皮脂が多くなるとできやすくなるニキビ。そのニキビは通常は発生から1~3日ほどで腫れがピークをむかえ、その後は自然に治っていくものです。
ところが、かゆいニキビの場合は腫れが悪化して普通のニキビよりも長期化し、治りにくくなってしまうことがあります。
そして、にきび跡として赤みや色素沈着も濃くなり、さらにクレーター(皮膚の凹みのこと)やケロイドを起こしやすくなります。
今回は、悪化しやすいかゆいニキビの治し方と、ニキビ跡をできるだけ予防する方法を解説していきます。
かゆいニキビの原因とは?
アレルギー体質が原因になることが多い
かゆいニキビはアレルギーが関係していることが多いです。
ニキビが炎症を起こすと、どんな人においても様々な生理活性物質が発生し、結果的にそれらが炎症反応を大きなものにしてしまいますが、その一つがヒスタミンという物質です。
ヒスタミンは炎症反応に関与し、特にかゆみをもたらすことで知られています。ニキビがかゆくなる人は、体質的にヒスタミンが放出しやすい傾向があるようです。
アレルギー性疾患をもつ人はニキビがかゆくなりやすい
アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、ぜんそく、アレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患をもつ人は、ニキビができるとかゆくなることが多いです。
なぜかゆいニキビは悪化しやすいのか?
かゆみがあるにきびは、通常のニキビより炎症や腫れが悪化する傾向があります。
その原因はニキビのかゆみをもたらすヒスタミンの性質が関係します。
ヒスタミンは「皮膚のかゆみ」をもたらすだけではなく、炎症反応にも関与し、毛細血管拡張、血管透過性亢進、サブスタンスPの活性化、炎症誘発物質の放出などを促進する働きがあります。
簡単に言えば、ヒスタミンが炎症反応を大きくし、さらに違う炎症物質の発生を促してしまうことが問題なのです。
ニキビが炎症を起こすことでプロスタグランジン、ヒスタミン、ブラジキニンなどの生理活性物質が発生して炎症を進行させますが、ヒスタミンが過剰に発生すると、プロスタグランジンなどをさらに促してニキビの腫れを悪化させてしまいます。
その結果、ニキビが悪化したり、長期化して治りにくくなったり、ニキビ跡もひどく残ってしまうようになります。
クレーターやケロイドを起こすこともある
ニキビにかゆみが現れて悪化した場合、色素沈着が酷くなったり、またクレーターやケロイドになってしまう可能性も高くなります。
ヒスタミンが過剰に関与すると、比例して免疫反応も過剰に働き、真皮層(コラーゲンなどがある層)が通常よりも強くダメージを受けてしまいます。
皮膚の破壊が進んでしまうことで、結果的にクレーター状の凹みが発生する可能性が高くなるのです。
反対に、炎症反応が続いたことでニキビ跡がケロイド状に盛り上がってしまうことがあります。なお、クレーターやケロイドは体質や肌質などによって個人差があります。
ケロイド体質はアレルギー体質?
なお、ニキビによるケロイドは、コラーゲンを必要以上に作りすぎてしまうという「免疫の過剰反応」が原因の一つです。
そのためアレルギーの一種と考えることもできますが、アレルギー体質だからケロイドができやすいとは限りません。
アレルギー体質ではなくてもケロイドができやすい人も多いです。
ストレスによるにきびのかゆみ
ストレスやイライラによってニキビがかゆくなることがあります。
ストレスは自律神経のうち交感神経節を刺激し、サブスタンスPという物質の発生を促すのですが、サブスタンスPはヒスタミンの放出を促す働きがあります。
それによってニキビがかゆくなったりすることがあるのです。
なお、ストレスやイライラによってアトピーが悪化することがありますが、それもサブスタンスPが大きく関与しているとされます。
化粧品に対するアレルギー
化粧品に配合される成分にかぶれてしまうことでニキビにかゆみが現れることがあります。
これはアレルギー性接触皮膚炎といわれるもの。
一般に化粧品は広く使用されるものですので、アレルギーの危険が少ない安全性が高い成分で作られていますが、それでも人によってはまれにアレルギーを起こすことがあります。
有効成分だけではなく香料や着色料、または、パラベンという防腐剤などの添加物に対してもアレルギー症状を起こすこともあります。
化粧品配合成分でアレルギーを起こすのはごくまれなケースですが、ニキビがあるデリケートな時期は化粧品をアレコレ使用するのではなく、シンプルなスキンケアが理想的だといえます。
また、それまで使い続けて問題なかった化粧水でも、ある時から肌に合わなくなることがあります。
特に過去に化粧品によってかぶれた経験がある人は注意して下さい。
合わない化粧品は中止する
なお、化粧品を使用してかゆみや赤みヒリヒリ感などの異常が現れたら、必ずそのコスメの使用を中止しましょう。
「もったいないから」として使い続けると、黒皮症(こくひしょう)という治りにくい色素沈着を起こすことがあります。
単に乾燥からかゆみが現れることもある
ニキビのかゆみは単に肌の乾燥によって発生することもあります。
肌の潤い成分が減少して乾燥してくると、角質層のバリア機能が弱くなって刺激に敏感になり、皮膚がかゆくなることがあるのです。
そういった乾燥によるかゆみがニキビの炎症反応と重なり、ニキビにかゆみが発現することがあるのです。
乾燥が原因ならば保湿で潤いを補うだけで治ることが多いのです。保湿化粧水を使用して肌水分量を高めましょう。
ニキビがある時はオイルフリーの化粧水が理想です。
なお、肌が乾燥していると肌細胞の再生力が低下してしまい、ニキビ跡のモヤモヤしたシミが治りにくくなることがありますので、乾燥肌の場合は保湿したほうがいいです。
マラセチア毛包炎の可能性も
ニキビがかゆい場合は、それは厳密にはニキビではなくマラセチア毛包炎という症状である可能性も。
マラセチア毛包炎は、マラセチアファーファーというカビが毛穴で増加することで発生する症状。
皮脂が多い部分に発生しやすく、主に胸元や背中、二の腕などに発生しやすいです。顔も皮脂が多いですが、免疫的な要因で発生しにくいようです。(でも顔にも発生することがあります)
見た目はとてもニキビと似た症状ですが、ニキビのように大きく腫れることはなく、均一的な炎症性の低い赤いブツブツが毛穴と一致して発生します。
そして、そのマラセチア毛包炎にはかゆみが現れることがあります。汗をかいたり、お風呂に入るだけでしみたりすることも。
なお、マラセチア毛包炎はカビが原因であるため抗真菌薬(カビに効くお薬)が効きます。
皮膚科の処方薬ではケトコナゾール、市販薬ではピロエースZ液などがあります。
一般的なニキビ治療薬では効果がないので注意して下さい。通常のニキビよりも治りにくいと思ったらこの症状を疑って下さい。
なお、病院の先生においてもニキビとマラセチア毛包炎を正確に区別できない人も多いです。
10年以上のキャリアがある皮膚科医でもちゃんと診断を間違えてしまうケースもあります。
脂漏性湿疹と併発するとかゆくなる
脂漏性湿疹(しろうせいしっしん)という皮膚病と併発したニキビもかゆくなることがあります。
脂漏性湿疹の原因は、皮脂中の遊離脂肪酸に対する接触皮膚炎によるものと考えられていて、その刺激によってかゆみがでることも多いです。
脂漏性湿疹は、頭皮、ひたい、眉間、眉毛、鼻の周囲などの皮脂が多い部分に発生しやすく、フケをともなった湿疹が現れます。
なお、脂漏性皮膚炎の原因は、常在菌であるマラセチア真菌などの影響が大きいとされますが、他にはストレス、栄養不足、ビタミン不足、スキンケア不足、加齢、タバコ、アルコールなどの要因が指摘されています。原因を特定することが難しいケースもある症状です。
妊娠中のニキビのかゆみ
妊娠中、特に妊娠の初期にはプロゲステロンという女性ホルモンが急激に増加することで肌が脂っぽくなり、ニキビができやすくなることがあります。
そして、妊娠中には「妊娠そうよう症」といって肌がかゆくなることがあります。妊娠中はホルモンバランスが急激に変化し、いろいろ身体が不安定になるためです。
顔ダニが影響する?
どんな人の皮膚にも生息しているとされる顔ダニ。
皮脂が多くてニキビができやすいところに多く生息するので「ニキビダニ」ともいわれますが、そんな顔ダニが「ニキビのかゆみの原因では?」と考える人もいます。
実際には、その顔ダニや代謝物に対してアレルギーを持っていればその可能性はあります。
ところが、顔ダニはどんな人の皮膚にもいるものですのであまり気にしなくていいと思います。
そもそも、顔ダニに対してアレルギーを持っていればアトピー性皮膚炎のような症状がでているはずです。
炎症したニキビにだけかゆみがでるという場合は、顔ダニは関係ないとは思います。
かゆいニキビの治し方と対処法
ニキビを掻いたりしないようにする
ニキビにかゆみがあっても絶対に掻いたりしてはいけません。
皮膚をかくと、さらにヒスタミンが発生して炎症が悪化し、にきび跡がひどくなってしまいます。
痒みがあっても我慢するのが基本です。
かゆいニキビは冷やすと良い?
かゆいニキビはヒスタミンの過剰放出という過剰な免疫反応が原因ですが、皮膚を冷やすことでヒスタミンなどの伝達物質の発生を抑制することができます。
例えば、冷やした化粧水をコットンに含み、ニキビに対して保湿パックすれば炎症や腫れは抑えられます。化粧水パックしたまま就寝してもOKです。
日焼けは厳禁
ニキビが腫れている時に強い紫外線を浴びてしまうと、ニキビの赤みやシミが悪化してしまいます。
特にかゆいニキビがある時に肌色が変わってしまうような日焼けは避けて下さい。
アレルギー体質の場合はお薬を
アレルギー体質で、かゆみがあるニキビが多発した場合、もしくは他のアレルギー疾患がある場合は、普段から抗アレルギー薬を服用しても良いと思います。
抗アレルギー薬は炎症やかゆみを酷くするヒスタミンの発生を抑制します。
さらに、ヒスタミンだけではなくプロスタグランジンなどの様々な炎症物質の発生を抑える働きがあるので、炎症そのもの悪化しにくくなる効果が期待できます。
抗アレルギー薬はフェキソフェナジン(商品名:アレグラ)が有名です。フェキソフェナジンはわりと良い効果が得られますし、眠気などの副作用もほとんどないメリットがあります。
病院で塗り薬を処方してもらう
かゆいニキビは免疫反応によって悪化しやすいため、素早くニキビの原因菌(アクネ菌)を抑制して免疫反応を抑制する必要があります。
腫れたニキビに効く塗り薬には、ベピオゲル、ダラシンTゲル、デュアック配合ゲル、アクアチムクリーム、イオウカンフルローションなどがあります。
ただし、それらのニキビ薬がさらにかゆみを悪化させてしまうこともあります。かゆみが悪化したら必ず使用中断して医師に相談して下さい。
市販薬のスキンセーフAPクリームが効く
市販の塗り薬では、スキンセーフAPクリームというお薬がかゆいニキビに効きます。
このお薬はエスエス製薬が販売している抗ヒスタミン薬を中心としたもので、刺激性が強い成分が含まれていないのが利点です。
そして、このお薬は皮膚科などでもらった塗り薬と組み合わせて使っても問題ないです。
塗り薬がローションタイプならスキンセーフを後に塗ります。塗り薬が軟膏タイプなら、スキンセーフを塗った後に軟膏を使います。
抗菌薬の内服治療
ニキビがかゆい。そしてニキビが多発している場合、皮膚科に行くと抗生物質の内服薬が処方されるかもしれません。
以下はニキビ治療によく使用される抗生物質です。
- ロキシスロマイシン(製品名:ルリッド錠)
- ミノサイクリン(製品名:ミノマイシン)
- ビブラマイシン
- ファロム
抗生物質は耐性菌を考えると使わないほうがいいのですが、悪化している場合は積極的に使って一気にニキビをしずめたほうがいいと思います。
ビタミンB群は不足してはいけない
かゆいニキビは長期化しやすい。そして炎症が長くなると色素沈着が濃くなってしまいます。
その色素沈着を少しでも和らげるためにはビタミンB群が有効。
特に、ビタミンB2、B6、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチンなどはかなり重要です。
それらはビタミンCよりも炎症による色素沈着を予防する効果があることがわかっています。
サプリメントを利用しても良いのでビタミンは不足しないようにして下さい。
食事においては油分を抑える
そもそもニキビは皮脂量と比例してできやすくなりますが、皮脂を抑えるにはやはり油分の摂取を抑えることが即効性があるようです。
特に、牛肉、豚肉、鶏肉といった動物性脂肪は飽和脂肪酸(ほうわしぼうさん)を多く含み、性ホルモンの分泌を促して皮脂を増やしてしまうので、控えたほうがよさそうです。
ニキビ治療薬でかぶれてかゆくなった場合
皮膚科で処方してもらった治療薬が原因でニキビにかゆみを伴うことがあります。
これは塗り薬に対してアレルギーを起こしたり、単に塗り薬が刺激になったことが原因です。
もし塗り薬を使用して強いかゆみや赤みが出たら必ず使用を中止して下さい。そういう副作用が出たらアレルギー性接触皮膚炎を起こして入ることがほとんどです。
どんな治療薬でもアレルギーを起こす可能性がありますが、保険適応の塗り薬では以下のような薬がにきびのかゆみを起こしやすいです。
- ベピオゲル・・・過酸化ベンゾイルという酸化剤を主成分としたお薬。酸素を発生させることでアクネ菌を殺菌しますが、ピーリング作用や刺激感があり、ニキビがかゆくなったり、ヒリヒリしたりすることがあります。
- デュアック配合ゲル・・・過酸化ベンゾイルとクリンダマイシン(抗生物質)の2種類の成分を配合したニキビ治療薬。かゆみなどの副作用の発生率はかなり高いです。
- エピデュオゲル・・・過酸化ベンゾイルとアダパレンの合剤。どちらの成分もかゆみをもたらす作用があり、ニキビ薬の中でも副作用はトップレベルです。
- ダラシンTゲル(ローション)・・・クリンダマイシン(抗生物質)の塗り薬です。その抗生物質は比較的アレルギーを起こしやすい傾向があります。
- イオウカンフルローション・・・イオウには殺菌作用のほかに角質を剥がすピーリング作用があります。角質が薄くなることでかゆみが現れやすいといえます。
上記のうち、特に過酸化ベンゾイルを含むベピオゲル、デュアック配合ゲル、エピデュオゲルなどには、強烈な接触皮膚炎を起こすことが少なくないので、処方することに否定的な皮膚科医もいます。
いずれにしても、過酸化ベンゾイルは肌が弱い人は使わないほうがいいと思います。
かゆみがでにくい処方薬
ニキビ薬の刺激が強く、赤みやかゆみがでる場合は、お薬を変更したほうがいいと思います。
副作用のリスクがかなり低い皮膚科の処方薬は以下の通り
- アクアチム軟膏(ナジフロ軟膏)
- ゼビアックスローション
- ゲンタシン軟膏
また、刺激性がほとんどない市販薬は以下の通り。
- ドルマイシン軟膏(抗生物質)
- テラマイシン軟膏(抗生物質)
- クロマイN軟膏(抗生物質+抗カビ剤)
ニキビ薬でかぶれた場合の治療
「薬でニキビがかぶれて痒い!」
そういった塗り薬でアレルギー性接触皮膚炎を起こした場合、皮膚科では副作用が低いニキビ外用薬と消炎薬を組み合わせて処方したりします。
例えば、アクアチム軟膏(抗菌薬)+スタデルム軟膏(消炎薬)の2つを使う方法です。(スタデルムはステロイドではありません)。
また、かぶれ治療に対してステロイド外用薬を組み合わせた治療をすすめるお医者さんもいます。
例えば、アクアチム軟膏+ロコイド軟膏(ステロイド)といった方法です。
ステロイド薬には消炎作用や免疫抑制作用があり、過剰に発生したヒスタミンを抑制し、さらに他の炎症伝達物質の発生も抑える働きによってニキビのかゆみや腫れを素早く抑えます。
ただし、ステロイド薬は、使い続けるとニキビの回復を悪くさせてしまうので、2~3日以内の使用にして下さい。
そして、ニキビに対してステロイドを使用するのは一般的ではなく、悪化のリスクがあるということを覚えておいて下さい。
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