TCAピーリングのニキビ跡クレーター治療効果「副作用と危険性」

TCAピーリングの写真 ニキビによる一番の悩みが跡が残ってしまうこと。

一度にきび跡の凹みができてしまうと、自然には治らないものになります。そして、改善するためにはそれなりの治療が必要となります。

ニキビ跡のクレーターを治す治療は現在までいろいろ確立していますが、その一つにTCAピーリングという方法があります。

今回は、TCAピーリングのニキビ跡クレーターに対する治療効果や副作用、危険性を解説していきます。

TCAピーリングとは?

TCAピーリングとは、トリクロロ酢酸(TCA)という強酸性で水に良く溶ける成分を使用したケミカルピーリングをいいます。

強酸性のTCAは皮膚に対して腐食性をもち、真皮層(コラーゲンやエラスチンなどがある層)のような深い層にまで作用を及ぼします。

そのTCAをニキビ痕部分に塗布して意図的に皮膚を損傷させ、それを修復するための自然治癒力を利用して肌の生まれ変わりやコラーゲン増生などを促します。

その結果、ニキビ痕のクレーター状に凹んだ皮膚を平らに導くことができるのです。特に、鋭く凹んだクレーターをなめらかにしたいという場合に適しています。

ところが、この方法は高い効果が期待できる反面、失敗すると余計に跡がひどくなってしまう可能性があります。

なお、ピーリング(英語:peeling)とは、「剥がす」「剥離する」などの意味がある言葉で、美容面においては皮膚の古い角質を剥がしてターンオーバー(新陳代謝)を促進させ、肌細胞の生まれ変わりを促す治療をいいます。

他のピーリングとの違い

皮膚科、美容クリニックなどで行われるピーリングというと主に以下の2つです。

  • グリコール酸(フルーツ酸の一種)を使用したピーリング
  • サリチル酸(BHA)とマクロゴール(基剤)で組み合わせたサリチル酸マクロゴールピーリング

一般にグリコール酸やサリチル酸のピーリングというと穏やかに作用するので肌の広範囲に塗ることができます。

そして、角質を取り除いて毛穴がふさがる現象を解消し、その結果ニキビを予防し、治りも早くすることができます。

ただし、そのような穏やかに作用するピーリングでは、ニキビの予防や改善には効きますが、激しく凹んだクレーターを治すにはかなり力不足です。

一方のTCAは、一般的なピーリング剤よりも格段に作用が強く、皮膚を深く溶かしていきます。

激しい反応が起こる一方で、急激に皮膚の再生がもたらされるので、ニキビ跡がボコボコになった状態の再生に適しています。

適応症状

ニキビ跡のクレーター状の凹みに効くTCAピーリングですが、まずクレーターのタイプは、大きく分けてボックスカータイプ、アイスピックタイプ、ローリングタイプの3種類に分かれ、そのニキビ跡の種類によって効果に違いがあります。

ニキビ跡クレーターの種類のまとめ画像

TCAピーリングがよく効くのがボックスタイプやアイスピックタイプという鋭く凹んだタイプのニキビ跡です。

TCAによって皮膚が激しく溶かされ、鋭く凹んだ状態がなだらかになるため、効果が実感できやすいのです。

ただ、極端な凹みはなめらかになりますが、一方で若干のボコボコ感は残ることが多いです。完全にキレイには仕上がらないことがほとんどです。

TCAピーリングはダメージが強い?

ニキビ跡クレーターの画像 濃度にもよりますが、TCAピーリングは鋭く凹んだニキビ痕に対してプラスの効果がある一方で、治療前よりも全体的に跡がひどくなってしまうリスクもあります。

皮膚の表面を損傷させるような強いダメージが及ぶため、それなりのリスクは当然あります。

色素沈着

失敗例で多いのが炎症後色素沈着です。メラニン色素は表皮層で作られますが、TCAピーリングは表皮を損傷させるので濃いシミができることがあります。

専門の知識と経験をもった医師が肌質に合った濃度で行うと思うのですが、それでも自然に治らないような色素沈着が起きてしまうリスクがあります。

また、皮膚の損傷によって毛細血管の増殖を起こすことで赤みが残ってしまうことも。これは肌が弱い人ほど発生しやすいです。

加齢肌やニキビケアのためのピーリングを続けてきた人は肌が弱くなっている可能性があるので慎重に行わなければいけません。

現在では時代遅れのニキビ跡治療?

ニキビ跡の凹みは、表皮ではなく真皮層の変質が原因なので、真皮層だけに作用すればいいのですが、TCAピーリングは真皮だけではなく表皮にも強い損傷がおこります。

表皮は肌のバリア機能や水分保持としての役割があるので、その表皮の剥離や強い損傷が続くと、その部分だけ紫外線に弱くなったり、化粧品などで接触皮膚炎を起こしやすくなる可能性があります。

なので、個人的にはあまりおすすめの治療とは言えません。

現在では、ニキビ跡の治療というと、TCAピーリングよりも表皮への負担が少なくて色素沈着のリスクが少ない安全な方法がたくさん確立されています。

例えば、フラクショナルエルビウムヤグレーザー、フラクショナルCO2レーザー、ダーマローラー、ダーマスタンプ、ダーマペンなどです。

それらは表皮へのダメージを抑えながら、真皮層の入れ替えとコラーゲン増生を促すことができます。

ニキビ跡クレーターに対する安全性が高い治療が増えた現在では、TCAピーリングはかなり時代遅れな治療だと思います。

ですが、「色素沈着のリスクがあっても鋭い凹みを治したい」という人のならば、良い治療だと思います。

余計に跡が目立ってしまうこともある

TCAピーリングで色素沈着を起こしてしまうと、ニキビ跡の凹みに影ができてしまい、かえってニキビ跡が目立って見えるようになることがあります。

施術内容とアフターケア

Step1カウンセリングによって肌状態を診断する。この時に効果だけではなく、様々なリスクやアフターケアなども十分に説明してもらいましょう。

Step2施術前は洗顔、クレンジングによって肌の汚れを落とす。

Step3アイシールド、ゴーグルなどで目を保護する。

Step4TCA薬剤を塗布する。綿棒のようなものを使ってニキビ跡部分のみに塗布し、そのまま待って乾かします。ヒリヒリした痛みを感じることがあります。

Step5皮膚を冷やして熱をとって終了。

Step6施術後はお化粧は控えます。カサブタがとれて肌が安定するまでお化粧は避けるのが理想です。

術後の経過

塗ったところが腐食により白くなります。そして、その周囲が赤くなります。

翌日から赤みやカサブタなどがみられます。そのカサブタは1週間から10日間ほどで自然に剥がれます。

カサブタがとれて、完全に肌が安定化するまで1~2か月かかります。

動画

施術内容は映像で見てもらったがわかりやすいと思います。TCAピーリングを行っているYouTube動画。(美容皮膚科のメディエス皮膚科クリニックのもの)。

TCAピーリングの画像

アイシールドで目を保護してピーリング剤を塗布するだけ。腐食性があるので、もしものために目は保護しないといけません。

アフターケア

  • ピーリング治療後から3~4日ほどかけてカサブタができて、1~2週間ほどかけて自然に剥がれていきます。そのかさぶたを無理に剥がしたりしないようにしましょう。
  • 治療後は紫外線対策をしましょう。お化粧や日焼け止めクリームなどを塗ると、それが肌への負担になるため、紫外線そのものを浴びないような工夫が必要です。
  • お化粧は、カサブタが取れて肌が落ちついてからにしましょう。ニキビ痕部分を避けたお化粧が理想です。
  • 治療後は普段よりも一層の保湿スキンケアをしましょう。肌の水分量を高く保持することでダウンタイムが軽減されて回復が早くなります。
  • 治療後は、熱いお湯での洗顔やお風呂などは厳禁です。肌に負担をかけないことが原則です。

治療時間の目安

施術時間は顔全体でも10分くらいで済みます。

治療回数の目安

TCAピーリングの施術回数は、深いにきび痕の凹みの場合では、3ヶ月以上の間隔をあけて2~3回が目安です。

効果が期待できる反面、肌に対する負担も大きいため、複数回繰り返す場合は、治療の間隔を3ヶ月以上はあける必要があります。

また、基本的に10回、20回と繰り返せるような治療ではありません。2~3回行っても効果が現れない場合は、TCAピーリングは中止しましょう。

治療料金の目安

TCAピーリングの施術費用は、一回あたり5000円~1万円程度が目安です。こういった美容目的の治療は、保険は適応しません。自由診療です。

TCAピーリングの副作用と注意点

  • TCAピーリングを行った後、カサブタなどのダウンタイムがありますので、生活や仕事に余裕があるときに行うべきです。
  • TCAピーリングは、濃度、使用量などによって作用が違ってきます。心配な場合は最初はやや濃度を落としてから行ったほうがいいかもしれません。
  • ケロイド体質の人は治療を受けられません。
  • 妊娠中の人は治療は受けられません。
  • 強い日焼け、アトピー性皮膚炎や敏感肌、肌荒れなどがある場合は治療を受けられないケースもあります。
  • 施術に関して危険性や不安を感じたら迷わず施術を受けないようにしましょう。

治療を行う病院が少ない

非常に作用が強い治療法であるため、TCAピーリングを行っている医療機関そのものが少ないです。

外国のTCAピーリングの映像

海外では日本よりもTCAピーリングが認知されています。今回は、その治療を行う外国人のYouTube動画。


頬のニキビに対して全体的にTCAを使ったピーリング2日後。まだまだ強い赤みがみられます。なお日本ではニキビ跡の凹みだけピンポイントに使われますが、外国では面的に使われることもあります。

TCAピーリング2日後の写真

1週間後、頬の広範囲が溶かされた後にカサブタとなった状態。

TCAピーリングの1週間後の写真

最後にTCAピーリングの治療前と治療後の比較写真。大きく改善しているでしょうか?

なお、このような治療を日本人が行うとアザのような色素沈着を起こしてしまう可能性があります。

そもそも日本人の肌質に合わない?

欧米ではTCAピーリングがニキビ痕治療だけではなく、シワを改善するエイジングケア治療としても行われていたりします。

ところが、欧米人が行うようなレベルで日本人が行うと、かえって様々な肌トラブルをまねくことがあります。

一般的に日本人の肌質は欧米人(白人)と比較すると表皮層が薄く、刺激に弱い傾向があるとされます。白人と比較すると20~30%くらい角質層が薄いという報告もあります。

また、日本人はわりとメラニンを作り出す能力が高く、さらに白人よりもケロイド・肥厚性瘢痕になりやすい傾向があるといわれています。

TCAピーリングのような刺激が強い治療はいろいろと肌トラブルがおきやすいことを覚えておいて下さい。