皮膚科で処方されるニキビ治療薬に「ダラシンTゲル1%」という塗り薬があります。
このお薬は優れた抗菌効果によってニキビの原因菌を減少させ、ニキビの炎症をより早く治す効果がある外用薬です。
また、ニキビの他にも細菌が原因となる皮膚疾患にも効果を発揮します。
ここでは、ダラシンTゲルの効果と副作用の問題を解説していきます。
効果
ダラシンTゲルとは、主成分がクリンダマイシンというリンコマイシン系抗生物質のニキビ外用薬です。
佐藤製薬から販売されている保険適用のお薬で、医師の処方箋のもとで購入できます。市販薬としては販売されていません。
主成分のクリンダマイシンは細菌のタンパク質の合成を阻害することによって抗菌作用を示し、細菌の増殖を抑えます。
細菌が原因となる皮膚疾患に有効で、ニキビを中心に毛嚢炎、おできなどの炎症が強い症状に効果を発揮します。一方で真菌(カビ)やウイルスなどには効きません。
ニキビ改善率は?
画像はダラシンTゲルのニキビ改善率を示したもの。
ニキビ患者さんに対してダラシンTゲル(クリンダマイシン)を使用し、12週間後の炎症性ニキビの改善率を調べた臨床試験ですが、約53%の人がニキビが減ったという結果が報告されています。
比較として、同じニキビ治療薬であるアクアチムクリーム(ナジフロキサシン)の場合は53.59%のにきび減少率、ゼビアックスローションは54.77%のニキビ改善率でした。
ダラシンTゲルが登場した時は「アクアチムよりも効果が高い」といわれたりしましたが、実際に使ってみれば他の抗生物質の治療薬とそれほど大きな違いはないです。
いずれにしても、ダラシンTゲルを使えば何もしない時よりも早い効果が得られるのは間違いありません。
なお、この改善率の結果は、それぞれの治療薬を直接比較したものではないので、単純に効果を比べるのは違うのかもしれませんが、一つの目安にして下さい。
ベピオゲルと比べると効果は劣る
皮膚科ではベピオゲルという過酸化ベンゾイルを主成分とした殺菌薬がよく処方されるようになっています。そしてその薬はダラシンTゲルのような「抗生物質」というジャンルのお薬ではありません。
そのベピオゲルの炎症ニキビ改善率(72.73%)と比べるとダラシンTゲルの効果は劣ります。そして、ベピオゲルは効果が高いですがそれだけ副作用のリスクもあります。
なお、過酸化ベンゾイルを主成分とした処方薬は、ベピオゲルの他に、デュアック配合ゲル、エピデュオゲルなどがあります。どれも刺激性が強いので肌が弱い人は注意しないといけません。
効果が現れるまでの期間
画像は炎症ニキビに対してダラシンTゲルを使った4週間後の肌の状態です。ほぼ赤ニキビが消えています。
この薬を使えば、おおむね1~2週間ほどで全体的に腫れたニキビが減ってきたと感じることができるはずです。
ニキビの初期段階で使えば翌日から効果を実感できることも多いです。夜塗って朝起きたらほとんどなくなってたという具合です。
一方で、薬が効いているのかわからないこともあります。
例えば2週間使い続けてあまり変化がみられない場合は、細菌が抵抗性をもっている可能性があります。その場合は皮膚科を受診して違う薬に変えてもらいましょう。
炎症が強い化膿ニキビに使用する
ダラシンTゲルのような抗生物質は、一般に腫れが進行した赤ニキビ、化膿したニキビなどに対して使用されます。また、背中や胸、デコルテ、腕、お尻などのニキビに対しても効果があります。(ただし、ニキビではない可能性もあります)。
ダラシンTゲルは副作用や、薬が効きづらくなる薬剤耐性菌の問題もあるため、白ニキビや黒ニキビといった炎症レベルの低い症状には処方されません。
白ニキビなどの小さいニキビには、オロナインやクレアラシルなどの一般的な市販薬で十分です。また、皮膚科では軽い症状にはベピオゲルやディフェリンゲル、イオウカンフルローションなどが処方されます。
そして、ニキビ以外の皮膚病では、化膿した毛嚢炎やおでき、とびひなどにも適応します。
ダラシンTゲルのような抗生物質は細菌には効果がありますが、マラセチア毛包炎やカンジダ皮膚炎などのカビ(真菌)が原因となる症状や、ヘルペス症や帯状疱疹などのウイルスが原因となる皮膚病には効果がありません。
ニキビ跡を治す効果はない
ダラシンTゲルには炎症したニキビには効果がありますが、ニキビ跡の赤みや色素沈着には効果がありません。
また、クレーターやケロイドなどにも効果は期待できません。ニキビが炎症してるときにだけ使って下さい。
悪化することもある
ダラシンTゲルを使ってから、かえってニキビが増えたり、悪化したように感じる人もいます。
その原因は、もともと薬が効きにくいことや、副作用で赤みやかゆみが現れて炎症が悪化した場合などに起こるようです。わりと副作用が現れやすいお薬ですので注意しなければいけません。
使い方
ダラシンTゲルの使い方は、1日2回朝と夜、洗顔した後に化粧水などで肌を整えてから使います。ニキビに対してはみ出さないように塗りましょう。
ニキビがないような部分など広範囲に塗ったりしてはいけません。また、使用後は紫外線対策をして下さい。透明の薬なので、使った後も目立つようなことはありません。
そして、炎症が治るまで毎日使い続け、炎症がしっかりと治まってから使用を終了しましょう。使ったり使わなかったりするような中途半端な使用では薬が効きにくくなることがあります。
ダラシンTゲルの使用期間は、ニキビ治療の場合は少し長くなることがありますが、1か月くらいが目安です。
注意点
ダラシンTゲルに対してアレルギーを起こす可能性があります。薬でかぶれた経験がある人はお医者さんに伝えましょう。アトピーなどのアレルギー体質の人はダラシンTゲルは適していません。
保管方法
ダラシンTゲルは、冷暗所の保管が原則です。日光が当たるところや温度変化が起きやすい場所は避けましょう。特に冷蔵庫に保存する必要はありませんが、別に冷蔵庫に保存してもかまいません。
ダラシンTゲルを処方してもらうには?
ダラシンTゲルは、医師の処方箋が必要です。皮膚科などで処方箋を出してもらって購入する必要があります。保険適応です。
皮膚科医によってはダラシンTゲルよりも、ベピオゲルやディフェリンゲル、デュアック配合ゲルなどの違うニキビ治療薬をすすめられることがあるかもしれません。
特にベピオゲルは、薬が効かなくなるといった現象がなく、使い勝手が良いのでニキビ治療に良く処方されています。
そして、ニキビが化膿して重症化した場合や、たくさんの炎症ニキビができた場合などは、ダラシンTゲルとともに抗生物質の内服治療がすすめられることがあるかもしれません。
内服薬は、ミノマイシン(一般名はミノサイクリン)やルリッド(一般名はロキシスロマイシン)、ファロム(一般名はファロペネム)などがよく使用されます。
顔のニキビだけではなく、背中ニキビが多く発生した場合でも抗生物質の内服治療で良い効果が得られることが多いです。
薬の形状
ダラシンTゲルのほかに、ローションタイプの「ダラシンTローション1%」の2種類があります。脂性肌にはローションタイプが適しているとされますが、ゲルタイプでも油分を含まないため、サラっとしていてオイリー肌でも使いやすいと思います。
皮膚科では一般にゲルタイプのダラシンTゲル1%が処方されることが多いです。また、クリンダマイシンゲルというダラシンTゲルのジェネリックが処方されることもあると思います。
価格(薬価)
ダラシンTゲルの薬価は1gあたり約38円で、製品一つ10gの価格は380円くらいです。その価格から保険適応となります。
添加物の効能や役割
以下はダラシンTゲルに含まれる添加物とその性質です。
- アラントイン・・・消炎効果や細胞を活性化する働きがある成分で、ニキビの治りをよくします。ニキビ肌荒れ予防の化粧品にもよく使用されます。
- カルボキシビニルポリマー・・・製品をゲル状にする成分です。
- パラオキシ安息香酸メチル・・・防腐剤です。一般にパラベンと呼ばれ、市販化粧品にも多用されます。
- プロピレングリコール(PG)・・・保湿作用や溶解作用がある成分です。若干の防腐作用もあります。
- マクロゴール400・・・基剤となる成分です。保湿効果もあります。
- pH調節剤・・・pH値を安定させて製品を安定的に保ちます。
ダラシンTゲルには、油分(油脂)が含まれていません。脂性肌に対して使っても毛穴をつまらせてしまうようなことはありません。
ダラシンTゲルの副作用
ダラシンTゲルを販売している佐藤製薬による臨床試験によると、308例中25例(8.11%)の割合でなんらかの副作用が現れたという報告があります。
主な副作用は以下の通り。
- 皮膚のかゆみが5.84%
- 赤みが1.62%
抗生物質としては副作用の発生率は高いほうです。
参考:http://www.sato-seiyaku.co.jp/newsrelease/2006/060301/
なお、他のニキビの抗菌薬のアクアチムやゼビアックスの副作用の発生率は1%程度です。なので肌に自信がない人やアレルギー体質の人はダラシンよりもアクアチムなどを使ったほうがいいです。
かゆみの発現は比較的多い
ダラシンTゲルの使用による副作用で多いのが皮膚のかゆみです。臨床試験では約5.8%の人にかゆみが現れたと報告されています。
かゆみが現れる場合はアレルギー性接触皮膚炎(一般にかぶれといわれます)を起こしている可能性があります。
ニキビにかゆみが現れるのは、ヒスタミンという炎症を悪化させる生理活性物質が過剰に発生するためですが、ヒスタミンが増えるとニキビがひどくなって色素沈着や赤み、クレーターなども悪化してしまうことがあります。
体質によっては、ダラシンTゲルによるアレルギーでにきび跡がケロイドとなって盛り上がった痕ができるケースも。
このお薬を使った後に一時的ではないかゆみが続いたら、洗い流して使用を中止し、アイスパックなどで肌を冷やして炎症物質を抑えて下さい。その対処をするだけでニキビ跡の悪化を予防できます。
赤みやヒリヒリ感
ダラシンTゲルを使った後の副作用で、赤みが約1.6%の確率で現れると報告されています。特に肌が薄くて敏感肌の人は刺激を受けて肌が赤くなりやすいです。
また、乾燥やツッパリ感などを感じる人もいます。軽い副作用で一時的なものであれば問題ありませんが、自分には刺激感が強いと思ったら必ず使用を中止しましょう。
肌が弱い人は、抗菌薬ではアクアチムクリームやゼビアックスローションなどの塗り薬が良いかもしれません。それらも皮膚科で処方してもらえるお薬で、刺激性が低いことから敏感肌でも使いやすい利点があります。
抗生物質の耐性菌のリスク
ダラシンTゲルのような抗生物質には薬剤耐性菌を生じる問題があります。耐性菌とは、薬剤投与を受けても生存できるように抵抗性を獲得した細菌をいいます。
耐性菌が発現することで抗生物質が効かなくなり、もし何らかの皮膚感染症が発生してもお薬によって治すことが難しくなることがあるのです。
ダラシンTゲルは塗り薬であるため、内服薬のような全身へのリスクはなく、局所的な問題に限られますが、安易にダラダラと使い続けてよいものではないことを覚えておいて下さい。
耐性菌の予防法は中途半端に使わないこと
ダラシンTゲルによる耐性菌は、中途半端な使い方になるほど、そのリスクが高くなります。
例えば、ダラシンTゲルを使っていて、ニキビの腫れがまだ治っていないのに独自判断で使用中断すると、耐性菌が発現しやすくなります。
そのため、ニキビにダラシンTゲルを使う場合は、使用方法を守って炎症をしっかりと治してから治療を終了するのが理想です。
また、長期使用になるほど細菌に耐性ができて薬が効きにくくなる可能性が高くなります。
抗生物質を使う場合は、短期間で一気に細菌を抑えることが耐性菌を予防するポイントです。
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