画像はグリシルグリシンという成分でイオン導入を行ったときのビフォーアフター。
グリシルグリシン(GG)とは、構造的にはグリシンという物質が2つつながった成分。
グリシンはアミノ酸の一種。肌の角質層の存在する天然保湿因子(NMF)にも含まれる成分で保湿作用があります。
そして、水に溶けやすいことや様々な配合成分との相性が良いことから化粧品によく配合されます。
そのグリシンが2つつながったものがグリシルグリシンなのですが、その成分にはターンオーバーをコントロールして毛穴を目立たなくさせる作用があります。
ここではそのグリシルグリシンの毛穴トラブルに対する効果を解説していきます。
毛穴が開く仕組み
まず、毛穴はどのように目立つようになるのでしょうか。
毛穴が開く原因は一つではなくいろいろありますが、その一つがターンオーバーの乱れです。
そして、ターンオーバーが乱れる要因の一つが皮脂の増加によるものです。
皮脂によって毛穴が開くメカニズムは以下の通り。
メカニズム1皮脂が多く分泌されると、皮膚に生息するアクネ菌やブドウ球菌などの常在菌が皮脂を分解して遊離脂肪酸という物質を作り出します。
遊離脂肪酸とはグリセリンとの結合がない脂肪酸で、皮脂中にはパルミトレイン酸、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸などの遊離脂肪酸が多く含まれます。
メカニズム2皮脂中の遊離脂肪酸のうち、特に不飽和脂肪酸は酸化されやすく、時間とともに刺激性が大きくなる欠点があります。
そして、その刺激性により炎症の原因である炎症性サイトカインの発生を促したり、肌細胞内のイオンバランスを乱して角化異常(ターンオーバー異常)を起こしてしまいます。
なお、皮脂に含まれる不飽和脂肪酸は、オレイン酸、パルミトレイン酸、リノール酸などがあります。
メカニズム3ターンオーバーが亢進することで毛穴周辺の皮膚が厚くなり、盛り上がって毛穴がより大きく開いて見えようになります。
また、毛穴のターンオーバーが加速することで毛穴がつまり、ニキビを引き起こす原因にもなります。
そして、そのターンオーバー異常をコントロールするのがグリシルグリシンというわけです。
なぜ不飽和脂肪酸は刺激があるの?
なぜ常在菌が皮脂を分解して作り出す不飽和脂肪酸は、酸化しやすいのでしょうか。
飽和脂肪酸が酸化されにくいのは?
不飽和脂肪酸が酸化されやすいのに対し、飽和脂肪酸は酸化されにくい性質がありますが、それから解説します。
まずは飽和脂肪酸の一つであるパルミチン酸の構造。わかりやすく画像作ってみました。 飽和脂肪酸は、炭素(C)がすべて水素(H)と結合した状態、つまり水素で飽和された状態。だから飽和脂肪酸といいます。
飽和脂肪酸は炭素が水素とすべて結びついているので、炭素が酸素と結びつきにくいという性質があります。つまり酸化されにくい性質があるのです。
不飽和脂肪酸が酸化されやすい理由
以下は酸化されやすい不飽和脂肪酸の一つであるオレイン酸の構造。 炭素(C)がすべて水素(H)で飽和されていない部分(炭素の二重結合)が一箇所あり、そのことから不飽和脂肪酸といわれます。
水素で飽和されていない部分が酸素と結びついてしまうので、酸化しやすい性質があります。
なお、毛穴の開きが目立つ鼻周辺の皮脂にはオレイン酸やパルミトレイン酸などの不飽和脂肪酸が多いことがわかっています。
リノール酸はさらに酸化しやすい
次は、オレイン酸よりもさらに酸化されやすいリノール酸という不飽和脂肪酸の構造。 炭素が水素と結びついてない部分(炭素どうしの二重結合)が2箇所もあるので、酸素と結びつきやすい性質があります。つまりリノール酸は特に酸化されやすい性質があります。
いろいろ難しくなりましたが、いずれにしても不飽和脂肪酸の酸化による刺激でターンオーバーが必要以上に進み、毛穴が開いたり、ニキビができたりするのです。
グリシルグリシンの効果、毛穴縮小の仕組み
毛穴の開きやキメの乱れは、皮脂に含まれる不飽和脂肪酸の刺激によって皮膚細胞内のカルシウムイオンバランスが乱れ、それがターンオーバーを乱すことが原因の一つだと考えられています。
グリシルグリシンは、グリシン受容体に作用して肌細胞内のイオンバランスを整える作用があります。
そして、ターンオーバーの乱れを正常化させて、毛穴周辺の皮膚が厚くなってしまう現象を予防し、毛穴縮小に導きます。
炎症性サイトカインを抑制する
皮膚が皮脂によって刺激を受けたり、ニキビが発生したりする過程には炎症性サイトカインが発生しますが、グリシルグリシンは炎症性サイトカインの産生を抑制する作用があります。
つまり、皮脂による炎症やターンオーバーの乱れ、またニキビへと発展する現象を予防する効果があるということです。
グリシルグリシンの効果画像
以下は、グリシルグリシンによるイオン導入を継続し、治療効果を比較したビフォーアフター写真。
やや赤みが減り、わずかに毛穴の縮小がみられます。肌がなめらかになってボコボコ感もなくなった印象があります。ただ、効果にはかなり個人差があります。
特にオイリー肌による毛穴の開きに有効
皮脂分泌が多いほど毛穴の開きが悪化する傾向があります。
なぜなら、皮脂が多くなるほど遊離脂肪酸、特に不飽和脂肪酸が多くなり、それによってターンオーバーが乱れてしまうためです。
グリシルグリシンは特に過剰な皮脂によって起こる毛穴トラブルに効果があります。脂性肌向けだといえます。
特に頬の毛穴の開きに効く
グリシルグリシンは、身体の中ではTゾーン(額、眉間、鼻など)や頬などの毛穴の開きに効きます。その部分は特に皮脂分泌が多く、ターンオーバーが乱れやすいためです。
肌老化が原因の毛穴の開きには効果が低い?
グリシルグリシンは、肌細胞内のイオンバランスを正常化してターンオーバーを整える働きにより毛穴の開きを改善します。
そのため、純粋な老化現象による毛穴のたるみにはグリシルグリシンはあまり効果がありません。
画像は老化による帯状毛穴という現象ですが、こういった状態にはほとんど効果ないです。
肌老化による毛穴開きは、コラーゲンやエラスチンなどが減少してハリが失われたことが理由であり、ターンオーバーを改善するグリシルグリシンではあまり効果が期待できないようです。
炎症によって毛穴がすり減ったような状態には効かない
毛穴が目立つ原因は皮脂がもたらす刺激によるものが大きいのですが、その刺激によって軽い炎症が長期に及ぶと、だんだんと毛穴の入り口がすり減ってすり鉢のような状態になることがあります。(イラスト参考)
そういった毛穴の入り口がすり減ったような状態にはグリシルグリシンではほとんど効果がありません。
なお、毛穴周辺がすり減った場合、通常は自然には治りません。フラクショナルレーザーなどにおいても改善が難しいものになります。
グリシルグリシンの使い方と応用
市販の化粧水
グリシルグリシンは市販化粧品にも配合されています。水溶性であるため多くは化粧水に配合されます。
使い方は一般的な化粧水と同じように洗顔後の肌に塗るだけです。
コットンに含ませてグリシルグリシンのローションパックも効果的です。
原料粉末を化粧水に混ぜて使う
グリシルグリシンは相性が悪い成分がほとんどありません。
そのため、グリシルグリシンを一般的な化粧水に混ぜて使用することもできます。
例えば、ビタミンC誘導体ローションに混ぜて使用することも可能です。
グリシルグリシンは粉末として購入できますので、それをわずかに配合してみましょう。配合濃度は2~3%が目安。
グリシルグリシンの副作用と注意点
- 手作り化粧水の場合、グリシルグリシンの濃度は2~3%が目安です。
- さらの濃度が高くなると若干ピリピリしたり、かゆみが現れたりすることがあります。ただし、皮膚には影響はありません。
- グリシルグリシンは使い続けることで効果が実感できます。ターンオーバーが28日周期なので、1ヶ月くらいは使用継続してみましょう。
効果には限界がある
グリシルグリシンの効果には個人差があります。そして、毛穴のタイプによっても効果が違ってきます。
さらに、グリシルグリシンは化粧水のように普通に使っても思うように浸透しない難点があります。効果を高めるためにはイオン導入が理想です。
グリシルグリシンのイオン導入
グリシルグリシンの効果を最大限に発揮するには、イオン導入という方法が最も理想です。
イオン導入とは、微弱な電流を使用して水溶性の有効成分の浸透を高める美容法。
もともと肌には角質層というバリア機能が備わっているので、普通に塗っても成分の浸透が低い欠点があります。
そこでイオン導入を活用することで成分をより肌の奥に届けることができるとされ、普通に塗った場合と比較して数倍~数10倍もの浸透効果があるとされます。
そして、グリシルグリシンは分子量が小さい水溶性成分で水中でイオン化するため、イオン導入できる成分として適しています。
エステや美容クリニックでも行われている
美容クリニックやエステサロンでもグリシルグリシンを使ったイオン導入が行われています。
イオン導入というと、ビタミンC誘導体やプラセンタエキス、トラネキサム酸などを使用するケースが多いのですが、グリシルグリシンを使った毛穴治療を行うところも増えています。
市販のイオン導入器でホームケアもできる
また、イオン導入器を購入すれば自宅で行うこともできます。
その場合は、精製水にグリシルグリシンを3%ほど溶かして行って下さい。1回だけの使用なので防腐剤を配合する必要はないです。
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