ステロイド薬の副作用によるニキビや毛嚢炎。原因と治し方について

ステロイドの副作用のニキビの画像 ステロイド外用薬とは、優れた消炎作用や免疫抑制作用をもつ塗り薬です。

人間の体内に分泌されている副腎皮質ホルモンをもとに作られています。

ステロイド外用薬は、炎症性の皮膚疾患に良く使用され、アトピー性皮膚炎や急性湿疹、虫さされなどに用いられることで有名です。

とても優れた消炎効果があるのですが、ステロイド薬には強いレベルのお薬を使用したり、長期使用になるほど多くの副作用が現れる問題があります。

その副作用の一つが「ステロイドニキビ」です。

今回は、ステロイド外用薬によるブツブツの原因と治し方を詳しく解説していきます。

ステロイドの副作用でニキビが発生する原因

細菌 ステロイド外用薬を使い続けると、その副作用でニキビが現れることがあります。発生原因は、ステロイドに免疫を抑制する作用があることです。

ステロイドは免疫を抑えることで炎症や腫れを治す効果があるのですが、一方で免疫を抑えることで皮膚に生息する細菌や真菌(カビ)などの常在菌が増えやすい状態になり、その結果ニキビができてしまうのです。

ステロイド外用薬を使い続け、免疫低下によって細菌やカビ、ウイルスなどが増加して皮膚感染症にかかりやすくなるのは珍しい現象ではありません。

強いステロイド薬を顔に使い続ければ、2週間ほどでニキビやブツブツが発生することもあります。

ステロイドの他にも、タクロリムス軟膏(プロトピック軟膏)などの免疫抑制作用がある塗り薬においてもニキビが発生する可能性があります。

また、単にステロイド軟膏の添加物として含まれるワセリンなどが毛穴を塞いでしまうことがニキビの原因になることがあります。

症状の現れ方や見た目

ステロイドニキビの画像 ステロイドニキビは、ポツポツとした小さめで軽度のニキビが現れることが多いです。ステロイドニキビは、あまり大きく腫れることは少ないです。

ステロイドには肌細胞の増殖を抑制してターンオーバーを低下させるため、角化異常(皮膚が厚くなって毛穴がふさがる現象)やニキビの芯(角栓:角質が溜まったもの)の発生も抑制され、その結果、ニキビの腫れが大きくなることは少ないようです。

また、ステロイドが必要な肌は皮脂が少ないことや皮膚が厚くなる現象が起きにくいため、そもそも腫れたニキビができにくい傾向があります。

ステロイドニキビはわりと軽度であるため、ステロイドの使用を中止すれば比較的に早く治ることも多いです。

毛嚢炎の可能性も高い

毛嚢炎の画像 ステロイド薬の副作用でブツブツが発生した場合、それはステロイドニキビではなく毛嚢炎(もうのうえん、または毛包炎)という症状の可能性もあります。

毛嚢炎は表皮ブドウ球菌や黄色ブドウ球菌による皮膚感染症で、ステロイド外用薬の使用によって皮膚の免疫が下がり、黄色ブドウ球菌などが皮膚に感染することで発生します。

毛嚢炎とニキビとの見分け方は、毛嚢炎の場合は皮膚の浅い部分で炎症を起こすことが多く、ニキビの芯がないため早めに治る傾向があります。

中央に白く膿をもつことも多いですが、数日~1週間ほどでキレイに治るのが毛嚢炎の特徴です。ただし、皮膚の深い部分で毛嚢炎を起こすと、赤ニキビのように腫れが大きくなることがあります。

ステロイド外用薬の副作用で発生する毛嚢炎とニキビを見た目で見分けるのは皮膚科医でも難しいことがありますが、いずれにしてもその2つの症状は共に細菌が原因となるため、抗生物質による治療効果が期待できます。

マラセチア毛包炎の可能性もある

マラセチア毛包炎の画像 ステロイド外用薬を使い続けるとマラセチア毛包炎というニキビと似た症状が発生することがあります。このケースはわりと多いです。

マラセチア毛包炎は、皮膚常在菌の一つであるマラセチア菌というカビ(真菌)が毛穴の中で増加することで発生します。(マラセチア菌は誰にでも皮膚に存在するカビです)

ステロイドによって皮膚の免疫力を抑え続けることでマラセチア菌やカンジダ菌といったカビが増加しやすくなるのです。

マラセチア毛包炎とニキビの見分け方は、マラセチア毛包炎の場合は病原性が低いカビが原因であるため、炎症が大きくなることは少ないです。

弱い炎症が毛穴と一致して均一的に発生し、先端にやや光沢があります。そして、毛穴にニキビの芯(角栓)がないことなどがニキビとの違いです。

ニキビの芯がないので潰したりしても色素沈着が悪化するだけです。

そして、カビの性質上、治りにくい傾向があります。治るまで何週間もかかったりして、跡がシミになってしまうこともよくあります。

ですので、早めにこの症状に気づいて治療を始めたいところです。

治療について

ステロイドの副作用によるブツブツの正体がマラセチア毛包炎と診断された場合は、カビが原因であるため抗真菌薬が使用されます。

病院の処方薬ではニゾラールローション(一般名:ケトコナゾール)という抗真菌薬などがマラセチア菌に良く効きます。(クリームタイプもあり)。

肌が敏感な場合は、アスタット軟膏がいいと思います。有効成分のラノコナゾールと添加物がワセリンのみなので、デリケート肌でも使いやすいはずです。

また、塗り薬だけでは不十分な場合は、イトラコナゾールという内服薬がすすめられることがあります。1日50~100mgが目安。

治療期間はかなり長くなることが多いです。1か月以上かかったりします。

理論的にはステロイドを止めれば治りが早くなるはずですが、例えばアトピー患者などはステロイドを使わないといけない事情があったりするので、治療が難しくなることがあります。

マラセチアは皮脂量と比例して増加するので、油っこい食事を控えるようにすれば治りも良くなるはずです。

他にも多くの副作用が現れる問題がある

ステロイドによる副作用の画像 ステロイドの塗り薬には、長期使用によってニキビ以外にも様々な副作用が現れる問題があります。主に以下のような副作用があります。

  • ステロイドは表皮細胞の働きを抑制してターンオーバーを低下させるため、長期使用によって表皮が薄くなってバリア機能も低下するようになります。
  • ステロイドにはコラーゲンやエラスチンなどを作り出す線維芽細胞を抑制することで、長期使用によって皮膚が薄くなってきます。小じわが増えたリります。
  • ステロイドを長く使うことによって毛細血管が拡張して血管が浮き出て見えるようになることがあります。特に皮膚が薄い顔に現れやすいです。
  • 長い期間使用していると毛が濃くなってくることがあります。ステロイドには男性ホルモンに近い作用があることが主な要因です。

ステロイドのレベルによって副作用が違う

ステロイド外用薬の強度ランク ステロイド外用薬によるニキビや皮膚萎縮、毛細血管拡張などの副作用は、ステロイドの強度によって発現リスクが違います。

ステロイド外用薬は、その強度によって5段階に分けられていて、強い方から「1群:最も強い(ストロンゲスト)」、「2群:より強い(ベリーストロング)」、「3群:やや強い(ストロング)」、「4群:普通(ミディアム)」、「5群:弱い(ウィーク)」が存在します。

目安として、
1群の「最も強い」レベルのステロイドの場合、顔の皮膚炎に1~2週間ほど使用すれば副作用が現れる心配があります。

3群の「やや強い」レベルのステロイドの場合は、顔に使用する場合は2週間ほどなら副作用の心配はほとんどないとされます。

5群の「弱い」レベルのステロイドでは、顔に使用する場合は1か月くらいの使用までなら副作用の問題はないです。

顔に使用する場合は注意

薬を塗る写真 ステロイド外用薬は使用する身体の場所によっても副作用のリスクに違いがあります。一般に、顔は腕や脚などと比べて表皮層が薄いため、ステロイドの副作用が現れやすい傾向があります。

腕や脚などの角質層は15層ほどですが、顔の角質層は10層くらいで他の部位と比べると非常に薄いため、薬剤の反応が良いのです。お顔は大事な部分なのでステロイドの副作用には注意しなければいけません。

そして、顔の皮脂が多い人ほど、ステロイドの使用によってニキビが発生しやすくなります。脂性肌の人は注意して下さい。

ステロイド薬にはどんな種類の商品がある?

皮膚科などの病院で処方されるステロイド薬には、主に以下のようなものがあります。

1群:最も強いデルモベート軟膏、ソルベガ軟膏、グリジール軟膏、ジフラール軟膏、ダイアコート軟膏

2群:非常に強いメサデルム軟膏、マイザー軟膏、フルメタ軟膏、ネリゾナ軟膏、アンテベート軟膏、トプシム、パンデル軟膏

3群:強いプロパデルム軟膏、エクラー軟膏、ベトネベート軟膏、リンデロンV軟膏、ボアラ軟膏、ザルックス軟膏、リドメックスコーワ軟膏、スピラゾン軟膏、フルコート軟膏

4群:普通クラスロコイド軟膏、キンダベート軟膏、アルメタ軟膏、レダコート軟膏、テストーゲン軟膏

5群:弱いプレドニゾロン軟膏、エキザルベ軟膏

上記のうち、中には市販薬にも配合されているものもあります。また、軟膏タイプだけではなクリームタイプやローションタイプがある製品もあります。

ステロイドによって色素沈着が起こる?

アトピー性皮膚炎 ステロイドを使って皮膚が黒ずむ現象(色素沈着)を起こすと認識している人はとても多いです。そのため、ニキビに使用すると炎症後色素沈着が悪化してしまうと考えている人もいます。

ところが、実際には色素沈着はステロイドによるものではなく炎症が続くことで発生します。炎症が長引くことでメラニン色素が真皮に入り込むことで治りにくくなるのです。

ステロイドそのものにはを悪化させる働きはなく、さらに短期的で限定的な使用であれば副作用の心配はありません。ステロイドを恐れすぎないようにして下さい。

ステロイドニキビの治し方

ステロイドの副作用でブツブツが発生した場合、それがニキビなのか、また毛嚢炎なのか、それともマラセチア毛包炎とういカビが原因なのかを見分ける必要があります。理由は治療法に違いがあるためです。

場合によっては細菌やカビが原因ではなく、ウイルス性の皮膚疾患の場合もあります。そのため、異常が現れたら病院を受診するのが理想です。

皮膚科医でもステロイドニキビを厳密に見分けるのは難しいことがありますので、治療薬を続けて改善に向かわない場合は症状を疑って下さい。

中止したり弱いレベルに変えることで改善に向かう

ステロイドの副作用によるニキビ・ブツブツは、主にステロイドの免疫抑制作用によって発生するため、ステロイドを中止して免疫機能が回復してくればニキビは治っていきます。また、ニキビの部分にだけステロイドを塗らないようにすると治っていくでしょう。

ステロイドニキビは、強い炎症を起こすことは少なく、ポツポツとした軽度のニキビであることが多いため、ステロイドを中止すれば跡がひどくなることはなく改善に向かいます。

ただし、ステロイド薬を中止したすぐはまだお薬の副作用が回復している過程であるため、ニキビがやや治りにくいかもしれません。

問題は、ステロイドを中止するとアトピーなどの何らかの湿疹が悪化してしまうことがあることです。

皮膚炎の症状を見ながら、可能な場合はステロイドを弱いレベルのものに変えるだけでステロイドニキビを含む様々な副作用を抑えることができますが、やはり判断が難しいケースもあります。

ステロイドの代わりとなる治療薬

スタデルムクリーム・軟膏 ステロイドによってニキビが発生した場合は、ステロイドを中止して代わりに非ステロイド性抗炎症薬を使用することもできます。

病院で処方されるお薬には、スタデルムクリーム(軟膏)やベシカムクリーム(軟膏)などがあります。それらは、炎症を悪化させるプロスタグランジンという生理活性物質を抑えて炎症を治します。ステロイドのような副作用が起きないのがメリットです。

ただし、それらはステロイドのような高い消炎効果がないのが欠点です。スタデルムやベシカムなどの塗り薬がステロイドが必要なアトピー治療などの代わりになるかというと力不足のように思えますが、ステロイドによるニキビを改善するには適しています。

使い方は、湿疹にはステロイドを塗って、ニキビができる部分にはスタデルムやベシカムを使うといったように工夫して使うとニキビが治りやすいと思います。

ステロイドニキビは抗生物質が効く

ニキビ治療で処方される抗菌薬(抗生物質)の塗り薬の画像 アトピー患者さんのようなステロイドの継続が必要だけど、副作用のニキビも治したいという場合は、ステロイドと共に抗生物質の使用がすすめられるかもしれません。

ニキビや毛嚢炎は細菌が原因で発生するため抗生物質がよく効きます。

皮膚科を受診することで、湿疹のレベルに合ったステロイドと一緒にニキビに効く抗生物質を処方してくれると思います。

ただし、抗生物質は炎症が細菌によるものと医師に判断された場合に処方されます。

なお、マラセチア毛包炎の場合はカビが原因なので、抗生物質は効きません。お医者さんの中には、ニキビや毛嚢炎とマラセチア毛包炎を区別できない人がいらっしゃいますので注意しないといけません。

皮膚科で処方される抗菌薬は、ゼビアックスローションやアクアチム、ダラシンTゲル、ゲンタシン軟膏などが処方されると思います。

使い方の順番は、洗顔→化粧水(保湿)→抗菌薬(抗生物質)→ステロイドの順番で使って下さい。

ニキビ治療にはよくベピオゲルやディフェリン、デュアック配合ゲルなどが処方されることが多いのですが、それらは刺激性が強い欠点があるので、ステロイドが必要なデリケートな肌には難しいと思います。

また、ステロイドと抗生物質を組み合わせたリンデロンVGやデルモゾールG(後発品)などが処方されることがあるかもしれません。

ちなみに、ステロイドと抗生物質が配合された市販薬ではフルコートf、ベトネベートN軟膏、テラコートリル軟膏などがあります。

ステロイド治療と共にニキビや毛嚢炎などを治したい場合はそれらでも効果があります。

症状が強い場合は抗生物質の飲み薬が適していることもある

ルリッド ステロイド使用によるニキビや毛嚢炎などの副作用がひどい場合は、抗生物質の内服薬が有効なケースがあります。

抗生物質は、ニキビの原因となるアクネ菌や、毛嚢炎の原因となる黄色ブドウ球菌を減少させる効果があり、素早くニキビの炎症を治していきます。

一方で、抗生物質はマラセチア毛包炎やカンジダ症などのカビ(真菌)が原因となる皮膚病には効果がありません。

むしろ、抗生剤を使うとカビが原因の皮膚病は悪化する可能性もあります。これは皮膚に住む微生物のバランスが崩れ、免疫バランスも乱れるためです。

そして、抗生物質は長期使用によって耐性菌を生じる問題があるため、使用期間は2週間から1か月までが目安です。長々と使い続けて良いものではないことを覚えておいて下さい。

中途半端な治療はせず、ニキビが治るまでしっかりと飲み続けて治療を終了するのが耐性菌を生まないポイントです。

皮膚科では、ルリッド(ロキシスロマイシン)やミノマイシン(ミノサイクリン)、ファロムなどがよく処方されます。

まとめ

ステロイドによるブツブツは以下の3つ。

  • 毛嚢炎、おでき。
  • ニキビ。
  • マラセチア毛包炎。

毛嚢炎やニキビは細菌が原因となるので、抗生物質が有効。

マラセチア毛包炎はカビが原因となるので、抗真菌薬が効果的。けれど、この症状は治りにくいのでできればステロイドを中止したほうがいい。