ニキビ治療によく処方されるディフェリンゲルは、ビタミンA誘導体と似たアダパレン(ナフトエ酸誘導体)を有効成分とした塗り薬。
2008年に承認されてから比較的軽度のニキビ治療に対してよく処方されるようになりました。
そのディフェリンゲルと似た働きをするニキビ治療薬に「トレチノイン」という外用薬があります。
トレチノインは、ビタミンA誘導体の一つで、ビタミンA(レチノール)の何十倍もの生理活性がある成分です。
トレチノインとディフェリンゲルは、共に皮膚内のレチノイン酸受容体に作用し、共に似たような働きをするのですが、厳密には少し違う働きによってニキビ改善に導きます。
ディフェリンゲルとトレチノインの違い
トレチノイン
トレチノインとは、ビタミンA誘導体を主成分とする外用薬です。トレチノインは皮膚内レチノイン受容体に結合して様々な作用をもたらします。そのトレチノインには以下のような効能があります。
- 角質剥離作用(ピーリング作用)
- 角化促進作用(ターンオーバー促進作用)
- 表皮細胞増殖作用
- 皮脂分泌抑制作用
- 線維芽細胞活性化作用(線維芽細胞はコラーゲンやヒアルロン酸を作り出す細胞です)。
トレチノインは角質を剥がして皮膚が分厚くなってしまう現象を抑制します。その結果、ニキビや毛穴がつまってしまう現象も予防改善します。
さらに表皮細胞の増殖を促すことでターンオーバーを活性化し、ニキビ跡のシミ・色素沈着などの改善をもたらします。
他にも、皮脂分泌を抑えたり、線維芽細胞を活性化させてコラーゲンの増生を促し、小じわの改善に導きます。
トレチノインは、海外ではニキビ治療やシミ治療に対して積極的に使用されることがあります。
ところが、赤み、ヒリヒリ感、ほてり、皮膚の剥離、乾燥などの強い副作用が現れることがあるため、日本では保険適応の治療薬として認可されていません。(日本人の表皮は欧米人と比べて薄く、トレチノインのようなお薬が使いづらいことがあります)。
また、ディフェリンゲルのようなビタミンA誘導体と似た働きをするお薬が登場したことで、ニキビ治療に対するトレチノインの必要性がずいぶん低くなりました。
ディフェリンゲル
ディフェリンゲルは、ビタミンA誘導体と似た構造をもつアダパレン(ナフトエ酸誘導体)を有効成分とした塗り薬です。アダパレンは皮膚内のレチノイン酸受容体(RARγ)と選択的に結合することで作用をもたらします。
レチノイン酸受容体にはいくつかの種類があるのですが、ディフェリンゲルはRARγという受容体に選択的に結合します。その結果、トレチノインとは違う働きをもたらします。
- ターンオーバー抑制作用。
- 若干のピーリング作用。
ディフェリンゲルの主な効能はターンオーバーを抑制することです。ターンオーバーを促進させるのではなく、ターンオーバーを抑制します。
つまり角質の形成を抑え、皮膚が厚くなる現象を抑えることで毛穴つまりやニキビを予防・改善します。
ニキビはターンオーバーが進んでしまうことで皮膚が厚くなり、それによって毛穴が詰まってしまうことで発生しますが、ディフェリンゲルはターンオーバーを抑制することでニキビや毛穴が塞がってしまう現象を改善します。
トレチノインと比較した場合、ディフェリンゲルのメリットは副作用が少ないことです。トレチノインの場合は、使用中に強い副作用が現れることがありますが、トレチノインと比べるとディフェリンゲルの副作用は限定的です。
ディフェリンゲルの場合は一部のレチノイン受容体に対して限定的に結合するため、トレチノインよりも副作用が抑えられます。
まとめ
- トレチノインは皮膚内のレチノイン受容体の多くと結合する。その結果、反応が良く、即効性や劇的な効果も得られやすいが、一方で副作用もひどく現れる。
- トレチノインと違ってディフェリンゲルは皮膚内のレチノイン酸受容体の一部と結合する。RARγという受容体に選択的に結合します。その結果、効果を得られながら、副作用を抑えることができる。
- トレチノインは角質を剥がす作用やターンオーバーを促すことで、毛穴つまりやニキビを予防改善する。一方、ディフェリンゲルはターンオーバーを抑制することで皮膚が厚くなって毛穴つまる現象を予防する。
ディフェリンとトレチノインはどっちがニキビに効く?
ディフェリンを開発した欧州の会社ガルデルマ社では、同じ濃度であればトレチノインよりもディフェリンゲルのほうが効果があるとしています。
ただし、個人的には、副反応を考慮しないのであればトレチノインのほうが即効性があり、全体的な効果が高いと考えています。その理由は、トレチノインのほうが皮膚内受容体に多く結合して、より強い効果を得られるためです。
トレチノインの場合は、角質剥離作用(ピーリング作用)の反応が早く現れ、皮膚が厚くなる現象を素早く改善することができます。
その結果、炎症の治りが早いと個人的には実感しています。強く炎症したニキビが多発した場合はトレチノインがよく効くのは事実です。
一方、ディフェリンゲルでは即効性が得られず、初期段階では効果が実感できないこともよくあります。そして、反応が弱いため炎症が進行したニキビには適していません。
ディフェリンゲルは黒ニキビ、白ニキビ、軽い赤ニキビに有効です。即効性が得られにくいため、ディフェリンゲルと共に抗菌薬・殺菌薬を組み合わせて使用することもあります。
抗菌薬にはダラシンTゲルやアクアチムクリーム、殺菌薬にはベピオゲル(過酸化ベンゾイル)などがあります。
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