腫れたニキビが多発した時の治療にフォトダイナミックセラピー(PDT:Photo Dynamic Therapy)という治療法があります。
この治療はニキビの原因菌(アクネ菌)を殺菌し、さらに皮脂を分泌する器官にダメージを与えることで、通常の治療では治りにくいニキビを素早く治していきます。
今回はフォトダイナミックセラピーの実際の効果と副作用、治療の注意点などを解説します。
フォトダイナミックセラピーとは?
フォトダイナミックセラピー(PDT)とは、光に反応する物質(光感受性物質)と、それに反応する特殊な光を利用して、にきび菌の殺菌効果と皮脂腺機能抑制をもたらす治療です。
ニキビの原因菌であるアクネ菌が減少し、さらに皮脂分泌が減少しますので、素早い効果が期待できます。
具体的な効果は以下の通り。
1特殊な光に反応するアミノレブリン酸というアミノ酸を服用、または皮膚に塗布します。(このアミノレブリン酸は人間にも存在しているアミノ酸の一種です。
2アミノレブリン酸は選択的に皮脂腺に集まり、ポルフィリンという物質の合成を促します。(このポルフィリンはアクネ菌などの皮膚常在菌も産生しているものです)。
3ポルフィリンは特定の波長域の光を照射すると不安定な状態となり、結果的に大量の活性酸素を発生させます。
4この時に発生した活性酸素がニキビの原因菌であるアクネ菌を殺菌して、免疫反応を早期にしずめることでニキビの腫れを治します。(アクネ菌は嫌気性菌という酸素を嫌う性質があり、活性酸素によって死滅してしまいます)。
5さらに、大量に発生した活性酸素が皮脂腺にダメージを与えることで皮脂分泌を抑制します。これによってニキビができにくい肌へと導きます。
殺菌効果は確実にある
フォトダイナミックセラピーは活性酸素を発生させてニキビ菌を確実に殺菌します。そしてたいていはニキビは減っていきます。
ただし、効果には個人差があり、あまり効果が見られない人も少なくないです。
ニキビは自然に治っていくものなので、治療によって治っているのか、自然に治っているのかわからないこともあります。
そして、この治療だけでニキビが完治するのではなく、基本的に他の治療と組み合わせる必要があります。
なお、治療後に肌が真っ赤になったり、ほてりが現れたり、腫れたりするので、そういった現象が気になる人は適していません。
皮脂抑制効果は永久的なものではない
フォトダイナミックセラピーは、活性酸素を発生させて皮脂腺にダメージを与える作用があります。
それによって皮脂腺機能が抑制されます。だたし、その効果は一時的なものであり、永久的なものではありません。
2~3週間もすれば、皮脂腺の機能が元に戻り、皮脂分泌が以前のレベルになることが多いです。
より高い効果を求めようとすると、かえって色素沈着を起こしたり、コラーゲン組織が変性して瘢痕化してしまうリスクがあります。
どのような治療においても、皮脂腺だけを破壊するというものは難しいものです。
ニキビが多発した肌に適した治療
フォトダイナミックセラピーは、皮脂分泌が多い肌質で、腫れたニキビが多数できた状態に有効です。
多発したニキビを一気に改善に導くのに適しています。一つ二つくらいのニキビ治療では、この治療は適していません。
施術内容とアフターケア
Step1カウンセリングをして肌状態を診断。この時に光に敏感な人や、服用しているお薬などがあれば必ず医師に告げて下さい。
Step2洗顔やクレンジングにより、肌の汚れを落とします。
Step3アミノレブリン酸を服用して3~4時間待つ。軟膏を使う場合は、塗ってそのまま1~2時間待ちます。
なお、使用後は日光や蛍光灯などの強い光を浴びることはできません。
Step4目を保護して特殊光を照射していきます。20~30分ほどです。照射時にチクチクとした痛みを感じることがありますが我慢できないレベルではありません。
Step5照射後はアイスパックなどで肌をクールダウンさせます。これにより炎症が抑えられます。
Step6最後は保湿をして肌を整えて終了です。
経過と効果
以下の写真はフォトダイナミックセラピーの治療後1日目から1か月後の経過。
1か月後にはとてもきれいな肌になっています。ただ、実際にはここまで上手く治るケースはまれです。
アフターケア
- 治療後から2~3日間は赤みやほてりが現れます。腫れたようになることも。デリケートな状態になっているため、肌に負担をかけるスキンケアには注意して下さい。マッサージや治療部位を温める行為は厳禁です。
- 治療後から24時間ほどは非常に光に過敏な状態になるため、日光に当たらないようにしなければいけません。1週間くらいは紫外線を徹底的に避けて下さい。
- いろいろ日常生活を制限しないといけないので、仕事関係に余裕がある時に行いましょう。
- 皮膚が赤くなったりするのでニキビが悪化したように感じることも多いですが、あまり心配しないほうがいいです。
治療時間の目安
治療時間は、顔全体の照射時間は20~30分ほどです。内服の場合は全体で4~5時間かかります。
治療回数の目安
PDTの治療回数は、まずは1回受けてみて、ニキビが減ったかどうかを確認して下さい。そして、再び治療をする場合は期間をあけなければいけません。
治療料金の目安
フォトダイナミックセラピーの治療料金は、顔全体で1回あたり5万円くらいが目安です。ただし、この治療を行っている病院そのものが少ないです。
副作用や注意点
フォトダイナミックセラピーの副作用は、治療後に赤みやかゆみ、ヒリヒリ感がみられます。2~3日間続きます。
術後にむくんだような腫れが続いたり、予想以上の激しい反応が現れることも。
また、特殊な光のエネルギーや発生した活性酸素によって、治療後数日の間にニキビが悪化してしまうこともよくあります。特に白ニキビの発生で、この現象は珍しくないです。
濃度が高いものは危険
アミノレブリン酸の濃度が高くなるのと比例して、激しい反応が出る可能性があります。
赤みや腫れがひどくなって色素沈着が残ってしまうことも。
フォトダイナミックセラピーは、一般的なニキビ治療とは違う特殊な治療だということを理解しておいて下さい。
内服治療の場合
アミノレブリン酸の内服治療の場合は、吐き気や嘔吐などの副作用が現れることがあります。
また、内服治療の場合は顔だけではなく他の部位への光反応に注意しなければいけません。
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