タクロリムス軟膏でニキビ悪化。副作用で逆効果になることも多い理由とは?

タクロリムス軟膏(プロトピック軟膏)の画像 タクロリムス軟膏0.1%は、免疫抑制薬に分けられる皮膚科で処方される塗り薬です。(先発品はプロトピック軟膏という商品です)。

このお薬は炎症によって過剰に働きすぎている免疫反応を抑制し、皮膚の炎症や腫れを治す効果があります。

主にアトピー性皮膚炎の治療に対して皮膚科で処方され、ステロイドのような皮膚のターンオーバーやバリア機能などに悪影響を及ぼさないため、ステロイドの代わりに使用されることが多いです。

そして、タクロリムス軟膏は炎症を抑える働きがあるため、他の皮膚炎などにも効果があるように思えます。ただし、使っていいケースとそうでないケースがあります。

例えば、ニキビや毛嚢炎などに対して上手に使えば良い効果が得られるかもしれません。ところが、使用後にかえって赤みや腫れが強くなったり、ニキビや毛嚢炎そのものの発生原因になったりする可能性もあります。

今回は、タクロリムス軟膏の働きと、ニキビへの効果と副作用、ニキビへ使うと逆効果となってしまう理由などを詳しく解説してきます。

タクロリムス軟膏のニキビへの使用について

ここからはタクロリムス軟膏の副作用やニキビ悪化の可能性をいくつかご紹介します。

ニキビに使うと治りにくくなることがある

タクロリムス軟膏をニキビに使うと、治りが悪くなって長期化してしまうことがあります。

アクネ菌とニキビ発生の仕組み ニキビは、毛穴でアクネ菌という細菌が増加し、それに対して免疫反応を起こしてしまうことで赤く腫れるようになります。

そして、免疫反応により白血球が活性化してアクネ菌を攻撃し、殺菌することで最終的にニキビが自然に治っていくようになります。

タクロリムスは、そういった免疫反応を抑制する働きがあり、ニキビが自然に治っていく現象を阻害してしまうことがあるのです。自然治癒力を考えると、タクロリムス軟膏はニキビに対して積極的に使っていいお薬ではありません。

使い続けると感染症やニキビが発生することがある

タクロリムス軟膏は、免疫を抑制する働きがありますが、免疫が抑えられることで皮膚の免疫力が低下し、皮膚感染症を起こしやすくなります。

炎症が強い毛嚢炎の画像 例えば、この薬の使用によって毛嚢炎(毛包炎)という皮膚感染症の発生率が約12%、カポジ水痘様発疹症の発現率が約4%という確率で引き起こされるという報告があります。

そして、免疫が抑制されることでニキビの原因となるアクネ菌が増加し、結果的にニキビができてしまうことがあります。

ステロイド外用薬を使い続けることによる副作用においてもニキビが発生することがありますが、それと同じ現象がタクロリムス軟膏でも発生することがあるのです。

顔に使う場合は副作用が現われる可能性が高い

タクロリムス軟膏の作用の強さをステロイドに例えると、5段階中3番目のストロングレベル(やや強い)の効果があるとされます。

ステロイド外用薬の強度ランク ストロングレベルの消炎作用は、リンデロンやフルコートなどのステロイド薬と同じレベルの強さで、ほとんどの湿疹はそのレベルで十分な効果が期待できる強さです。ただし、効果がある反面、副作用が現われやすいということでもあります。

特に、薬剤の浸透が良い顔へ使う場合は、2週間くらい使い続けると免疫抑制作用による感染症などの副作用が現われる可能性があります。顔に使い続ける場合はニキビや皮膚感染症に注意しなければいけません。

赤みや腫れが強くなることがある

タクロリムス軟膏の欠点として、塗った後の皮膚がほてりを感じたり、ヒリヒリ感、かゆみ、赤みなどの副作用が強く現われやすい問題があります。

皮膚の赤みの画像 皮膚炎がある人の場合は60~70%の人にそれらの副作用が起こるという報告もあり、かぶれてしまったとして使うのを止める人も多いです。

その副作用は一時的なもので、数日で落ち着いてくるのですが、肌が弱い人や敏感肌の人、炎症によって皮膚のバリア機能が乱れている場合などはそのような副作用がとても強く現われます。

ニキビとアトピーを併発している場合は、この薬を使うと非常に強い赤みやヒリヒリ感が現われることがあります。かゆみが強くなってニキビが悪化したように感じることがあります。使い方が難しいのもこの薬の特徴といえます。

アトピーと併発したニキビに使っていい?

タクロリムス軟膏は、ほとんどはアトピー性皮膚炎に対して使用されるお薬ですが、アトピーと併発したニキビには使わないようにしたほうが無難です。

1~2回使うくらいなら問題ないと思いますが、もしかするとタクロリムスの副作用でニキビが発生している可能性もあるため、ニキビにはタクロリムスではなく専用のニキビ治療薬で治すのが理想です。

皮膚科では外用のニキビ治療薬としてディフェリンゲルやベピオゲルなどがよく処方されますが、それらは刺激性が強い欠点があるため、アクアチム軟膏やゼビアックスローションなどの刺激性が低い抗菌薬の使用が理想です。詳しくはお医者さんと相談してみましょう。

ニキビ跡を治す効果はない

ニキビ跡の炎症後色素沈着の画像 ニキビの炎症が悪化するほど、皮膚の赤みや炎症後色素沈着といったニキビ跡が強く残ってしまうようになりますが、タクロリムス軟膏はそういったニキビ跡には全く効果はありません。ニキビ跡のクレーターなどにも効果はありません。ケロイド予防にも使ってはいけません。

使ってはいけない皮膚病

脂漏性皮膚炎の画像 タクロリムス軟膏は、ニキビや毛嚢炎の他にも、おでき(せつ)、マラセチア毛包炎、カンジダ皮膚炎、水虫、脂漏性皮膚炎などにも使ってはいけません。

また、口唇ヘルペス、性器ヘルペス、水疱瘡(みずぼうそう)、帯状疱疹などのウイルスが原因となる病気にも使ってはいけません。かえって二次感染を起こして化膿してしまう原因になることがあります。

ニキビ治療にタクロリムス軟膏が処方されることはない

タクロリムス軟膏は免疫抑制作用にって炎症を抑える働きがあるのですが、その効能がかえって感染症の原因となったり、症状を悪化させてしまう可能性があります。

そのため、細菌や真菌、ウイルスなどの感染症が原因となる皮膚病には使わないのが原則です。

他のサイトでは「タクロリムス軟膏がニキビに効く」として、「ニキビ治療で皮膚科で処方されることがある」と記述しているところを見かけますが、基本的にニキビ治療にタクロリムスが処方されることはありません。

もし、処方されたならばそのお医者さんは間違っています。

このお薬は、「アトピー性皮膚炎治療薬」として販売されていて、基本的にアトピー以外の皮膚病に対して使い続けてはいけないことを覚えておいて下さい。

タクロリムスの性質を理解して上手に使うことができれば、アトピー以外にも使えると思いますが、それぞれの症状に一番合った塗り薬を使用するのが基本です。

また、アトピー性皮膚炎においても使い続けると、皮膚の免疫力が下がってニキビが発生したり、毛嚢炎などの感染症を起こしたりすることがあることも忘れてはいけません。