にきびが強い炎症を起こすほど、皮膚の赤みや炎症性色素沈着といったニキビ跡もひどく残ってしまうようになります。
イオン導入は、そいういったニキビが治った後の肌の悩みを改善する方法。
今回は、そのイオン導入がニキビ跡に効く仕組みと注意点を解説します。
イオン導入とは?
イオン導入とは、微弱な電流を用いて美容有効成分を皮膚の深部まで浸透させることができる美容法です。「イオントフォレーシス」といもいわれます。
イオン導入は、ニキビ跡治療やシミ治療、エイジングケア治療として一部の皮膚科、美容クリニックで行われています。また、エステサロンなどでも用いられています。
イオン導入の原理
皮膚には皮脂膜や角質などのバリア機能があり、美容液を普通に肌に塗布しても思うように浸透しない欠点があります。
イオン導入は、肌に負担のないとても弱い電流を使用して、分子量の小さい水溶性成分を皮膚の奥まで浸透させることができます。
イオン導入の作用原理は、マイナス極どうしは反発しあうという性質を利用したものです。
プラスの電極を手などに持ち、マイナスの電極を顔に当てると、マイナスの電極どうしの反発によってマイナスに帯電した水溶性有効成分を顔の奥へと浸透させることができます。
イオン導入の効果
イオン導入では美容成分を肌の奥まで届けてくれ、単に塗布した場合と比較すると数倍から数十倍まで浸透力を高めることができるとされます。その効果はイオン導入する溶液によって異なります。
イオン導入に使用される成分
ニキビ治療におけるイオン導入は「水溶性ビタミンC誘導体」、「プラセンタエキス」、「トラネキサム酸」、「グリシルグリシン」などがよく使用されます。
それらはイオン導入に適した分子量が小さい水溶性で、危険性がない非常に優れた成分であるためです。
ビタミンC誘導体
イオン導入で使用されるビタミンC誘導体は、ビタミンCをリン酸基と結合させて安定性と浸透力を高めた成分です。(リン酸は水溶性です)。
肌に塗ると生体がもつホスファターゼという酵素によってビタミンCとリン酸の結合がほどけて肌に浸透します。
ビタミンCはメラニン生成抑制効果によるシミ・色素沈着改善作用、コラーゲン増加作用、皮脂分泌を抑える作用、毛穴引き締め作用などの効果が期待できます。
ビタミンC誘導体はニキビ治療によく使用される成分です。
プラセンタエキス
プラセンタエキスは、豚や馬などの胎盤に豊富に含まれる成長因子(細胞増殖因子:グロースファクター)やビタミンなどを含む成分。
シミや色素沈着の改善、コラーゲン増生、ターンオーバー促進作用など総合的な若返り効果が期待できます。
ニキビ跡の炎症後色素沈着にも非常に有効です。
含有する成長因子は主に以下の通り。
EGF(上皮細胞増殖因子)
EGF(上皮細胞増殖因子)は、肌細胞の増殖を促してターンオーバーを活性化することでメラニンの排出を促進します。また、潤い成分を作り出す表皮内細胞も活性化することでセラミドやNMF(天然保湿因子)などの合成も高くなり、肌の乾燥が改善します。
FGF(線維芽細胞増殖因子)
FGF(線維芽細胞増殖因子)は、真皮層に存在する線維芽細胞(コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸などを作り出す細胞)の増殖を促します。
VEGF(血管内皮増殖因子)
VEGF(血管内皮増殖因子)は、血管内細胞を増殖します。老化やニキビなどの炎症による血管の損傷を修復・再生し、若々しい肌作りの土台を支えます。ニキビ跡の赤みの改善が期待できます。
他にも様々な種類の成長因子を含みます。
トラネキサム酸
トラネキサム酸は「抗プラスミン作用」によって抗炎症作用、抗アレルギー作用、美白作用をもたらす成分です。
プラスミンは様々な生理活性物質、情報伝達物質を発生させて炎症を悪化させたり、メラニン色素の生成を促したりしますが、そのプラスミンを抑制することで炎症やメラニンを抑制し、ニキビ跡のシミ・くすみを改善します。特に肝斑という女性特有のシミと併発したニキビに有効です。
グリシルグリシン
グリシルグリシンは、肌にも存在するグリシンというアミノ酸が2つつながった成分です。
皮膚内のグリシン受容体に作用して炎症性サイトカインを抑制し、イオンバランスを整えることでターンオーバーを正常化します。
主にニキビ治療や開いた毛穴治療に用いられます。
イオン導入が難しい成分
イオン導入で使用できる成分は、「水溶性成分」で「分子量が小さい成分」です。
例えば、保湿成分にコラーゲンやヒアルロン酸などがありますが、それらは分子量が大きいためイオン導入には向いていません。
皮膚のバリアを超えて肌の奥まで浸透しますので、成分の純度が高く、皮膚にとって余計な成分が含まれていない水溶性成分が理想的です。
効果を高めるために
イオン導入は、古い角質が除去された後に行うと効果が高まります。そのため、イオン導入の前にケミカルピーリングという角質をクリアにする施術が有効です。
美容クリニックやエステでは「イオン導入の前の角質ケア」はよく行われる施術です。
ケミカルピーリングとは、グリコール酸(AHA)やサリチル酸(BHA)などの酸して角質を剥がし、ターンオーバーを促進させる治療法です。
ケミカルピーリングはニキビ治療にもよく用いられます。ただし、やりすぎは肌老化を促してしまう原因となります。
ニキビ跡クレーターに効果がある?
イオン導入はニキビ跡のクレーターに対してわずかな効果は期待できますが、劇的な効果は得られません。ニキビ跡の凹みが深い場合はほとんど改善効果が実感できません。
自宅でも行うことができる?
イオン導入器は、店頭や通信販売などで販売されています。病院やエステサロンなどで用いられるイオン導入器とは異なりますが、原理的に同じであるとされ、購入することで自宅でホームケアできます。
イオン導入の効果まとめ
- 普通に皮膚に塗布した場合と比較してイオン導入を行うと数倍~数十倍も有効成分の浸透力がある。
- ビタミンC誘導体やプラセンタエキス、トラネキサム酸などの分子の小さい水溶性成分を使用し、それぞれの効果を十分に得られる。
適応症状
- シミ、くすみ、色素沈着、皮膚の黒ずみ。
- ニキビ跡の炎症後色素沈着、赤み。
- 毛穴の開き、キメの乱れ、肌老化。
- 肌質改善。
イオン導入の施術内容とアフターケア
Step1洗顔やクレンジングによって肌汚れやお化粧を落とす。
Step2必ずではないですが、浸透をよくするためにイオン導入前にケミカルピーリングなどを行ったりします。
Step3ニキビ跡を中心にビタミンC誘導体やプラセンタエキス、トラネキサム酸などをイオン導入してきます。微量の電流を皮膚に流すため、ややヒリヒリするような感覚があるかもしれません。
Step4イオン導入後は、肌を整えて終了です。
Step5術後すぐにお化粧をして帰宅することもできます。
施術動画
以下はイオン導入の治療映像。(YouTube)
水溶性の美容液が染み込んだパックの上からローラーを転がして、わずかな電流の力で有効成分を肌の奥まで届けていきます。
なお、これはローラーで転がすタイプですが、転がすことなく単に肌に当てて行うタイプもあります。(市販品はそっちが多い)。
美容クリニックやエステで行われるイオン導入というとローラーが多くなっています。
アフターケア
- イオン導入は特にダウンタイムはありませんが、美肌のために日常的な紫外線対策や保湿スキンケアをこころがけましょう。
- 肌が弱い人は術後に若干の赤みが現れることがありますが、時間の経過とともに治まります。
治療時間の目安
イオン導入の治療時間は、顔全体の施術で20~30分程度が目安です。麻酔などは必要ありません。
治療回数の目安
イオン導入は、頻繁に行っても基本的に問題ないとされますが、やりすぎも問題です。1週間に1回といったように期間を決めて行いましょう。
治療料金の目安
イオン導入の費用は、皮膚科、美容クリニックなどの医療機関では、顔全体で1回あたり3000~5000円程度が目安です。
エステサロンでもそれくらいが目安です。単体ではなく他の施術(例えばケミカルピーリング、IPL治療など)と組み合わせて行われていることが多いです。
なお、イオン導入は医療機関で行っても保険適応外です。自由診療です。
イオン導入の副作用と注意点
- イオン導入そのものには副作用はありません。使用する成分に対して肌トラブルを起こす可能性はあります。
- 自分で行う場合、余計な成分が含まれていないものを使用しましょう。
- イオン導入を自分で行う場合、同じ箇所を長く行ってはいけません。使用前に説明書を良く読み、それに基づいて使用しましょう。
- 肌荒れ、湿疹、アトピー性皮膚炎、切り傷、擦り傷などがある場合、イオン導入は控えたほうが良い場合があります。
- ビタミンC誘導体を使用した場合、施術後に肌が乾燥することがあります。保湿でカバーできますが乾燥肌や敏感肌の場合はかえって肌荒れしてしまうことがあります。
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