ニキビが悪化すると跡が凹んでしまうことがあります。
その状態をニキビ跡のクレーターといったりしますが、残念ながら基本的に自然に改善することはありません。
自然治癒しないため、治したい場合は特別な治療を受ける必要がありますが、その方法の一つにダーマローラーという治療法があります。
今回は、ダーマローラーのニキビ跡クレーターへの効果と、理想的な針の長さや使い方などについて詳しく解説していきます。
ダーマローラーとは?
ダーマローラーとは、100~200本ほどの微細な針がついたローラーを使った若返り治療のこと。
針が付いたローラーを肌の上で転がして針で穴をあけ、意図的に肌に傷を作り、その傷を回復させる過程で発生する細胞増殖因子によって真皮層の再構築を促します。
主に、しわや小じわの改善や、開いた毛穴治療、ニキビ跡のクレーター治療、全体的な肌質を良くするためなどに使用されます。
画像のように出血を伴う痛々しい治療ですが、高い効果が期待できます。
ダーマローラーのニキビ跡を治す効果
ダーマローラーのニキビ跡への効果は以下のような仕組みでもたらされます。
1ダーマローラーを転がして皮膚に穴をあけ、その穴を修復するために成長因子(細胞増殖因子)が発生します。
2細胞増殖因子がたくさん発生することで、コラーゲンの分解や合成を担う線維芽細胞という細胞が活性化します。通常は働きが鈍い線維芽細胞が活発に働くことがポイントです。
3活発になった線維芽細胞がニキビ跡の凹みの原因となる萎縮したコラーゲンを分解し、新たにコラーゲンをたくさん作り出して皮膚を入れ替えます。
しっかりと行えば、一度の治療で10~15%くらいの皮膚の入れ替えが実現できるとされます。(皮膚の新生)
また、コラーゲンの増加においても、平均で2倍から局所的には最大10倍まで増えるといわれています。
4治療を繰り返すことで、皮膚の入れ替えによる瘢痕部の修復と、コラーゲン増加の2つの効果によってニキビ跡の凹みをなだらかに導くことができます。
凹みが再発しにくくなるメリットがある
ニキビ跡のクレーターは、厳密にはコラーゲンが減って発生するのではなく、本来は柔軟であるコラーゲンが、ニキビの炎症によって硬く密集して瘢痕化することで発生します。
瘢痕が改善されていなければ、単にコラーゲンを増やして改善に向かっても、加齢と共にコラーゲンが少なくなると、再び凹みも目立つようになります。
そこで、ダーマローラーのようなコラーゲンの増加と共に皮膚を入れ替える(再構築)させる治療がニキビ跡の凹みに非常に効果的なのです。
治療がうまくいけば永久的な効果を得られ、加齢によって再び皮膚が凹んできたという現象が起こりにくくなります。再発しにくくなるのがメリットです。
まったく効果なしと感じる人も
画期的な治療にも思えるダーマローラーですが、効果には個人差があります。効果ないと感じる人も少なくないです。
効果が出にくいのは以下のような場合。
- ニキビ跡の凹みをもたらす成熟瘢痕が強い場合
- クレーターが深い層にまで及んでいる場合(アイスピックタイプ)
- 肌質的に硬い(真皮が厚い)。肌に柔らかさがない。
ニキビ跡のクレーターが浅い場合は完全に平らになることも多いのですが、やはり凹みが深い場合は完全に平らにすることはとても難しいです。
そのため、完全に治すというよりも、凹みを和らげるという目的で行って下さい。のめり込むように何度も行ってしまうと色素沈着を起こし、かえって凹みが目立ってしまうことも考えられます。
フラクショナルレーザーとの違い
フラクショナルレーザーは、レーザーで意図的に皮膚にダメージを与え、皮膚の若返りを促す治療です。ニキビ跡の治療によく使用されます。
ダーマローラーと作用原理は似ていますが、フラクショナルレーザーの欠点は照射時に熱が発生して余計なダメージが加わってしまうことです。
その結果、色素沈着を起こしたり、肌質によっては、まれにケロイドを起こすこともあります。
ダーマローラーもケロイドや色素沈着のリスクはありますが、レーザーのように熱が発生するものではないため余計なダメージを受けることなく行えます。
適応症状
ダーマローラーは、ニキビ跡のクレーターだけではなく、開いた毛穴治療や、しわや小じわなどの全体的な美肌効果を目的として使用されることが多いです。
ローラーなので広範囲の肌の悩みに使用され、にきび跡を含む総合的なエイジングケア目的で使用するのが理想です。
また、針の長さが短い場合は、肌のくすみやシミ治療などにも使用されたりします。(シミの種類にもよります)。
他にも、毛孔性苔癬(もうこうせいたいせん)や、外傷跡、注射跡、リストカット跡(状態による)、肥厚性瘢痕(進行性のないケロイドのこと)、妊娠腺、肉割れ、薄毛治療などにもダーマローラーは適応します。
器具を購入すれば自分で行うこともできる
ダーマローラーは美容皮膚科で行われていますが、通販などで器具を揃えれば自分で行うこともできます。
自分で使う場合は以下の道具を購入して下さい。
- ダーマローラー
- 麻酔クリーム
- (できれば)成長因子を含む美容液
ダーマローラーの器具は通販などでも販売されています。
【Amazon】ダーマローラー
そして、針が長いものは痛みが強いため基本的に麻酔クリームが必要です。麻酔クリームは個人輸入通販サイトなどで購入できます。「エムラクリーム」という製品が有名です。
また、部分的なニキビ跡の凹みであれば、ダーマローラーではなく、ダーマペンなどのスタンプタイプ(ダーマスタンプ)が適しています。
器具は何度も使っていい?
ダーマローラーの器具自体は、基本的に常に新しいものを使うのが理想ですが、使った後にエタノールなどでしっかりと消毒し、清潔にしておけば何度も使うことができます。
使う前に必ず針が曲がっていないことを確認して使って下さい。ただし、自分以外の人が使ったものを使用するのは絶対に止めて下さい。
ダーマローラーの理想的な針の長さ
ダーマローラーによるニキビ跡治療は、使用する針の長さによって効果が大きく違ってきます。
針には0.2mmくらいから2.5ミリくらいまでの針の長さがありますが、陥没したニキビ跡に対して使う場合は、最低でも1ミリ以上の針の長さが必要です。
ダーマローラーの針が長ければ出血がひどくなり、ダウンタイムも長くなる欠点がありますが、ニキビ跡が深いほど皮膚の深い部分まで瘢痕化しているので、ある程度の針の長さがなければ凹みを改善する効果は期待できません。
それでは、ニキビ跡の度合いによるダーマローラーの理想的な針の長さをご紹介してきます。
1.5ミリ、2ミリ、2.5ミリの針
ダーマローラーをニキビ跡に使う場合、多くはクレーターが発生しやすい頬などに使用することが多いと思いますが、頬は2~3ミリほどの真皮の厚みがあるので1.5ミリから2ミリくらいの針の長さが必要になります。
特にニキビ跡が深い場合、1.5ミリ以上の針の長さがなければ劇的な改善は難しいといえます。
1.5ミリや2ミリの針は麻酔クリームなどで表面麻酔をしていても痛みがとても強く、治療による出血もひどくなるデメリットがあります。また、針の長さを見て恐怖を感じる人も多いです。そして、針が長いため目元付近への使用や、やりすぎには注意しなければいけません。
1.0ミリの針
ダーマローラーの針の長さが1ミリの場合は、やや浅めのニキビ跡の凹みや軽度の毛穴開きに効果的です。また、浅いシワや小じわ治療にも効果があります。
始めて行う場合は、1ミリ針くらいから始めて効果や出血の具合、ダウンタイムなどを確認すると良いと思います。
1ミリの針でも出血が起こりますが、痛みでいえば麻酔をしていれば我慢できると思います。針の長さを見ても、2ミリの針よりは恐怖心を感じることはないと思います。なお、1ミリの針は麻酔なしで行うのは難しいです。
0.5ミリ未満の針
ダーマローラーには0.5ミリや、0.3ミリ、0.2ミリといった短い針もあります。それらの針の長さは、ニキビ跡の原因である真皮のコラーゲン層には届かないため、クレーターにはほとんど効果はないです。毛穴治療においても効果は低いです。
0.5ミリ以下のような針が短いダーマローラーは、肌のキメを改善したい場合、乾燥による小じわが気になる場合、肌のくすみやモヤモヤしたシミが気になる場合などの表面的な肌の悩みに効果的なレベルといえます。
そして、0.2~0.5ミリ程度の針の長さは、痛みに強い人は麻酔なしでも行うことができると思います。
筆者も何度か0.2ミリと0.5ミリを麻酔無しで使ったことがありますが、0.2ミリのダーマローラーの場合は麻酔なしでゴリゴリ転がしても我慢できるレベルでした。0.2ミリでは出血もごくわずかです。
一方、0.5ミリの場合は強くゴリゴリしなければ、なんとか大丈夫でした。でも本気でゴリゴリ転がすとかなり痛いです。出血は結構あります。
痛みの感じ方には個人差があると思いますが目安にして下さい。
ダーマローラーの使い方と治療の流れ
ダーマローラーの使い方は、以下のような手順で行います。自分で始めて行う場合はやりすぎに注意して下さい。
Step1洗顔をして肌の汚れを落とします。また、使用する器具も清潔にしておいて下さい。
Step2治療前には、麻酔クリームなどで表面麻酔をかけます。麻酔時間は30~40分ほどです。
Step3その後、麻酔を落として肌を冷やします。冷やすことで痛みや炎症が和らぎます。
Step4ダーマローラーの針の品質に異常がないか確認し、ニキビ跡クレーター部分にローラーを転がして肌に穴をあけていきます。目元に注意して行います。
針が長ければ、出血がひどくなりますし、麻酔をしていても痛みが強いです。我慢できない場合は力を抜いたりして加減して下さい。
Step6皮膚に穴をあけると美容成分の吸収がよくなるため、成長因子を含む美容液やプラセンタエキスを塗布すると効果的です。出血をふき取った後に塗って下さい。
Step7施術後は出血をふき取ってアイスパックなどで皮膚を冷やし、ほてりを抑えてクールダウンさせます。最後は化粧水などで肌を整えて終了です。
なお、日焼け止めを塗ったり、お化粧したりしないほうがいいです。肌の負担になるためです。
クリニックで行われる場合においても以上のような手順で行われます。
施術動画(YouTube)
施術は動画を見たほうがわかりやすいと思います。ダーマローラーという器具を最初に作ったドイツのメーカーの映像です。
まずは麻酔クリームを塗る。針が長ければ麻酔は絶対必要です。じゃないと痛みに耐えられません。
次にダーマローラーをゴリゴリ転がします。血がたくさんでるくらいまでやらないと、ニキビ跡の凹みや深いしわには効果が得られせん。
血をふき取った後に成長因子を含んだ美容液パック。これでコラーゲンを作る線維芽細胞をさらに活性化できます。
以下は治療後12~24時間後の写真。赤みは少ないですが、これは個人差があります。肌が弱い人や色白の人ほど赤みがでやすいです。
動画を見た感じでは1ミリほどの短い針が使われていますが、ニキビ跡の改善には1.5~2ミリくらいは必要です。なので、実際はもっと出血したり、術後に赤くなったりします。
ニードル(針)セラピーを何度も繰り返してニキビ跡が大きく改善した写真。
参考:https://www.youtube.com/watch?v=4QlbFPUS_0o
アフターケアと注意点
ダーマローラー後は、とても痛々しい状態になり、肌が非常にデリケートになります。治療後のアフターケアとして、肌に負担をかける行為は避けて下さい。お風呂やマッサージなどの顔を温める行為は当日はしないで下さい。
そして、施術後は顔が真っ赤になりますが、その赤みは個人差がありますが、本格的に行えば最低でも3~5日間くらいは続きます。肌が弱い人は赤みが長く残ってしまうことがあり、その赤みがそのまま色素沈着につながってしまうこともあります。
また、画像のように治療から数日後にカサブタができるようになりますが、それは自然にはがれるのを待ち、絶対に無理やり剥がさないで下さい。
カサブタは5日~1週間くらいで自然に剥がれていきます。肌に負担をかけないようにカサブタが取れるまでお化粧(メイク)は控えたほうが良いと思います。
そして、治療前も治療後も、共に紫外線対策や保湿を心がけて下さい。肌の再生力を高めるには紫外線ダメージを抑え、肌の水分量を上げる必要があります。
ダーマローラーは、治療後のダウンタイムが長いため、生活や仕事などに余裕がある時に行って下さい。体調不良時に行うと治りが悪くなるため、体調を整えてから行って下さい。
治療時間の目安
ダーマローラーの治療時間は、ローリングそのものは顔全体で10分ほどが目安です。麻酔やクールダウンを含めると1時間以上はかかると思って下さい。
治療回数の目安
ダーマローラーを使ってニキビ跡の凹みを改善したい場合、治療回数は3~6ヶ月くらいおきに複数回繰り返し行う必要があります。
コラーゲンを作り出す線維芽細胞の働きは緩やかであるため、一度の治療で皮膚が再構築されるには数か月の期間がかかります。
多くの場合、凹んだニキビ跡は1回だけの治療では明らかな効果を得るのは難しいです。
浅い凹みの場合は2~3回くらいで納得できるくらいにクレーターが改善することもありますが、深い凹みの場合は5回以上は必要です。
ダーマローラーによってニキビ跡の凹みを治したい場合は、年単位の治療期間がかかることを覚えておいて下さい。
治療料金の目安
ダーマローラーを病院で受ける場合の料金は、2~4万円くらいが目安です。成長因子を含む美容液を使用する場合などは、さらに料金がプラスされます。この治療は保険は効きません。自由診療です。
受けられない人
ダーマローラーは、妊娠中の人は行うことができません。他にも、皮膚感染症や糖尿病などがある場合など、持病によって治療が受けられないこともあります。また、日焼けしている人や、仕事などで強い紫外線を浴びるような人はダーマローラーは適していません。
ダーマローラーでニキビ跡が悪化、失敗する可能性もある
ダーマローラーによってかえってニキビ跡が悪化してしまうことがあります。失敗例の一つが色素沈着です。
この治療は表皮の損傷はとても軽度であるため、上手に行えば色素沈着は起こらないのですが、やはりダメージがある治療なのでリスクはゼロではないです。
ダーマローラーの失敗原因や問題点は以下の通り。
- ローリングの時に針が皮膚の中を動くことでダメージが強くなってしまう。(赤みや内出血がひどくなる人はダーマローラーよりもダーマペンのような垂直に針を刺す治療が適しています)。
- 誤って針で表皮を傷つけてしまうことで色素沈着を起こす可能性がある。
- 肌が弱い。内出血を起こしやすい。そういった肌質の人はダーマローラーで色素沈着を起こすことが多いです。
特に内出血がひどくなると、そのままシミになってしまう可能性が高くなります。内出血は毛細血管の損傷なので、その修復が遅れると色素沈着を起こしてしまうのです。
ニキビ跡の凹んだ部分が色素沈着を起こして黒ずんだり、炎症で赤みが残ってしまったりすると、それが影となって凹みがより目立ってしまうことがあるので注意して下さい。
特に一部分に対して短期間で集中的にやりすぎると色素沈着を起こしやすくなります。
若い時期であれば色素沈着もすぐに改善しますが、ターンオーバーが低下した加齢肌の場合は色素沈着が点状に残ってしまう可能性が高くなります。30代以降で自分で行う場合はやりすぎに注意して下さい。
赤みがそのまま残るケース
肌が弱い人、回復力が弱い人は、ダーマローラー後にドット状の赤みが残ったりします。
また、無理やりカサブタを剥がしてしまった場合も、写真のような赤みが残りやすいです。
これは損傷による毛細血管の拡張と増殖によるもので、治療後におきやすい失敗の一つです。
毛細血管の問題なので回復まで月単位の時間がかかります。老化が進行した肌においては自然に治らないこともあるかもしれません。
ケロイドを起こす可能性もある
非常にまれなケースですが、ダーマローラーによってケロイドや肥厚性瘢痕(盛り上がった傷痕)が発生し、かえってニキビ跡が悪化してしまうことがあります。(写真参考)
ニキビ跡のクレーターと共にケロイドによる盛り上がりもできてしまうと、肌のデコボコ感がひどくなってしまいます。また、皮膚の色もまばらになるので肌荒れ感が強くなります。
ケロイドや肥厚性瘢痕は体質によるものが大きいのですが、例えば、転んだ後の傷跡が赤く盛り上がったり、白い傷跡が残ってしまうような人はケロイドになる危険性が高いといえるため、そのような体質の人はダーマローラーをしないほうが良いかもしれません。
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