にきびが発生する原因の一つに、ニキビダニ(顔ダニ)が関係しているのではないかと言われることがあります。
一般にニキビはアクネ菌や黄色ブドウ球菌などが原因となって発生しますが、ニキビが急に多発した場合や、化膿するようなニキビが繰り返し引き起こされる場合、その原因がニキビダニによるものではないかと悩む人は少なくないようです。
今回はニキビダニの性質や、実際にニキビに影響をもたらすかどうかを解説していきます。
ニキビダニ(顔ダニ)とは?
ニキビダニは、主に皮膚の様々な分泌腺(特に皮脂腺)に生息する寄生虫をいいます。画像はニキビダニです。ダニ類の一種で、細菌や真菌(カビ)とは違います。ウイルスでもないです。
ニキビダニは主に毛包に寄生することから「毛包虫」と呼ばれたり、皮脂腺が多い顔に生息することが多いため「顔ダニ」と呼ばれたりします。
ニキビダニは、たくさんの種類が存在していると考えられていますが、どんな種類においても主に皮脂腺やその周囲に生息し、表皮内細胞や皮脂腺細胞、皮脂や汗などを栄養に寄生しているとされます。
大きさは、およそ体長約200~300μm(マイクロメートル)程度で、肉眼では確認できるものではありません。
ニキビダニの寿命
ニキビダニの寿命は14日間(2週間)程度だとされ、卵の期間が60時間、幼虫の期間が36時間、そして第1若虫の72時間、第2若虫の60時間をへて、成虫の期間が120時間となっています。計348時間(約2週間)
成虫となるまで時間がかかり、通常は短期間で急激な増殖性はありません。
ほぼずべての人の皮膚に存在する
ニキビダニは、人間の皮膚にほぼ100%寄生していると言われています。
産まれて間もない赤ちゃんの皮膚には存在していないとされますが、親が赤ちゃんの皮膚に触れたりすることで感染すると考えられています。
自然界には微生物が無数に存在しますが、ニキビダニという微生物は、単に人間と身近な環境に存在していて、さらに人間の皮膚内で生息しやすい性質をもったダニであると考えられます。
自然界で無数にいる微生物において、人間の皮膚環境で生息しやすい微生物が存在しても不思議ではないです。
人間の皮膚にとってありふれた微生物であり、通常は病原性がないため積極的に取り除くようなスキンケアは必要ないとされます。
なお、人類だけではなく他の動物などにおいても皮膚にはニキビダニのような寄生虫が存在していると考えられています。
ニキビダニはニキビの原因になる?
ニキビダニ(顔ダニ)が、にきびの原因になると言われることがありますが、ニキビの内部からニキビダニが多く検出されることもある一方で、そうではないケースもあります。
ニキビや肌荒れの経験がない人の皮膚においてもニキビダニが多く検出されることがあることから、ニキビダニが主な原因となってニキビが発生してしまうとは考えられていません。
通常、ニキビダニは免疫によってコントロールされていて、極端に増加することはないため、肌トラブルの原因となることはないとされています。
増殖性も低いので腫れを起こしにくい
一般的なニキビは、アクネ菌や黄色ブドウ球菌という皮膚常在細菌が毛穴の中で極端に増加する事で発生します。
それらは嫌気性菌という酸素を嫌う性質があり、毛穴がふさがってしまうと一気に増加し、それによって1~2日ほどでニキビが急激に赤く腫れてしまうのです。
一方、ニキビダニはアクネ菌や黄色ブドウ球菌のような増殖性はなく、卵から成虫になるまで1週間以上かかります。通常はアクネ菌や黄色ブドウ球菌のように急激に増殖しないので、免疫反応を起こしにくい、つまり大きなニキビのような炎症反応へとつながりにくいのです。
顔ダニは必要不可欠な存在?
ニキビダニは、餌(エサ)として毛穴をふさぐ毛包上皮細胞を食べる性質や、皮脂を分泌する皮脂腺細胞を食べる性質があるとされ、ニキビの原因どころか、逆ににきびができにくい肌環境に導いているという考えもあります。
いずれにしてもニキビダニは極端に増加しなければ問題になるような微生物ではないとされます。
実際にニキビの原因になることもある?
顔ダニがニキビの原因だとは考えられていませんが、スキンケア不足によってニキビダニが極端に増えることでニキビや皮膚炎を起こすことも考えられます。
顔ダニといっても増え過ぎれば皮膚にとって異物としての存在が大きくなり、その結果、免疫反応を起こして炎症反応へとつながる可能性があります。その炎症はニキビのような腫れ方ではなく、湿疹のようなわずかな炎症の場合もあります。
死滅させることはできない
通常はニキビのきっかけとはならないニキビダニですが、その存在がどんなに嫌でも顔から完全に死滅させることはできません。
イオウカンフルローションというお薬が効くようですが、特に問題とはならないのでお薬を使う必要はないです。
ニキビダニが異常増殖する原因とは?
ニキビダニは、どんな人の皮膚にも存在しているといわれ、通常は免疫によってコントロールされていますが、場合によっては異常に増加してニキビや湿疹(皮膚炎)を起こしてしまう可能性があるとされています。ニキビダニが異常増殖してしまう要因は以下のようなものがあります。
ステロイド外用薬の使用で顔ダニが増殖する?
ステロイドの使用によってニキビダニが増加し、それによってニキビや湿疹が発生してしまう可能性があるといわれています。
ステロイド外用薬とは、皮膚の炎症を抑えるために使用される塗り薬です。消炎作用や免疫抑制作用があり、皮膚の炎症・湿疹を抑える働きがあります。主にアトピー性皮膚炎などの治療に用いられことで有名ですね。
このステロイド外用薬の使用を続けることで、皮膚の免疫が下がり続け、それまでコントロールされていたニキビダニのような微生物が一気に増殖してしまうこともあると考えられています。
特に顔面は薬剤の吸収が良く、ステロイド外用薬の副作用が発生しやすい部分です。そして顔は皮脂が多いのでニキビダニが多い部分とされます。
そのため、顔に対して強いステロイド外用薬を使ったり、それを長期にわたって使用するとニキビダニが増えて肌トラブルを起こす可能性があります。
ただし、ステロイドの副作用でニキビが発生するのはよくある現象の一つであり、それが一般的な原因菌であるアクネ菌によって発生しているのか、ニキビダニによって発生するのかは判断が難しいところです。
免疫不全によってニキビダニが増える?
病気の影響で免疫不全を起こすと本来は免疫によってコントロールされていたニキビダニが異常増殖してしまう可能性があるといわれています。
免疫不全が起こる病気は、糖尿病、AIDS(エイズ)などがあります。ただし、それらの病気に罹ったからといって必ずニキビダニが増加して皮膚疾患を起こしてしまうというわけではありません。
ストレスも増加原因?
はっきりとはわかりませんが、ストレスも肌の免疫機能を乱すので、ニキビダニが悪さをしやすい環境になってしまう可能性も否定できません。
なお、ストレスは皮脂を増加させてニキビ悪化要因になります。また、肌の免疫が下がりますので毛嚢炎(もうのうえん)といわれる皮膚感染症にもかかりやすくなります。(毛嚢炎はカミソリや毛抜きを使ったムダ毛処理後に発生しやすいブツブツをいいます)。
スキンケア不足
顔を全く洗わない人や、水洗顔だけといったスキンケアを続けている人は、ニキビダニが原因となって皮膚炎を起こしてしまう可能性があります。
化粧品を使った保湿のしすぎ
化粧水やクリームなどに配合される成分によってはニキビダニの餌(えさ)になってしまう可能性があります。顔ダニは皮脂を栄養源としますが、同時に化粧品の油脂成分がダニを増加させる原因になっている可能性があります。
また、保湿しすぎると肌がふやけてしまってターンオーバーが乱れ、逆にニキビを発生させてしまう可能性があります。保湿スキンケアはシンプルなものにしたほうが良さそうです。
メイクが残っている
女性の場合、お化粧をきちんと落とさないとニキビダニが増えてしまう可能性もあります。ファンデーションにニキビダニが好む成分が含まれていたりすれば、増加する要因になります。
お化粧が不十分だと、ニキビだけではなく、毛穴の黒ずみやシミの原因になったりすることもあるので、きちんとクレンジングして落として下さい。
まとめ
いずれにしても、ニキビダニや顔ダニといわれる微生物はどんな人にも存在するものなので、あまり気にしないほうがいいです。神経質になってゴシゴシ洗っていたりすると、そっちのほうがニキビの悪化へとつながってしまいます。
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