアコンで室温と湿度を抑える
マラセチア毛包炎は、湿気や汗などが多くなる夏場に発生しやすいです。そのため、エアコンを利用して室温や湿度を下げ、必要以上に汗がでにくい環境を作りましょう。
日本の夏は蒸し暑く、熱中症などのリスクもありますので、積極的にエアコンを利用して下さい。
冷えすぎるのもかえって新陳代謝を乱すため、エアコンの設定温度は28度くらいを目安にして下さい。また、エアコンのファンに大量に発生するカビもしっかりと掃除しましょう。
マラセチア毛包炎の治療法
マラセチア毛包炎の治し方は、塗り薬が中心です。多発した場合や早く治したいという場合は早めにお薬を使って治療をして下さい。
市販薬ピロエースZが効く
市販薬でマラセチア毛包炎に効くお薬があります。ピロエースZというお薬で、ラノコナゾールを主成分としたイミダゾール系のカビに効くお薬です
病院では、アスタットという塗り薬が処方されたりしますが、それと同じ主成分です。
お薬の説明を見ると、「みずむし、いんきんたむし、ぜにたむし」に効くお薬と表記されていますが、マラセチア菌にも効果があります。他にも、カンジダ皮膚炎にも効果があります。
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ピロエースZの配合される有効成分
ピロエースの配合成分は以下の通りです。()内の数字は100ml中の配合量です。
- ラノコナゾール(1.0g)・・・抗真菌薬(この成分がマラセチア菌に効きます)
- クロルフェニラミンマレイン酸塩(0.5g)・・・抗ヒスタミン薬(かゆみ止め)
- クロタミトン(5.0g)・・・かゆみ止め成分。
- グリチルレチン酸(0.5g)・・・甘草由来の消炎成分。
- l-メントール・・・清涼成分。
抗真菌成分だけではなくかゆみ止めや消炎作用が含まれ、総合的に症状を抑えます。
ピロエースZは、液状タイプ、クリームタイプ、軟膏タイプの3種類がありますが、夏場で肌がべたつく人は液状タイプが良いでしょう。市販薬のラミシールは効果が低い
市販薬にラミシールAT液というテルビナフィンを有効成分とした商品がありますが、それもカビに効くお薬です。
そのため、マラセチア毛包炎にも効果が期待できますが、ピロエース(ラノコナゾール)よりも効果は劣ります。
ラミシールは水虫やカンジダによく効くのですが、マラセチア菌に対してはやや効き目が低いようです。
オロナインH軟膏では効果なし
「皮膚のできものにはオロナインで治る」みたいに考える人はとても多いのですが、マラセチア毛包炎にはオロナイン軟膏ではほとんど効果ないです。
主成分のクロルヘキシジングルコン酸塩液は、カビにはあまり効果がないためです。
皮膚科の薬ケトコナゾールという塗り薬が良く効く
皮膚科ではマラセチア毛包炎と診断されるとケトコナゾール(商品名:ニゾラールローションなど)というイミダゾール系の抗真菌薬がよく処方されます。保険適応です。
ケトコナゾールはマラセチア菌に対してよく効きます。ローションタイプとクリームタイプがありますが、汗かきの人は一般にベタベタ感のないローションタイプが用いられます。
また、皮膚科ではケトコナゾール以外にもアスタットクリーム、ラノコナゾール液などのお薬が処方されることがあります。(それらは有効成分だけでいえば市販薬のピロエースと同じ成分です)。
なお、ニキビ治療に使用されるゼビアックスやアクアチム、デュアック配合ゲルなどの抗生物質ではマラセチア毛包炎には効きません。マラセチア毛包炎の原因となるカビはニキビの原因菌である細菌とは性質が違うので、抗生物質では効果がないのです。
皮膚科の薬多発した場合や治りにくい場合は内服薬の使用も
マラセチア毛包炎は、背中や胸などに多発してしまうこともあります。そして抗真菌薬の塗り薬だけでは治りにくい場合があります。
あまりにも症状がひどい場合は、病院で抗真菌薬の内服薬をすすめられることがあります。
病院ではイトラコナゾール(製品名:イトリゾールなど)という抗真菌薬などがよく処方されます。保険適応です。
そのお薬は、真菌の細胞膜の生合成を阻害することで真菌を抑制します。イトラコナゾールのような内服薬は、マラセチア毛包炎が多発して治りにくい場合にのみ処方されます。
なお、市販薬の抗真菌薬の飲み薬はありません。病院で処方してもらう必要があります。
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