にきび治療に対して、ニゾラールローション(一般名:ケトコナゾール)という塗り薬が有効なケースがあります。
ニゾラールローションとは、イミダゾール系の外用抗真菌薬(塗り薬)で、皮膚科で処方されるお薬です。細菌ではなくカビ(真菌)に効果を発揮します。(細菌とカビは違う性質をもちます)。
ニゾラールローションは、真菌(カビ)の細胞膜を破壊することで殺菌的に働き、主に水虫、カンジダ症、脂漏性皮膚炎などの真菌(カビ)による皮膚疾患によく使用されます。
また、ニゾラールローションはマラセチア菌というカビが原因のニキビに対しても効果を発揮します。今回は、ニキビ治療におけるニゾラールの効果と副作用、使い方などを解説します。
ニキビの発生メカニズム
ニキビは一般にアクネ菌という皮膚常在菌が増加することによって発生します。
1皮脂が増えると、アクネ菌は皮脂を分解して遊離脂肪酸(オレイン酸やパルミトレイン酸など)を作り出します。
2遊離脂肪酸は時間の経過と共に変性して皮膚に対して刺激性が強くなります。そしてターンオーバーを乱して毛穴つまりを引き起こす原因になります。
3ふさがった毛穴の中で空気(酸素)がない環境を好むアクネ菌が増加し、免疫反応によって炎症を起こします。これがニキビです。
ニキビの多くはアクネ菌によって発生しますが、アクネ菌によるニキビに対してはニゾラールローションでは効果がありません。ニゾラールは真菌(カビ)に効く塗り薬であり、アクネ菌のような「細菌」には効果がないためです。
マラセチア真菌が原因でにきびが発生することもある
ニキビはマラセチア真菌という真菌(カビ)の一種が要因となって発生することもあります。マラセチア真菌はどんな人にも皮膚に存在する皮膚常在菌の一つで、皮脂や湿気が多い環境を好みます。
そのマラセチア菌はアクネ菌と同じように皮脂を分解して遊離脂肪酸を産生する性質があります。遊離脂肪酸が生じることで皮膚が刺激を受け、ターンオーバーが乱れて角質層が厚くなるとニキビが発生することがあります。
マラセチアによるニキビは腕や脚、背中、胸などに発生しやすい傾向があります。それらの部位にポツポツとニキビができた場合、マラセチア真菌が原因である可能性があります。そして、マラセチアによるニキビにはニゾラールローションがよく効きます。
マラセチア真菌そのものが炎症因子になることも
マラセチア菌に対して免疫反応を起こすことで吹き出物を引き起こすことがあります。
炎症因子となるマラセチア菌には主に「マラセチア・ファーファー」「マラセチア・ダーマティス」「マラセチア・シンポディアリス」「マラセチア・グロボーサ」「マラセチア・レストリクタ」などの5種が確認されています。
そのうちマラセチア・ファーファーは特に炎症性サイトカインの発現量が高く、免疫反応によって炎症を引き起こしやすい性質があります。
マラセチア菌による免疫反応によって発生する炎症を一般的なニキビと区別して「マラセチア毛包炎」ということもあります。そのマラセチア毛包炎の場合は潰したりしてもニキビの芯(角栓)のようなものはありません。
マラセチア真菌が増加する要因とは?
- 皮脂の増加。(マラセチアは皮脂が多い環境を好みます)。
- 汗や湿気。(マラセチアはカビですので、汗や湿気が多い夏場に増えやすい傾向があります)。
- ストレス・イライラは皮脂分泌を促したり、ターンオーバーを乱す原因になります。
- 洗顔不足、スキンケア不足がマラセチアによる皮膚炎の原因になる可能性があります。
- ビタミンB2、ビタミンB6などの不足。ビタミンB2、B6は皮脂分泌を抑制する働きがあります。
- 糖尿病やエイズなどの免疫不全によってもマラセチアが増加することがあります。
マラセチア菌は脂漏性皮膚炎の原因菌
マラセチア真菌は脂漏性皮膚炎という皮膚病の原因菌になることもあります。マラセチア真菌が皮脂を分解することで生じる遊離脂肪酸に対して接触皮膚炎を起こすことが脂漏性湿疹の原因と考えられています。
脂漏性皮膚炎は皮脂が多い部分(顔や頭皮など)に発生しやすいのですが、特に肌のバリア機能が弱い乳児期や高齢者に発生しやすい傾向があります。
この脂漏性皮膚炎はマラセチア菌が原因なのでニゾラールローションがよく効きます。
アトピー性皮膚炎の原因になることも
マラセチア真菌は、アトピー性皮膚炎の憎悪因子になることがあります。マラセチア真菌そのものに対するアレルギーや、マラセチア真菌が代謝過程で作り出す物質にアレルギーを起こすことでアトピーを引き起こすケースもあります。
汗をかくと湿疹が悪化しやすい場合はマラセチア真菌による影響が疑われます。その場合はニゾラールクリームなどの塗り薬が効果的なケースがあります。
ニゾラールの使い方
ニゾラールローションは、肌を清潔にして使用するのが基本です。洗顔・クレンジングによって皮脂汚れを落とし、肌が落ち着いたらニゾラールローションをニキビに塗布します。
使用回数は1日1~2回が目安です。使い終わったらキャップを閉めて紫外線が当たらない冷暗所に常温保管してください。
ニゾラールローションが効果的なニキビの状態
ニゾラールローションをニキビに対して使用する場合、それがマラセチア菌によるものなのか判断する必要があります。
特に顔以外の部分(腕や脚、背中、胸元など)に小さくて光沢があるようなニキビができた場合はマラセチア菌によるニキビが疑われます。
また、小さいニキビにかゆみが現れたりする場合もマラセチア菌が原因である可能性があります。
自己判断では難しいため医師に診断してもらうのが理想ですが、医師においても的確な判断が難しいことがあります。一般的なニキビ治療薬では効果がなく、ニゾラールを使用したらすぐに治ったことからマラセチア菌が原因だと判明するケースも少なくないです。
形状・種類
ニゾラールには、「ニゾラールローション2%」と「ニゾラールクリーム2%」があります。ニキビ肌や皮脂が多い肌質には一般にローションタイプが使用されます。
ジェネリック医薬品
ニゾラールにはジェネリックも多く存在します。ケトコナゾールローション2%、ケトコナゾールクリーム2%、ニトラゼンローション2%、ニトラゼンクリーム2%などがあります。
ニゾラールローションの副作用や注意点
- ニゾラールローションは、すべてのニキビに効くわけではありません。マラセチアというカビが原因のニキビに有効です。
- 副作用は少ないですが、赤み、かゆみなどの異常が現れたら使用を中止しましょう。
- まれにかぶれ(接触皮膚炎)を起こすことがあります。
- 乳化剤が含まれるため、肌が薄い敏感肌には刺激が強いかもしれません。
ニゾラールローションの全成分と添加物の性質
ニゾラールローションは主成分のケトコナゾールを1gあたり20mg含有します。その他の添加物は以下の通りです。
- ミリスチン酸オクチルドデシル・・・油剤。薬剤の使用感を高めるために使用されます。
- ステアリルアルコール・・・乳化物を安定化させる目的で配合されます。また、感触を向上させる働きやエモリエント効果もあります。
- スクワラン・・・保湿成分です。皮脂にも含まれるスクワレンを酸化しにくいように安定化させたのがスクワランです。
- モノステアリン酸グリセリン・・・乳化剤の一つです。
- ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60・・・乳化剤の一つです。
- ポリオキシエチレンセチルエーテル・・・乳化剤の一つです。
- 酢酸トコフェロール・・・ビタミンE誘導体。薬剤を安定させる働きがあります。
- ジブチルヒドロキシトルエン・・・薬剤の安定性を維持する成分です。
- パラオキシ安息香酸プロピル・・・防腐剤。
- パラオキシ安息香酸メチル・・・防腐剤。
- キサンタンガム・・・乳化安定を高めたり、感触向上目的で使用されます。
- 1,3- ブチレングリコール・・・保湿成分。ベタツキが少ないのが特徴で、よく化粧品に多用されます。
ニゾラールローションを使用してまれに皮膚の赤み、ヒリヒリ感、熱感などが現れたり、しみたりすることがありますが、それらの副作用は添加物が原因である可能性もあります。
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