にきびは塞がった毛穴の内部でアクネ菌が増加することで発生します。(化膿したニキビはアクネ菌だけではなく黄色ブドウ球菌も影響していることがあります)。
増加したアクネ菌を表皮細胞が異物として判断し、炎症性サイトカインを発生させて炎症を引き起こし、その結果ニキビが赤く腫れるようになります。
そして、ニキビが炎症を起こすと様々な生理活性物質が発生します。その炎症物質がニキビの腫れやにきび跡の赤み、色素沈着などを悪化させる要因となります。
今回は、ニキビを悪化させる炎症物質の性質と、それを抑える方法についていろいろ解説してきます。
ニキビ跡を悪化させる炎症物質
プラスミン
毛穴がふさがってアクネ菌が増加し始めると、皮膚が異常を察知し、免疫反応を起こし始めます。そして、血液中に流れているタンパク質である「プラスミノーゲン」が「プラスミン」という物質に変化します。
プラスミンとは、たんぱく質分解酵素の一つで、肌細胞(表皮細胞)を分解して構造にダメージを与え、炎症を大きくしたり肌荒れを起こす原因となります。
そして、このプラスミンがニキビの炎症悪化に関与する様々な生理活性物質の発生を促す原因となります。
プラスミンを抑制するのがトラネキサム酸
なお、このプラスミンという物質を抑制するのがトラネキサム酸です。トラネキサム酸には抗プラスミン作用があり、ニキビが炎症を悪化させるプロセスを抑制する働きがあります。
消炎作用があるので、メラニン色素の生成によるも抑制する働きがあります。(なお、トラネキサム酸は肝斑という女性特有のシミによく使用されたりします)。
また、抗プラスミン作用によって炎症や腫れを悪化させてしまうヒスタミンなどの生理活性物質のを抑制するため、抗アレルギー作用などもあります。
ただし、トラネキサム酸は血液を固まりやすくする働きがあり、使い続けると血行が悪くなって、疲れ目、肩こり、腰痛、だるさなどを感じることがあります。なお、血が固まりやすくなるので血栓症を起こす可能性も問題視されています。
プロスタグランジンは強力な炎症を起こす物質
ニキビの炎症によって発生したプラスミンは、様々な作用をもたらす過程において「プロスタグランジン(PG)」という生理活性物質の発生を促します。
このプロスタグランジンは炎症物質として強力な作用をもち、他にもメラノサイト(メラニン色素を作る細胞)の活性化させてメラニンの合成を促す作用があります。
ニキビ跡の炎症後色素沈着(もやもやしたシミ)が悪化する要因の一つが、プロスタグランジンの働きによるものだと考えられています。
ニキビ跡を悪化させないためには、素早く炎症を抑制してプロスタグランジンに発生を抑える必要があります。
プロスタグランジンを抑制する塗り薬
なお、プロスタグランジンの働きを抑制する成分には、塗り薬ではスタデルムクリーム(軟膏)、ベシカムクリーム(軟膏)などがあります。それらはイブプロフェンピコノールを主成分としたお薬で、プロスタグランジンの合成を阻害する働きがあります。
飲み薬でもプロスタグランジンを抑えることができる
また、飲み薬では風邪薬などにもよく配合されるイブプロフェン(処方薬ではブルフェン)や、ロキソニン(ロキソプロフェン)などがプロスタグランジンを抑える成分です。
それらは、大きなニキビが多発していたり、抗生物質の使用期間を少なくするために消炎薬の飲み薬として処方されることがあります。ただ、処方頻度はあまり多くないです。
メラニン細胞刺激ホルモン(MSH)が促される
ニキビの炎症によって発生したプラスミンは、メラニン細胞刺激ホルモン(MSH)という物質を発生させるプロセスに関与しています。
メラニン細胞刺激ホルモン(MSH)とは、その名の通りメラニン色素の産生を促すホルモンで、肌細胞のDNA損傷を感知してメラニン色素の合成を促すように働きかけます。
「ニキビの炎症」→「プラスミン発生」→「メラニン細胞刺激ホルモンの発生」→「メラニン増加」→「が悪化」
そして、炎症が大きいほど、メラニン細胞刺激ホルモンは活性化します。
ちなみに、欧米人(白人種)が色白、つまりメラニンが少ないのは、このメラニン細胞刺激ホルモン(MSH)の働きが低いことが要因の一つということがわかっています。白人はニキビの炎症が起こっても色素沈着が起こりにくいですが、このメラニン細胞刺激ホルモンが少ないことがあげられます。
プラスミンはヒスタミンの発生を促す
ニキビの炎症によって発生したプラスミンは、様々な作用をもたらす過程において「ヒスタミン」という物質の発生を促します。
ヒスタミンは炎症やアレルギー反応の介在物質として働く生理活性物質で、ヒスタミンが過剰に分泌されるとヒスタミン1型受容体というタンパク質と結合して、アレルギー疾患の原因になるとされます。
ニキビが発生するとかゆみを伴うことがありますが、それはヒスタミンの過剰放出、つまりアレルギーを起こしている可能性があります。
にきびとアレルギーが併発すると、かゆみだけではなく炎症が悪化したり長引いたりすることが多く、ニキビ跡がひどく残ってしまう傾向があります。
ブラジキニンもプラスミンによって促される
プラスミンは、ブラジキニンという物質の増加を促す作用があります。ブラジキニンとは、血圧調整、神経に痛みを伝える働き、炎症の発現などに関与する物質です。
ニキビが強い炎症を起こすと痛みを伴うことがありますが、それにはブラジキニンが関与していると考えられています。
また、ニキビが痛いのはブラジキニンと共にプロスタグランジンの影響もあります。
ニキビが治っても炎症は続いている?
一見、ニキビの腫れが治っているように見えても、皮膚の内部ではまだ様々な炎症物質やメラニンの生成を促す物質が働いていたりします。
そのため、ニキビが治ってもすぐには肌に負担をかけるようなスキンケアはしないようにしましょう。
例えば、マッサージなどはニキビが完全に治ってから少なくとも2~3か月後から行うのが理想です。
また、治療器の種類にもよりますが一般にレーザー治療、光治療、高周波治療などにおいても、ニキビが治ってある程度期間をあけてから行わないといけません。にきびが治ってから時間が経たないうちに治療をすると、かえって悪化してしまうことがよくあります。
紫外線には注意
ニキビの炎症を悪化させたり、それによる色素沈着を濃くしてしまうのが紫外線です。ニキビがある時は絶対に日焼けはしないほうがいいです。「炎症ニキビ+紫外線」でクレーターになりやすくなったり、シミが治らないものになってしまうことがあります。
ストレスもダメ
ストレスは、プロスタグランジンやヒスタミン、ブラジキニンなどの生理活性物質の発生を促すきっかけとなります。運動や十分な睡眠をとって上手にストレスを発散して下さい。
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