ニキビ治療に効果的な塗り薬の一つにトレチノインという外用薬があります。
トレチノインとは、ビタミンA誘導体の一種で、角質を剥がす作用やターンオーバーを促進する働きがあり、毛穴つまりやニキビの芯(角栓)の形成を予防したり、炎症ニキビの治りを促す作用があります。
トレチノインは、海外では炎症ニキビ、重度ニキビ治療に対して積極的に用いられることがあります。例えばアメリカではFDA(アメリカ食品医薬品局)によって認可されており、ニキビ治療の外用薬として広く認識されています。
一方、日本では保険適応の治療として認可されていませんが、一部の皮膚科ではトレチノインを使ったニキビ治療が自由診療で行われていることがあります。
トレチノインには様々な副反応が現れるため使いにくい部分も多いですが、患者側のお薬に対する理解と適切な使用を守れば良いお薬であることには間違いありません。
今回はトレチノインのニキビ治療効果と、必ず現れる副作用の特徴と対処法をご紹介します。
効果と作用
トレチノインはビタミンA誘導体の一種で、それが皮膚内のレチノイン酸受容体に結合することで様々な効果をもたらします。
まず、トレチノインには角質を剥がすピーリング作用があります。このピーリング作用はとても強く、これによって毛穴つまりやニキビを予防、改善できます。
そして、トレチノインは表皮細胞を増殖させてターンオーバーを促す働きがあります。最大で2倍近く促進されます。
これによってニキビ跡のシミ(色素沈着)を予防、改善して早く治すことができます。また、この効能によりシミ治療に使用されることがあります。
他にも、トレチノインには皮脂腺に作用して皮脂分泌を抑制する働きや、線維芽細胞を活性化してコラーゲンやヒアルロン酸などの合成を促す働きがあります。昔はこの効能を目的にシワ治療に使用されることもありました。
効果が現れるまで
トレチノインを使用すれば、翌日から2~3日経てば反応が現れてきます。そして、毛穴つまりがなくなることでニキビもなくなっていきます。
おおむね、2~4週間ほど使用すれば、炎症が進行したニキビ肌においても劇的に治っていくと思います。ただし、使用するトレチノインの濃度にも左右されます。
ニキビ治療に適したトレチノインの濃度の目安
トレチノインは、同じ濃度でも効きやすい人、効きにくい人がいます。そのため、理想的な濃度は人それぞれ違いますが、顔のニキビに対して最初にトレチノインを使う場合は、0.025%~0.05%くらいのやや低めの濃度から試したほうが良いでしょう。
皮膚科で処方されるトレチノインの濃度は0.05%~0.1%濃度が多いです。顔ニキビに使用する場合、0.1%濃度は予想以上に強い反応が現れることがあります。反対に0.01%濃度くらいの低いレベルでは弱すぎて反応が現れない人もいます。
トレチノインが効果的なニキビの種類
トレチノインは、炎症ニキビや難治性ニキビの治療に使用するのが理想です。白ニキビや黒ニキビなどの炎症性の低いにきびにも使用できますが、トレチノインは赤みや皮膚の剥がれなどの反応が現れるため、軽いニキビにまで使用する必要はないと思います。
軽度ニキビにはディフェリンゲルというトレチノインと似た作用があるお薬が理想です。
副作用と使用上の注意点
トレチノインは、効果に比例して様々な副反応が現れます。主に皮膚の赤み、皮がむける(角質の剥離)、乾燥、ひりひり感、かゆみなどが現れるようになります。
トレチノインの副作用は濃度や使用部位によっても大きく違いがありますが、ニキビができやすい顔は比較的反応が現れやすい部分です。
- 皮膚の赤み・・・トレチノインによって必ず起こるのが皮膚の赤みです。これは薬が効いている証拠でもあります。赤みによってニキビが悪化したように見えることもありますが、一時的な現象です。ニキビが治って使用中止すれば赤みはとれていきます。
- 角質の剥がれ・・・トレチノインがしっかり効いてくると、角質が剥がれるようになります。これは正常な反応です。ただし、角質の剥がれ方が激しい場合は、濃度が強すぎるのかもしれません。
- 乾燥・・・角質を剥がす作用があるため、当然、肌が乾燥するようになります。
- ヒリヒリ感、かゆみ・・・角質が剥がれやすくなって皮膚のバリアが低下しますので、ヒリヒリ感やかゆみを感じることがあります。ただし、ヒリヒリ感が強い場合は濃度が強すぎるといえます。
紫外線や刺激を避ける
トレチノインを塗った部分に刺激や負担を与えないようにしましょう。そして、作用によって角質が剥がれますので、治療中は紫外線に弱い状態になります。
UVケアは必要ですが、薬効によって皮膚が不安定になるため、メイクや日焼け止めクリームなどの使用も難しくなります。そのため、紫外線に当たらない工夫が必要です。紫外線を浴びる機会が多い人は、この治療は適していません。
反応が激しい場合は使用頻度や濃度を落とす
トレチノインを使用して赤み、かゆみ、痛み、乾燥などが予想以上に強くなりすぎた場合は、治療を中断するか、濃度を下げたほうが良いでしょう。
使用できない人
妊娠中の人は原則としてトレチノインは使用できません。アトピー肌の人や乾燥肌、敏感肌の人は絶対にトレチノインを使用してはいけません。
肌老化が進行する可能性がある
トレチノインは、角質を剥がしてターンオーバーを促すような作用であるため、使いすぎは表皮層の老化をまねく可能性があります。皮膚が薄くなってバリア機能が低下してしまうといった現象が起こる可能性があります。
使い続けるほど効かなくなってくる
トレチノインは使い始めの段階では反応が強く現れますが、その後は反応も落ち着いていきます。だいたい、開始から2~3週間くらいまでは強く反応が現れ、さらに使い続けると効きにくくなります。
これは身体が慣れてきた証拠です。数ヶ月間、使用を中止すれば、再び使うと効くようになります。
トレチノインの使い方
トレチノインの使い方は洗顔後に肌を整えてから使って下さい。詳しくは以下のような手順で使用します。
Step1低刺激の洗顔料を使って洗顔し、汚れを落とします。トレチノインを使用しているときは、治療部位が敏感になっていますので刺激性の低い洗顔料で優しく洗顔しましょう。
Step2洗顔後は化粧水などで肌を整えます。トレチノインの使用期間中は肌が乾燥しますので、保湿スキンケアはしっかりと行う必要があります。
Step3トレチノインをできるだけニキビ部分からはみ出さないように薄く塗ります。基本的に1日1回、夜のみに使用しましょう。
Step4治療期間中は必ず紫外線対策をしましょう。
保存・保管方法
トレチノインは、密閉して冷蔵庫に保管します。トレチノインは分解が早く、時間の経過とともに効力が失われていくため、開封後からできるだけ早期(2~3か月以内)に使い切るようにしましょう。
皮膚科で処方してもらうことができる?
トレチノインを使ったニキビ治療は一部の皮膚科で行われています。トレチノインは日本では保険適応の治療として認可されていないため、一般的な保険適応の治療しか行っていないような皮膚科では扱っていないことがほとんどです。
個人輸入、通信販売でも購入できる?
トレチノインは、個人輸入している通信販売サイトから購入することもできます。「スティーバA」、「レチンA」などの製品が有名です。すべて自己責任で行って下さい。
トレチノインとディフェリンゲルの違いは?
トレチノインと似た働きをもつニキビ治療薬にディフェリンゲル(成分名:アダパレン)という保険適応の塗り薬があります。
ディフェリンゲルは、トレチノインと同じように皮膚内のレチノイン酸受容体に結合して様々な効能をもたらすのですが、ディフェリンゲルの場合は、トレチノインと違ってごく一部のレチノイン酸受容体(RARγ)に選択的に結合するため、効能には若干の違いがあります。
ディフェリンゲルはターンオーバーを抑制する
トレチノインは角質を剥がしながらターンオーバーを促進させる働きがあるのに対して、ディフェリンゲルの場合はターンオーバーを抑制することで皮膚が厚くなる現象を抑えます。
その結果、毛穴が塞がりにくくなり、それによってにきびを予防、改善します。また、トレチノインほどではありませんが、若干のピーリング作用もあります。ディフェリンゲルは、トレチノインのように激しい反応は起こりにくく、副作用は限定的です。
トレチノインは使われることが少なくなった
ディフェリンゲルの登場によって、ニキビ治療にトレチノインが使われることが少なくなりました。トレチノインの使用中は、赤み、ヒリヒリ感、皮膚が剥けるなどの強い反応が現れるため、使い方が難しいことがあるためです。
ただし、トレチノインはディフェリンゲルよりも即効性があり、はっきりとした効果を得られやすい傾向があります。
ディフェリンの開発元であるガルデルマ社によると、トレチノインとディフェリンゲルは同じ濃度であればディフェリンの方が効果があるとしていますが、ディフェリンゲルは効果が現れるまで時間がかかるデメリットがあります。
また、ディフェリンゲルは、炎症が強いニキビには適応しない欠点があります。ディフェリンは主に白ニキビや黒ニキビ、炎症の弱い赤ニキビに有効です。
一方、トレチノインは即効性があり、そして炎症の強いニキビに対しても早い効果が期待できます。またターンオーバーを促進するため、の悪化も軽減することができます。
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