吹き出物は一般に顔にできやすいことで知られています。ところが、顔以外にもニキビがよくできることがあります。その部分の一つが胸(デコルテ)です。
胸のニキビは顔ニキビと同じように大きく腫れることもあり、腫れが強くなるとニキビ跡がクレーターになったり、盛り上がった傷跡になることもあります。
男女関係なく、胸のニキビやブツブツ、ニキビ跡の赤み、色素沈着などに悩む人は少なくありません。今回は胸ニキビの原因と治し方を解説します。
胸のにきび・ブツブツの原因と特徴
胸ニキビの原因は過剰な皮脂
胸ニキビの原因の一つが過剰な皮脂です。身体の中で顔や頭皮は皮脂分泌が多くてニキビができやすい傾向がありますが、胸元も皮脂腺が発達していて比較的に皮脂量が多い部分です。
皮脂は男性ホルモン(主にテストステロン)などの影響を受けて活発に分泌されるようになります。思春期からニキビ・ブツブツができやすくなるのも男性ホルモンが増加するためです。
男性だけではなく女性においても思春期から男性ホルモンは増加します。(女性も男性の10%ほどの男性ホルモンが分泌されています)。
皮脂増加がデコルテニキビを発生する仕組み
1皮脂の増加によってアクネ菌などの皮膚常在菌が増加する。
2アクネ菌などの微生物が皮脂を分解して遊離脂肪酸を作り出す。
3遊離脂肪酸には刺激性があり、炎症を誘発して皮膚の角化(ターンオーバー)を乱す。
4遊離脂肪酸の刺激により角質が剥がれやすくなり、毛穴内部に角質汚れ(角栓)がたまりやすくなる。(角栓の正体はほとんどが角質で、それに皮脂が混ざったものです)。
5遊離脂肪酸による刺激で毛穴周辺の角質が厚くなり、毛穴が塞がってニキビが発生する。
デコルテは元々ターンオーバーが活発な部分
胸・デコルテは身体の中でも新陳代謝が活発な部分です。角質が厚くなりやすい部分だといえます。それと共に皮脂の増加によってターンオーバーが進行してしまうと、さらに角質肥厚を起こして毛穴が塞がりやすくなります。
毛穴に角質が溜まることでニキビの芯が作られ、毛穴つまりを引き起こして黒ニキビや白ニキビ、そして赤ニキビへと発展することも多いようです。
胸ニキビはマラセチア真菌が原因の可能性もある
画像はマラセチア毛包炎という厳密にはニキビとは違う症状です。
ニキビは一般にアクネ菌という細菌が毛穴内部で増加することで発生しますが、胸などにおいてはマラセチア真菌というカビによって胸ニキビが発生することがあります。
腫れが大きいにきびではなく、小さい赤ニキビが多発している場合は、マラセチア真菌が原因の可能性があります。
状態によってはニキビと区別して「マラセチア毛包炎」ということもあります。
マラセチア真菌というカビはアクネ菌と同じように皮脂を分解して遊離脂肪酸を産生します。その遊離脂肪酸が皮膚を刺激することで赤くブツブツとした胸ニキビができてしまうと考えられています。
また、マラセチアそのものに免疫反応を起こして炎症を引き起こすこともあります。マラセチア真菌は皮膚常在菌の一つで、皮脂や湿気が多い環境を好む性質があります。
胸は皮脂が多いだけではなく汗をかいて蒸れやすいところであるため、マラセチアのようなカビが増加しやすい傾向があります。
マラセチア真菌は「カビ」であるため、皮脂や汗による蒸れを抑えて皮膚を清潔に心がけることが大切です。治療には抗真菌剤(カビを抑制するお薬)の使用が効果的です。
皮膚科の薬
皮膚科ではケトコナゾール(製品名:ニゾラールローション)やラノコナゾール(製品名:アスタット)などのイミダゾール系の外用薬(塗り薬)がよく処方されます。
それらのお薬はマラセチア毛包炎に対して第一選択肢として処方されるものです。また、症状がひどい場合は内服薬を使った治療が理想なことがあります。
市販のお薬
マラセチア毛包炎の効く市販薬はピロエースZ液があります。そのお薬の主成分はラノコナゾールです。ローションタイプの他にも、クリームタイプ、軟膏タイプの3種類があります。
胸ニキビはニキビ跡がクレーターになりやすい?
ニキビが強く炎症を起こすと、ニキビ跡がクレーター状に凹んでしまうことがありますが、胸元はニキビ跡がクレーターになりやすい傾向があります。
真皮層が厚いため、コラーゲンが萎縮すると凹みが目立ちやすいようです。瘢痕化しやすいため炎症を素早く抑えたいところです。
ケロイドを起こすことも多い部分
胸は身体の中でもケロイドを起こしやすい傾向があります。胸ニキビによってケロイドを起こすこともまれにあります。ケロイドになりやすいかどうかは体質やアレルギーなどが大きく関与します。
ケロイドには、しだいに拡大していく真性ケロイドと、それ以上は大きくならない肥厚性瘢痕の2種類がありますが、ほとんどは肥厚性瘢痕です。真性ケロイドであることは非常にまれなケースです。
胸ニキビは内臓疾患の影響?
胸ニキビが多発するのは内臓や内分泌系に異常があるのでは?といわれることがあります。
実際に、女性特有の症状が原因で吹き出物ができやすくなることはありますが、ニキビは毛穴と皮脂腺があれば全身どこでも発生する可能性があるのものです。
例外なく胸などの皮脂や汗の分泌が多い部分にニキビ・ブツブツが多発しても特に珍しいことではありません。
胸ニキビの予防法と治し方
バスタイムで胸の汚れを丁寧に落とす
ニキビ予防のためには、しっかりと汚れを落とすスキンケアが基本です。顔にはニキビができないのに胸元にはニキビが多発してしまうという人は単に洗浄不足であることが多いようです。
石けんやボディーソープをしっかりと泡立てて、肌に刺激にならないように優しく丁寧に洗いましょう。
洗い方は手洗いが理想です。ナイロンタオルなどで皮膚に負担をかけるような洗い方をしていると、その刺激によってかえってニキビや肌荒れをまねいてしまうことがあります。
皮膚は刺激を受けると防御反応により角質を厚くしようとするため、かえって毛穴つまりをまねいてしまうことがあります。
皮膚に刺激を与えていると摩擦黒皮症(ナイロンタオル黒皮症)といわれる色素沈着をまねくことがあります。胸元は優しく洗うことがポイントです。
ピーリングで穏やかな角質ケアをする
胸ニキビを予防・改善するには、ピーリング化粧品が効果的です。胸ニキビは、ターンオーバーが進行して角質が厚くなることで発生しやすくなりますが、ピーリング化粧品による角質ケアによって角質肥厚の改善が期待できます。
胸は角質が厚いためピーリングによるトラブルも起きにくいです。ただし、やりすぎも禁物です。
ピーリング成分は、主にグリコール酸、リンゴ酸、クエン酸、乳酸などのフルーツ酸(AHA)や、サリチル酸(BHA)という成分がよく用いられます。
ピーリング化粧品には洗顔料、固形石鹸、ふきとり化粧水などがありますが、いずれの場合も決してこすったりするような肌に負担をかける使い方はしてはいけません。
市販ニキビ治療薬が効果的
胸ニキビが大きく腫れた場合、一般的な薬局・ドラッグストアなどで販売されているニキビ治療薬で改善が期待できます。
腫れたニキビはアクネ菌や黄色ブドウ球菌などの細菌が増加しますので、殺菌作用や角質柔軟作用がある市販にきび治療薬で炎症を治すことができると考えられます。
市販の塗り薬には、ピンプリット、オロナイン、ペアアクネクリーム、アクネス、ビフナイト、クレアラシルなどが有名です。
汗を吸収しやすいインナーを選ぶ
胸は非常に汗をかきやすい部分です。多量にかいた汗によってマラセチア真菌というカビが増加して胸ニキビ・ブツブツが発生する可能性があります。そのため、肌が不安定な時期は汗で肌が蒸れないような工夫が必要です。
下着は密着性がなくて通気が良く、吸湿性が良い綿素材やシルク素材などの天然素材が理想的です。また、大量にかいた汗はこまめにふき取ったり、早めにシャワーで洗い流したりしましょう。
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