テラ・コートリル軟膏とは、「ヒドロコルチゾン」というステロイドと、「オキシテトラサイクリン」というテトラサイクリン系抗生物質を配合した塗り薬です。
ステロイドの抗炎症作用や免疫抑制作用と、抗生物質の抗菌作用の2つの効能により、細菌の増加を抑えながら皮膚の炎症を治すことができます。
そして、このテラコートリル軟膏はにきびに効果的なケースがあります。ステロイドが配合されるため、どんなニキビにも塗ってよいわけではありませんが、ニキビの状態によっては「ステロイド(消炎)+抗生物質(抗菌)」の組み合わせが有効な場合があります。
テラコートリル軟膏の有効成分と効果
ステロイドヒドロコルチゾン
ヒドロコルチゾンとは、ステロイド(合成副腎皮質ホルモン剤)の一つです。消炎・抗炎症作用や免疫抑制作用があり、皮膚の炎症や化膿を予防し、腫れをしずめます。
ステロイドはその強さにより「1群:最強」「2群:非常に強い」「3群:強い」「4群:普通・中間」「5群:弱い」の5段階に分けられますが、ヒドロコルチゾンは最も弱い部類の「5群:弱い」の部類に属します。
作用が緩やかであるため、例え顔に使用する場合でも数日~2週間程度の使用であれば副作用の心配はほとんどありません。
抗生物質オキシテトラサイクリン
オキシテトラサイクリンとは、テトラサイクリン系抗生物質です。幅広い細菌に対して有効で、皮膚感染症に対して用いられます。
テラコートリルに含まれるステロイドには免疫反応を抑制して炎症をしずめる作用がありますが、一方で免疫を抑制するため細菌感染を促してしまう可能性もあります。オキシテトラサイクリンは、そういったステロイドの細菌感染リスクを予防・改善する目的で配合されます。
主な適応症状
- 湿疹、皮膚炎、あせも、かぶれ(接触皮膚炎)、虫さされ、じんましん、毛嚢炎
- 細菌感染症による化膿性皮膚疾患。
- 外傷・ヤケドなどの二次感染。
- 場合によっては炎症したニキビにも有効なケースがあります。
ニキビ治療におけるステロイドの問題
テラコートリルにはステロイドが含まれます。ステロイドは優れた抗炎症作用があるのですが、一方で免疫を抑制することで皮膚の細菌増加を促してしまう副作用があります。
ニキビはターンオーバーが乱れ、塞がった毛穴内部でアクネ菌(皮膚常在菌)が増加することで発生します。
そして、免疫が働いて好中球(白血球の一つ)がアクネ菌を処理することで最終的に炎症が治まるのですが、その過程でステロイドを使用して免疫を抑えてしまうと、アクネ菌を処理するシステムが働かなくなってしまい、細菌が減少せずに炎症が悪化したり長引いてしまうことがあります。
そのため、ニキビ治療にステロイドが使用されることは基本的にはありません。
ただし、ステロイドと共に細菌の増殖を抑制する抗生物質が配合された「テラコートリル軟膏」の場合では、ニキビの状態によっては有効なケースがあります。
実際に赤ニキビに対してテラコートリル軟膏を使用すると、一般的な治療薬よりも早く改善することが多いのも事実です。
テラコートリル軟膏が有効なニキビの状態
化膿ニキビ、腫れが大きくなる前の赤ニキビ
赤ニキビが発生すると、免疫反応によって様々な生理活性物質が発生し、それが炎症や腫れを大きなものにしてしまいます。
テラコートリルに含まれるステロイドには消炎作用や免疫抑制作用があり、様々な炎症誘発物質の放出を抑制します。
その結果、ニキビの腫れを治すことができます。同時にテラコートリルに含まれる抗生物質によって細菌の増加を予防します。化膿ニキビや腫れが大きくなる前の赤ニキビに効果が期待できます。
アレルギーと赤ニキビを併発した場合
ニキビとアレルギーを併発すると、かゆみが現れ、炎症が長引いて化膿・硬結ニキビ(しこりにきび)になってしまうことがあります。
これはヒスタミンという物質が過剰に発生してしまうためです。(ヒスタミンにはかゆみと共に炎症反応を大きくする働きがあります)。
テラコートリル軟膏に配合されるステロイドはアレルギーによる過剰な免疫反応を抑制し、腫れやかゆみをしずめる働きがあります。
ただし、かゆみをともなったニキビはどのような治療においても悪化して長引きやすい傾向があります。
瘢痕体質やケロイド体質の場合
体質によってはニキビによって真性ケロイドや肥厚性瘢痕という赤く盛り上がったニキビ跡を形成してしまうことがあります。
真性ケロイドは進行性があり元の範囲から拡大していくもので、肥厚性瘢痕とは元の範囲から拡大しないものをいいます。
それらの原因は損傷した皮膚を修復するためにコラーゲンが過剰増生されてしまう現象です。アレルギーの一つと考えられています。
そのようなケロイド体質の人はニキビ治療にテラコートリルを使用してアレルギーを抑えることでケロイドの形成を予防することができる可能性があります。
白ニキビ、黒ニキビには使用してはいけない
テラコートリル軟膏は白ニキビ・黒ニキビには使用してはいけません。ステロイドと抗生物質には副作用があるため、症状が軽い場合には使用しません。
皮脂が多くてニキビが多発している肌には不向き
皮脂が多くてニキビが多発しているような肌にはテラコートリル軟膏は不向きです。皮脂が多くてニキビができやすい肌は、ステロイドが配合されるお薬で悪化してしまう可能性が高いです。
いずれの場合においても、ステロイドを配合したテラコートリル軟膏のような治療薬はニキビに対して使い方が難しいことがあります。使用中に症状が悪化してしまった場合は迷わず中止しましょう。
テラ・コートリルの使い方について
テラコートリル軟膏は、1日1~2回、洗顔後に化粧水で肌を整えた後、患部に適量を塗ります。また、塗った後は紫外線対策をしましょう。
使用期間の目安
テラコートリルは化膿性のニキビに対しては1~2週間ほどの治療期間が目安です。中途半端に使用すると炎症や細菌がリバウンドして悪化してしまうことがあります。
しっかりと炎症を抑えて中止するようにしましょう。炎症途中で使用を中止する場合は、代わりに殺菌作用がある塗り薬を使用してしっかりと炎症をしずめましょう。
使用上の注意点
- ニキビ治療におけるステロイドの効果は、良し悪しがあることを認識しておきましょう。
- 使用中にニキビが悪化した場合は必ず使用を中止しましょう。
購入するには?
テラコートリルは、一般的な薬局・ドラッグストアなどで市販されています。医師の処方箋なしで購入できます。
副作用と危険性
テラコートリル軟膏の副作用は、「ヒドロコルチゾン」というステロイドによるものと、「オキシテトラサイクリン」というテトラサイクリン系抗生物質によるものです。それぞれ分けて解説します。
ヒドロコルチゾン(ステロイド)の副作用
- 数ヶ月以上の長期的な使用により、皮膚が薄くなって肌が弱くなることがあります。使用を中止すれば時間の経過とともに改善します。
- 長期的な使用によって毛細血管拡張が起こり、皮膚が赤みを帯びてくることがあります。
- ステロイドには免疫抑制作用があります。長く使い続けると免疫低下によって感染症を起こす可能性があります。また、免疫低下により皮膚常在菌の増加を促し、ニキビ・ブツブツが発生することもあります。テラコートリルには抗生物質が含まれるため細菌の増加を抑えることができますが、ステロイドが含まれるためニキビ治療に対して使用したのに、ニキビが増える可能性も否定できません。
一般に顔は薬剤の吸収が良いため副作用のリスクが高くなるとされますが、ステロイドであるヒドロコルチゾンは作用が非常に弱いため、顔に使用する場合でも数日から2週間程度の限定的な使用では副作用の心配をする必要はありません。
オキシテトラサイクリン(抗生物質)の耐性菌を生じる問題
テラコートリル軟膏には、オキシテトラサイクリンという抗生物質が含まれています。その抗生物質は使用継続によって耐性菌を生じるリスクがあります。耐性菌とは、薬剤投与によっても生き延びれるように抵抗性をもった細菌をいいます。
耐性菌が生み出されると抗生物質が効きにくくなることがあります。実際に、ニキビ治療に抗生物質を使用し続けると、効果が弱くなってくることがあります。様々な細菌感染症が治りにくくなる可能性もあるため、安易に長く使い続けないことが原則です。
その他の副作用
テラコートリル軟膏の副作用で、湿疹、ブツブツ、皮膚の赤み、ヒリヒリ感、かゆみなどが現れることがあります。かゆみが現れた場合はアレルギー性の接触皮膚炎(かぶれ)を起こしている可能性があります。異常が現れたら、必ず使用を中止して医師に相談しましょう。
- ピーリングを10年続けた肌はどうなる?過剰ニキビケア体験談
- 面疔(めんちょう)の原因&治し方まとめ。最も効く皮膚科の薬や市販薬は?
- 皮膚の表皮・真皮・角質層の厚さは何ミリ?各部位の厚みと層数まとめ
- ベピオゲルのにきび減少率と副作用、ヒリヒリする痛みやかゆみの対処についても解説
- メガネ跡の黒ずみ・色素沈着を治す方法は? 予防法と治療方法
- 目・眼球のしみ(結膜母斑)の治療方法とは? 原因と治し方
- 皮膚科のニキビ処方薬「塗り薬・飲み薬」まとめ。保険適用で処方頻度が多い順
- アダパレンゲルの赤ニキビ減少率と副作用。ヒリヒリや皮むけ、かゆみの対処について
- ニキビを潰す方法。ニキビの芯を出す器具と潰していいニキビ写真一覧
- デュアック配合ゲルのニキビ減少率と副作用。痛みやアレルギーのかゆみ対処について